広報誌「かけはし」
2000年9月25日 No.348
健康教室  
中高年によくみられる肩・膝・腰の痛みと
その対策について
9月13日、薬業年金会館で健康教室を開催。大阪大学医学部付属病院整形外科助教授の菅本一臣氏から各部の痛みのメカニズムや症状、その対策などをスライドを使って詳しく説明されました。
お話される菅本先生
 ●肩関節痛を生むそのメカニズム
   肩の痛みを訴えて多くの患者が来られるわけですが、首の付け根の痛みと腕の付け根の痛みの両方をわけて訴えなければなりません。なぜなら、医学的にいえばそのふたつは全く違う原因から引き起こされるものだからです。
 まず、首の付け根の辺りが痛むのが一般にいわれる肩こり。そして腕の付け根辺りの肩痛は肩関節痛であり原因も異なります。この肩関節痛の原因には、肩関節周囲炎いわゆる五十肩、腱板断裂、肩峰下滑液包炎などさまざまなものがあります。中高年の肩の痛みイコール五十肩でなく、五十肩はその一部にすぎません。
 人間には、背骨がありそこから肋骨が出ています。そしてその肋骨の上に肩甲骨が筋肉によってくっついています。またその肩甲骨から腕の骨がぶら下がっています。すなわち肋に肩甲骨がぶら下がり、肩甲骨に腕の骨がぶら下がっている。これがほかの関節と違う特徴であり、いろいろ病気を起こす原因でもあるのです。
 腕の骨と肩甲骨がどのような機構でつながっているかというと両骨をつなぐための袋状の関節包、それを補強するための腱板、さらにその上に腕を上げるための三角筋がついていますが、腕を上げるためには肩の関節の支点を作る腱板が大切な役目を果たしています。この腱板には非常に強い力がかかるため中高年になって一番最初にガタがくる。それが肩関節痛の大きな原因ではと考えられています。
 肩関節周囲炎(五十肩)は、原因は分からないが関節が炎症を起こし肩が上がらなくなる病気の一つですが、その経過をみると痛みを主症状とする急性期(4〜5ヵ月)、可動域制限が徐々に進行する慢性期(半年〜1年)、痛みの減弱と稼動域の増大をみる寛解期があり全経過期間は1〜2年であることが分かります。
 治療法としては、急性期には薬物用法、注射、リハビリ、縮こまった関節包に麻酔入りの液を注入し膨らます減圧療法による疼痛のコントロール。慢性期には温熱療法、運動療法、関節授動術など可動域制限に対する治療を行います。
 ●膝痛の症状や治療法等について
   肩こり(首の付け根部分の痛み)の原因としては、肩甲骨をつりさげる筋肉のなかを通っている神経や血管が圧迫される肩結合織炎以外に頸椎症・頸椎椎間板ヘルニア、胸郭出口症候群、肩関節不安定症などがあります。なかでも華奢な若い女性に多いのが胸郭出口症候群。これは鎖骨と肋骨の間の狭い部位を血管が通っていますが、華奢な人はその間が非常に狭く血管が圧迫されやすいんです。また肩関節不安定症も同様に華奢な若い女性に多くみられます。 
 次に膝関節の痛みについてですが、代表的なものに変形性膝関節症があります。これは太股の骨と脛の骨の間にある軟骨が痛んでくるもので、症状は軽症と重症に大別されます。軽症としては荷重時の痛み、関節水腫。重症として運動時のれき音、可動域制限、内反変形、膝周囲筋肉の低下が挙げられます。
 治療法としては、リハビリ、消炎鎮痛剤。局所麻酔薬やステロイド、そしてコラーゲンの一種であるヒアルロン酸ナトリウムを使った関節内注射、手術があります。
 変形性膝関節症と同じ症状があるのが慢性関節リウマチで、その診断基準としては、朝のこわばり、3関節以上の関節炎、可動域制限、内反変形などであり、安静、薬物療法、リハビリ、手術が治療法となります。
参加者から質問が次々と・・・
   膝の人工関節はよく知られていますが、これまでのものとちがい、私共では独自に広範囲接触型のものを開発し、圧力が分散されるので耐久年数もアップできるのではと期待しています。