広報誌「かけはし」
2001年2月25日 No.353
時評
 ●元気印の大阪中央病院 「急性期医療」で都市型に返信
 

『時評』欄は昨年「進まぬ抜本改革」「健保財政ピンチ」など重苦しいテーマで明け暮れました。それはそれで致し方ないけれど、新世紀の始まりなので明るい話題をと考え、いま「元気印」の健保連大阪中央病院・正岡昭院長に現況を聞きました。
 新病院は昨年6月のオープンいらい都市型の「急性期医療病院」を目指していろいろ手を打ってきました。発病まもない患者に高度の医療を施し、短期の入院で治すことで、患者の平均入院日数は少なくなり、平均13日間。正岡院長が就任した4年半前の旧病院では平均40日間だったので、3分の1以下になったわけです。全国の大病院の平均20日間にくらべても少なく、先進国・米国の平均10日間に迫る勢いです。
クチコミで広がる
 旧病院はお初天神の商店街の真ん中にあり、慢性患者が多い高齢者中心の「療養型病院」でした。新病院はターミナルにありオフィス街にも近く、ビジネスマンが勤務の合間に受診もできます。大阪近郊から電車での通院も便利で、これが都市型の「急性期医療病院」に転換できた原因のひとつです。
 地の利だけでなく、この病院ならではの特色ある診療つまり「得意ワザ」を打ち出すことで、受診者を増やしています。引っ越しで旧病院時代の患者は減りましたが、全体では以前を上回る数に回復したそうです。
 特色ある診療科目のひとつが整形外科で、ひざ関節の治療をする受診者がふえています。スキーやサッカーなどでひざを痛めた人たちが通院するようになり、それがスポーツ仲間にクチコミで広がってきたそうです。
 ハイテク機器と医師や看護婦など優秀なスタッフが確保できたおかげで、「初期がんなど内視鏡手術の対象を拡大」「老人特有のしみ、ほくろなど除去する整老皮ふ科」「インポテンツを回復させる泌尿器科」など「得意ワザ」が増えてきました。旧病院時代から定評があった男性の不妊治療を女性までに広げた「不妊治療センター」も1月から始動しました。
 診療科目の特性だけではありません。予約診療、窓口会計のスピードアップ、薬の院外処方とシステムをガラリと変えたことで、旧病院にくらべ診察の待ち時間は大幅に短縮されました。
病床稼働率が課題
 オープンのさい筆者はこの欄で「『六甲おろし』はまだ早い。これからが本番だ」と多少嫌みな一文を寄せました。正岡院長のにこやかな表情を見ていると「そろそろ『六甲おろし』の音合わせを」と思いたくなるけれど、まだ課題は多く残っています。
 黒字経営の実現もそうですが、入院ベッドの稼働率をあげることも急務です。目標80%のところが、現在は60%。「急性期医療病院」は、いきおい入院ベッドの空きが増え稼動率が下がります。土・日曜の病室はガランとし、近くのオフィス街並みに「週5日制」のようです。「この点は見込み違いでした。このジレンマをどう克服するかが課題です」と正岡院長。とはいうものの「病院は独立採算の経営を義務づけられており、今日明日というわけにはまいらないが、そのメドは立っています」
健保組合の病院がともかくも「元気印」なのはうれしいことです。組合員みんなで「聞いてんか!新病院はええ病院やで」とあちこちでPRし、健康診断などの利用を積極的に進めて、もっともっと元気になってもらおうではありませんか。
(仁)