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●介護施設への転換急げ!
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皆さんの組合では、介護保険が実施されたことで、どのような対策を実施されましたか? 介護保険が実施されてから半年あまりが経過し、まずは順調な滑り出しになったようだが、我々健保関係者の最大の関心事は、高齢者の医療費のうちの社会的入院といわれている医療がどこまで介護保険に移行したかということである。
また、そのことが医療保険財政とも大きな関わりをもつだけに、健保にとって介護保険対象者を正確に把握し、介護保険に移行させることが非常に重要だと考えられる。
当組合では、介護保険の実施にさいして、65歳以上の高齢者について、実態を調査することが必要だと考え、65歳以上の高齢被扶養者に対して、アンケートを実施したところ、現在の健康保険組合の自助努力だけではカバーできないいくつかの問題が明らかになった。
誌面に限りがあるので詳細には述べられないが、高齢者の介護保険への移行の現状について述べてみたい。
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アンケートでは、まず介護保険でいう介護の必要性について尋ねた。「介護が必要である」と答えた人は、全体の17.9%で、そのうち介護の認定申請をしていない人の割合は、35%もあった。これだけマスコミや公共広告で情報が流れ、また、当組合でも機関誌や事業所を通じて啓発しているにもかかわらず、本当に介護保険が必要な人に伝わっていないという現実が明らかになり、いささか暗瀘(あんたん)たる気持ちになった。
さらに、「介護が必要な状態であるのに、認定申請をしていない人」という対象群を詳しく調査した。平成12年5月の受診状況をみると、入院中の人が25%を占めている。その中では、半数が急性期医療だったものの、残りは社会的入院と思えるものであり、特に3年以上の長期入院者が60%も占めていた。
中でも、特定の病院に数人が長期入院している事実がわかった。その病院は症状の変化がない長期療養者を収容する療養型病床群で、未だに介護施設に転換していないものであることがわかった。
伝え聞くところによると、今年の4月1日現在における療養型病床群の介護施設への転換病床は約11万5,000床で、厚生省が目標としていた19万床には、はるかに及ばないということである。
また、今年4月分および5月分の老人医療費の動向は僅か4.6%の減少であり、予算で見込んでいた16%減より、かなり小幅にとどまっている、とのことである。
その原因は、前述したような「社会的入院」が解消されていないことにつきる。また、組合が被保険者に、介護保険への移行を呼びかけたところで、入院している病院が介護施設に転換していない現状では、まったく効果があがらない。それどころか、介護保険へ移行をすすめたために、退院後介護施設の不足により入所できないことを、すべて健保組合の責任として恨まれる結果になりかねない。
厚生省は、入院6ヵ月後の医療費の逓減によってもっと転換がすすむ、と考えているようであるが、成り行きを見ている場合ではない。さらなる介護保険制度の周知徹底をはかるとともに、療養型病床群の介護保険施設への転換促進について早急に有効かつ適切な対策を実施すべきである。
(第4地区 H・M) |
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●手数料も要ります |
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大阪府の支払基金に納付する、診療報酬・老人保健拠出金・退職者給付拠出金の納付場所とされる指定銀行は4行ある。当組合の取引銀行も含まれているので、窓口で預金口座振替による納付(普通預金を引き出し現金で納付する扱い)をしているが、もちろん振込手数料は要らない。
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ところが介護給付費納付金の納付は指定銀行が富士銀行1行のみである。当組合の取引銀行ではない。現金を引き出し持ち歩くには多額であり、止むなく取引銀行で納付すると840円の手数料が要る。
このことを支払基金の担当課に「指定銀行をせめて前者並みに4〜5行にできないか、納付書による納付以外に方法はないか」と照会してみた。
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回答は「5,300もの保険者からの振込みが分散すると集計に手数がかかるので1行としている。集計の都合もあり納付書で納付願いたい」であった。納付書にも"コンピューターで処理するため・・・"の表示もある。いまどき集計に手数がかかるだけが理由とは到底考えられない、誠にお粗末で説得力のないお答えだ。振込手数料が減免されている組合もあるそうで、全ての保険者が負担しているとは限らないが、なんとかならないものか。ちなみに、交付金交付事業拠出金は11行の口座が指定となっている、支払基金のお答えからすれば健保連には随分お手数を掛けていることになるが、お蔭で手数料は要らない。
(第5地区 N・S) |
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●しっかりせんかい介護保険!
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介護保険制度が開始されて約7ヵ月余が経過した。私たち健保組合で大きな問題となっている保険料率の上限問題は言うに及ばず、平成12年度健保法改正(医療制度の抜本的改革)を先送りし、介護保険制度だけを見切り発車させた誤算が今になって表面化している。10月から65歳以上の第1号被保険者の保険料徴収が始まったが、保険者の市町村への苦情や問い合わせが殺到し、今も続いている。「介護は必要ないから払いたくない」「介護保険をとられたら年金がなくなる」など、負担増への不満が少なくないという。
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私たち健保組合は、介護保険制度の仕組みや制度のきまりを「健保だより」や「パンフレット」などで積極的に広報してきた。だが、国や市町村はそれなりの積極的な広報活動を行ったのだろうか。そればかりか、国民への広報不足を考慮してか、第1号被保険者への保険料の徴収を先延ばしする暴挙が国会ですんなりと認められ、今になってその対応に苦しんでいるのだ。筆者は今年の2月ころ、ある被保険者からこんな問い合わせを受けたことがある。「母がほとんど寝たきりで、病弱の妻と二人で在宅介護を行っているが、介護保険が導入されれば、母の症状だったら(現金で)30万円くらいがもらえるとどこかで聞いた。ずい分と助かるので申請したいが、健保にはどんな申請をするのですか?」これが当健保が健保だよりで広報した直後であっただけに、何とも情けない思いをした。
介護のサービスを受けるためには、ややこしい手続きが必要である。その上に介護を受ける人はその費用の1割を自己負担しなくてはならない。今までの老人保健制度の医療費の自己負担と比較して、場合によっては大きな差異を生じることもある。島根県のある町は、介護サービスを住民福祉の一環として、利用限度内なら一部負担金を無料にし税金でまかなう仕組みを導入し、10月からその支給を開始している。また、全国の多くの市町村で第1号被保険者の保険料を減免する措置を決定しようとしている。利用料の一部負担金の無料化や保険料の減免は明らかに「社会全体で支える介護保険制度」の趣旨から外れるものである。それもこれも、制度の見切り発車が大きな原因ではないだろうか。もっとしっかりせなアカンで介護保険!
(第5地区 ガンバルマン) |
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●21世紀の医療保険制度に展望はあるのか
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あとわずかで新しい世紀を迎える。この世紀の前半には、間違いなく未曾有の少子・高齢社会が到来し、社会構造をはじめ、経済基調や就業構造も大きく変わることになるであろう。
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当然、医療保険制度も、支える現役世代と支えられる高齢者の負担と給付、その両面に亘って厳しく見直さなければ、制度の維持・存続は困難であり、抜本的な構造改革が急がれる所以である。
しかし、現実には、ここ数年、介護保険を含む医療保険制度の改革問題は、先送りと場当たり的対応の繰り返しに終始し、本質的な問題解決への展望は全く立っていないと言えるのではないだろうか。
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とりわけ、平成9年の法改正時に国会で平成12年度実施を公約しながら、さらに、14年度へ先延ばしされた医療保険制度の抜本改革や、さきの国会で一度も審議されず廃案となり、今国会に一部修正のうえ再提出されている健康保険法等改正案などは、先送りの最たるものであろう。
また、場当たり的対応の例では、介護保険制度創設の直前になって、7,850億円に及ぶ巨額の財源により、介護保険第1号被保険者の保険料凍結を主体とした特別対策の実施、あるいは、廃案とされた健康保険法等改正案の中から、突如として短期間で議員立法化された高齢者薬剤一部負担の免除措置が挙げられる。
このほかにも、決まりかけていた参照価格制度が一夜にして白紙撤回された例など、枚挙に暇がないが。いずれのケースにおいても、つきつめてゆくと国政選挙の影がチラついており、政治家や政治団体のエゴ、さらには党利党略に左右されていると言っても過言ではない。
医療保険制度の財政は、まさに破綻寸前であって、このままでは崩壊への道を辿らざるを得ないこととは百も承知の筈である。
21世紀の社会にふさわしい医療保険制度を構築するためには、抜本的な改革・見直しとこれに伴う法律改正が前提であって、それには与・野党を問わず直接国政に携わる議員が国会において国民のために真剣に審議を尽くすことはもとより、将来の制度のあるべき姿や、その財源のあり方等をきちんと国民に示すことが先決であって、目先きの選挙のみを意識し、いつまでも先送り等に終始するといった無責任な姿勢は即刻改めるべきであろう。
(第6地区 M・N) |
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