広報誌「かけはし」
2000年12月25日 No.351
糖尿病治療の最前線
「健康セミナー」が11月20日、大阪市北区の健保連大阪中央病院大会議室で開かれ、同病院の津川真美子内科医長が「糖尿病治療の最前線」と題して講演。スライドなどを使ってわかりやすく説明した。
津川真美子内科医長
●検診フォローの重要性などについて
   脂肪摂取量の増加に伴って、日本人の中で内臓脂肪型肥満という体型が増えています。それがインスリン抵抗性という病態になり結論として糖尿病が増えてくるのです。また糖尿病だけでなく、高脂血症や脂肪肝、高血圧など、皆さんが日頃取り組んでいる生活習慣病も同様で、まずは「脂肪制限の意識」が重要です。さらにカロリー過多による肥満度も増加しています。美容のためでなく、健康のための「体重制限の意識」を持つこと。それらとならんで適度な運動量が必要です。こうしたことを予防医学的アプローチとして、健康な方に啓発することが大切です。
 次に検診フォローに関してですが、検診の結果によって「経過観察」、「再検査」、「精密検査」、「受診治療」の4つくらいに分けていらっしゃると思います。施設としてはきっちり行っていらっしゃるようですが、健保組合によっての解釈がそれぞれあるのが現実です。まず尿糖についても健康な人には絶対に出ません。ですから1回でも尿糖が出たら血糖測定あるいは負荷血糖測定をすることです。それによってより早期の診断を行うこと。そして保険レベルで治療になる前に食い止められるのが理想だと思います。
 血糖チェックに関しても1度でも異常値が出れば生活習慣改善のための指導を行わなければなりません。しかし生活改善しても血糖値が下がらない場合は早期紹介受診が必要です。また高血糖者に対して程度に応じて要経過観察としますが、それを伝えるだけでは不十分です。何をどう変えて半年なら半年、様子をみるのかしっかり伝えることが大切です。
●現代の夜型生活も環境因子のひとつ
 
 現在日本人の8人に1人が糖尿病というデータが出ています。外来の患者さんにはまず「糖尿病という診断が出ていますが、糖尿病と糖尿病状態とは違います」という説明をします。ライフスタイルを整えて糖尿病状態にならないように、合併症がでないようにするのが治療のゴールです。
 糖尿病の環境因子として脂肪摂取の増加、運動不足について先程触れましたが、ほかにストレスの増加、夜型生活が考えられます。平均夕食時間が何時かというアンケートをとったところ糖尿病状態がないところまでコントロールしている糖尿病の人で、平均夕食時間が8時を過ぎている人はゼロです。ということは、平均して8時を過ぎている人は絶対コントロールできないということになります。本日は2型糖尿病についてお話しているわけですが、患者さんが主役というのが糖尿病の治療の特徴で、こちらが一方的に言うのではなく、「この1食をどう食べるか」「今日1日をどう動くか」「ライフスタイルをどう作っていくか」など、問いかけながらの指導をしていきます。 食事指導のなかに最近は外食指導も入れています。具体的には「外食時は栄養成分表示のある店で」、「いろいろな食品が入っているものを選ぶ」、「単純で料理法が分かるものを選ぶ」、「よく噛んでゆっくりと。食べ過ぎないように」、「組み合わせを考えてバランスのよい食べ方を」、「好きなメニューには要注意」、「1日の摂取単位の3分の1を超えないように」の7つの心得をお伝えします。
 外来の一般的指導では運動指導のほか入浴など日常生活、旅行の仕方までを行います。患者さん自身が病態をきちんと把握し自己管理できるように指導すること。それが予防期および進行期に対しての治療の目標となります。