広報誌「かけはし」
2001年3月25日 No.354
なるほどタバコ学
   
  ●第6回「禁煙のすすめ」
  (財)大阪がん予防検診センター 調査部長 中村 正和
   昨年5月に始まった本連載も早や最終回をむかえました。今回は、上手に禁煙をするための心がまえとその方法をご紹介したいと思います。
 健康によくないとわかっていても、なかなかやめられないのがタバコです。「タバコがやめられないのは意志が弱いから」という言葉をよく耳にしますが、本当でしょうか。最近、公共場所や交通機関をはじめ、家庭や職場での分煙が進み、肩身が狭くなってきたにもかかわらず、タバコを吸い続けておられる人は、むしろ意志が強いといえるのではないでしょうか?
 タバコがやめにくい本当の理由は、ニコチンに対する依存(いわゆるニコチン中毒)と、タバコを吸うことが習慣になって心理・行動的に依存しているためです。(図1)
 
図1.タバコをやめにくくする2つの依存
   
   禁煙したいという一心でただやみくもに禁煙にチャレンジしても成功するというものではありません。長年の年月をかけて出来上がった習慣を切り崩しながら、ニコチン依存症から抜け出すためには、禁煙のノウハウを身につけることが必要です。ここでは、禁煙に役立つ3つの秘訣を紹介します。
 禁煙の第1の秘訣は、禁煙を始める日を具体的に決めることです。このことは、禁煙しようという気持ちを行動につなげるのに役立ちます。禁煙を始める日としては、仕事が一段落した時で、あまりストレスがなく、時間にゆとりのある時を選ぶとよいでしょう。
 第2の秘訣は、タバコを吸いたい気持ちをコントロールする方法を身につけることです。その方法としては、「代償行動法」がおすすめです。この方法は、喫煙の代わりに他の行動を実行し、吸いたい気持ちをコントロールするもので、具体的には、吸いたくなった時に、深呼吸や水を飲んだり、糖分の少ないガムや干昆布をかんだりします。また、医師の処方を受ける必要がありますが、「ニコチンガム」や「ニコチンパッチ」(皮膚に貼布して用いる薬剤)という禁煙の補助剤を使うと、禁煙後の離脱症状(いわゆる禁断症状)を抑えることができます。(図2)
   
 
▲ニコチンパッチ ▲ニコチンガム
 
 ニコチンパッチやニコチンガムは、禁煙時に出現する離脱症状に対して、ニコチンを薬剤の形で体内に補給し、その症状をやわらげて禁煙を楽にできるよう工夫された医療品です。
図2.禁煙のための薬剤
   特にニコチン依存度の高い人や過去に禁煙して離脱症状が強く出た人にはお勧めです。ニコチン依存度が高いかどうかの簡易判定は、以下のとおりです。(1)朝目覚めてから5分以内に吸う、(2)1日31本以上吸う、の2項目とも当てはまる人は、ニコチン依存度が特に高いといえます。
 第3の秘訣は、禁煙を続けるための秘訣です。喫煙の再開は、禁煙して6ヵ月以内、とりわけ1ヵ月以内に多く、タバコを勧められるなど、まわりの喫煙者からのプレッシャーをはじめ、気分の落ち込み、仕事上のストレスなどで起こります。禁煙を上手に続けるためのコツとしては、(1)タバコの害について自分なりのイメージを持つ、(2)禁煙しようと思った理由や禁煙中の努力を思い浮かべる、(3)禁煙して良かったことを考える、(4)気楽な気持ちで禁煙を続ける、(5)禁煙できたことに自信をもつ、(6)まわりの人に禁煙を勧める、などがあります。禁煙を続けるのにくじけそうになった時に、これらのコツの中から自分に合った方法を選んで実行してみましょう。
 なお、自分で禁煙するのは無理とお考えの方には、禁煙外来がおすすめです。私どもの施設のホームページ
http://www.iph.pref.osaka.jp/ocpdc/index.html
で禁煙外来を行っている医療機関を紹介していますので参考にしてください。
(連載おわり)