広報誌「かけはし」
■2001年7月 No.358
時評
 ●聖域なき構造改革 「老人医療費の伸び抑制」を
 


経済の伸びにバランスさせる

  政府の経済財政諮問会議の基本方針のひとつとして「医療費総額の伸びの抑制」が採り上げられている。まだ素案の段階とは言われるが老人医療費の歯止めなき増加に手をつけようというものである。
 今の医療保険制度では出来高払いで医者にかかればかかっただけの医療費がふくらむ仕組みだった。(これがあの悪名高い老人保健拠出金につながっていくものであるが)。これを改めて経済の伸びにバランスさせる枠組みを導入する案、例えば、上限設定は老人医療費の伸びが8%、うち高齢者増加による伸びが4%の場合、国民所得の伸びが1%ならこれを加えて5%とするなど。また、医療費の伸びを基礎賃金の伸び(保険料収入の伸び)の範囲内にするとかの方法が提案されている。

医療の質低下と日医は反発
  これに対して日医は「医療の質の低下につながる」「必要な医療が受けられなくなり高齢者の切り捨てにつながるのではないか」と反発している。一方では野党の民主党は「総枠管理や上限設定が医療費総額の伸びを抑制するもの」として理解を示している。
 健保連では4月に公表した「今後の制度改革に向けての考え方」の中でも最重要課題として「医療費の合理化と適正化」を掲げ老人医療費の伸びの抑制を訴えている。「考え方」についての地方での5カ所にわたる説明会を経て、6月には「今後の医療保険の取り組みについて」の方針を示し改めて重点項目として「医療費の総額抑制」を訴えている。

支払い側3団体連携の強化
  各方面の意見もほぼ出揃った段階だが14年改革までの時間的制約があるため改革が本当に進むのかどうか懸念される。しかし、90%もの高支持率にささえられ「聖域なき構造改革」を掲げる小泉内閣のもとで、支払い側3団体が連携を強化して健保連本部の指導力と健保各組合の強い改革への熱意でなんとしても実現させなければならない。  (正)