介護保険制度がスタートして半年過ぎた。
12年4月からの施行期日が迫った11年11月に、政治的な思惑で当初の計画を変更して、第1号被保険者の保険料徴収を半年間免除し、12年10月からとし、その後の1年間の保険料は半額免除の特別対策が実施された。18カ月で6カ月分の保険料を徴収するのは1年間免除したのと同じである。
このことは、制度の説明会を開き、保険料の支払いについて積極的な広報に努めた市町村の出鼻をくじくことになったばかりでなく、納付義務を意識し始めた高齢者にも、大きな混乱と誤解を生じさせたようである。
厚生省の行った在宅サービス利用者の調査によると、サービス内容の評価としては「概ね満足」が84%「不満である」が9%、利用料については「概ね妥当な額」46%に対し「高い」が14%などをはじめ介護サービスの効果を認める声が多く、まずまず順調なすべり出しとある。利用者負担の軽減策がとられ、保険料の納付が免除されている時期での調査である。保険料徴収が始まれば、この数字がどのように変わるのか?
半額とはいえ、第1号被保険者の保険料徴収が、今月から始まる。もう一度制度の主旨を理解してもらい、保険料負担に対する十分な周知徹底が必要であることはいうまでもない。65歳以上はサービスは利用できるが、保険料は不要と誤解している高齢者も結構いるらしい。
こんな折9月初旬の新聞で『介護保険「首相かわり変更」と偽り詐欺』の見出しが目についた。「介護保険料の支払いは10月からだが、首相が交代して方針が変わった。今払えば来年、再来年は払わなくともよい」と言って4万円余りをだまし取った、との記事である。
当初の計画を変更して、制度の円滑な実施のためとの大義名分で保険料徴収が免除され、その後の徴収に絡んだ複雑さが詐欺のきっかけとなったとすれば、被害者や家族は諦めきれないだろう。
高齢者の介護システムに社会保険方式を採用した以上、第1号被保険者のみ1年分の保険料を取らないなどは、およそ理屈にあわないが、詐欺師がこのことをネタにしたとは考えたくない。
ところで、介護療養型医療施設への転換を思いとどまる傾向があると報じられている。19万床の転換が見込まれていたが11万5千床と大きく下回っているとのことだ。医療保険者にとって、社会的入院の解消を図ることこそが大きな期待である。12年度の老人医療給付額は、これでどれだけ減少することになるのか。当時の厚相の「この制度はまず施行して育てる制度だ。問題があれば見直してひとつひとつ改良していく」は、サービス利用者等に対してだけで、医療保険から介護保険に費用がシフトするための改良は含まれていないのだろうか。 (M・O)
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