広報誌「かけはし」
2001年3月25日 No.354
 
  健保連本部に制度改革で提言  
「高齢者医療制度、診療報酬制度見直し」
 大阪連合会医療保険制度等検討委員会は、2月21日(水)、健保連本部に高齢者医療制度と診療報酬制度の見直しについての考え方を提言、本部の制度改革審議の検討材料とするよう要請した。
 この「考え方」は、同委員会が発足以来5回にわたる検討の結果をまとめたもので、高齢者医療制度は、医療保険と介護保険の統合を前提にした見直しを、診療報酬制度は老人医療費抑制を最優先に見直すことを基本としている。
〔委員12人〕
 
●委員会開催経過
 
第1回 12年10月 3日 委員長選出
第2回  13年 1月23日 拠出金実態調査
第3回     2月 5日 調査結果報告
第4回     2月13日 今後の対応検討
第5回     2月19日 分科会で審議、見直し案まとめる
   
●委員氏名
 
コ 永 幸 彦 (松下電器健保組合顧問)
川 口   裕 (レンゴー健保組合常務理事)
岩 井 希 文 (サントリー健保組合常務理事)
奥 西 一 郎 (大阪産業機械工業健保組合常務理事)
川 口 昭 弘 (日商岩井健保組合常務理事)
古 川   均 (近畿酒販健保組合常務理事)
木 割 昭 雄 (大阪府建築健保組合常務理事)
河 野 美 利 (クボタ健保組合常務理事)
辻 村 浩 一 (大阪府倉庫業健保組合常務理事)
西 川   實 (大阪金属問屋健保組合常務理事)
島 田   進 (近畿電子産業健保組合専務理事)
早 司 欣 弘 (健保連大阪連合会専務理事)
 
     

高齢者医療制度および診療報酬制度の見直しについて
1・高齢者医療制度の見直しについて
 将来、医療保険と介護保険の統合が必至であり、これを前提として見直すと、独立方式に近い高齢者医療制度が妥当であると考えられる。
(1)加入対象者
  65歳以上とする。これにより介護保険および基礎年金との整合性が図れることになる。
(2)公費
  給付費の5割とする。これも(1)と同様、介護保険および基礎年金との整合性が図れる。
(3)一部負担
  2段階方式として、前期高齢者(65歳以上75歳未満)と後期高齢者(75歳以上)は、負担割合に格差を設ける。
(4)保険料
  所得に応じて負担する。
(5)現役世代の支援
  一定年齢以上による公平な負担方式は、介護保険(納付金)方式として一般保険料とは別に保険料を納付する方法が納得性が高い。
(6)その他
  @ 保険者は、保険者機能を発揮するためにも年金制度との関係もあり社会保険庁所管が望ましい。
  A 経過措置は当然のことながら必要である。
2・診療報酬制度の見直しについて
 老人医療についてどのような制度をとるにしても、医療費の伸びが老人人口の伸びよりはるかに高い水準のもとでは、制度の存続維持はできない。
 老人医療費をいかに抑制するかについては、現行の診療報酬体系を中心に、次の諸費にメスを入れるべきである。
(1)老人外来医療
  薬剤の一部負担の実質廃止と外来の診療報酬改訂が入院に比べて優位に評価されたことと重なり前年比2ケタの伸びを示しておりこの抑制を最優先すべきである。
  @ 老人医療における薬剤の多剤投与の抑制
 レセプト記載の簡素化のために制度化された205円問題は実施されて以降異常な伸びを示し、総医療費に占める割合は50%近くにもなるものと観測がなされている。
 このようなことは制度化された当時、予想もされていなかったことで、制度化後、度重なる薬価基準の引き下げで205円調剤に相当する薬剤数も増加したこともあり、さらにこれに便乗した多剤投与があるものと想像される。したがって、制度化された当時の薬剤比になるよう205円を105円程度に圧縮する必要がある。
  A  老人慢性疾患外来総合診療科(外総診)の診療報酬の見直し届出保険医療機関にあっては、すべての老人慢性疾患を対象(投薬・注射・検査・指導等すべての費用を含む定額制)としているが、病状急性増悪の状態にある場合は、月毎に出来高払いが選択できることとしており、この自由選択制を廃止して、このような急性増悪期にかかる外総診の診療報酬に評価を加えた「まるめ点数」を設定する。
 また、重複受診にかかる外総診の取り扱いについて保険者からの通報で、一方的に査定する方式を改め、当該保険医療機関が事前に知ることができない重複受診については患者に対する指導を保険者が実施し、患者に対し返還等の措置をすることとし、外総診の選択定着化を推進させる。
(2)老人慢性期入院医療の差別化
   現行の長期入院は一律定額制であるが、リハビリテーションの程度や、ADLなど臨床的特性を3段階に評価する支払い方式(アメリカのナーシングホーム長期入院患者にかかる分類支払い方式―RUG)を採り入れてはどうか。
 このことにより、病棟ごとに一律評価されている入院基本料に格差をつけ、入院医療の実態に適合した診療報酬となるのではなかろうか。また、保険者にとっても、一律定額制であれば患者の情報に乏しいが、3段階評価をレセプト上知ることができ、次に連なる介護保険へと、移行等にも役立つのではなかろうか。
(3)医療供給体制の整備促進(保険医療の質の確保)
   最近実施された調査結果においても、医療機関(病院)の医師看護要員の医療法の法定要員数の不足が指摘され、このことが度重なる医療過誤にも関係する要因ともなっている。
 このことは保険医療の質の確保の上での前提条件でもある。
 診療報酬の上では、極めてゆるやかな法定要員不足に対する制裁として、所定点数の減額がなされている。
そこで、現在までのこの制裁措置の実態を調査するとともに、改めて制裁措置条件を見直し、これを厳格に適用をすることによりその整備の促進を誘導すべきではないか。
 また、適正な医療分業を促進させるため、同一保険医療機関(医師)、専属のような保険薬局(門前薬局)についての調剤報酬の減点もさらに厳しくする必要がある。
(4)介護報酬との整合性の確保と移行の促進
   介護報酬は、診療報酬と整合性のある総合的評価が必要である。平成15年度に見直すこととされている介護報酬であるが、14年改革に合わせ下記事項につき総合的に見直しを検討する必要がある。
  @ 現行の両報酬を比較しても、明らかに介護報酬の評価が劣っており、病院は経営上の観点から、介護施設への転換を妨げている。
  A 介護保険における室料差額・おむつ代・おせわ代等の規制は、医療保険のように整備されておらず、同一病院内の療養病棟と介護施設でも格差が生じ、介護保険の別途料金が多大となり、それがため介護認定者であっても病院の療養病棟にとどまっている。
  B したがって、介護保険創設で最も期待していた「社会的入院の解消」は、特に低所得者を中心に達成されていないだけでない従前の療養型病床群に対する国庫負担50%は介護保険に移行したため、介護保険施行による財政的恩恵はほとんどないに等しい。
  C 介護指定病床数の都道府県格差が著しく、これがため老人医療費の格差が一層進行している。
 
大阪連合会が記者会見
拠出金の重圧に泣く健保組合の実態を訴え
 健保連大阪連合会は2月22日(木)、大阪府庁で記者会見、会員組合の平成13年度拠出金の負担状況緊急調査の結果を発表、このままでは財政が破綻し解散に追い込まれる組合も出てくると、制度改革の14年度実現を訴えた。
●記者会見への出席者
 
副会長 コ 永 幸 彦 松下電器顧問
専務理事 早 司 欣 弘  
理  事 西 川   實 大阪金属問屋常務理事
理  事 佐 藤 孝 仁 産経大阪支部理事
     
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