歯周病と喫煙・全身の健康
－見える所・身近かな所からのアプローチ－
|
|
|
| ６月９日、薬業年金会館において健康教室を開催。大阪大学助教授（歯学研究科予防歯科学教室）の埴岡隆先生による「歯周病と喫煙・全身の健康－見える所・身近な所からのアプローチ－」と題した講演が行われました。 |
 |
| 講演される埴岡先生 |
|
|
| ●歯周組織は４つの構造物から形成 |
| |
本日は歯周病についての基礎的な知識を説明、その後歯周病と喫煙との関係、歯周病と全身の健康の話題と大きく３つのテーマに分けて説明していきたいと思います。
まず歯周組織についてですが、 歯周組織は歯肉、歯槽骨、セメント質、歯根膜。以上４つの構造物からなる複雑な組織で、症状としては見える症状と見えない症状があります。歯と骨の引っ付きの程度をアタッチメントといいますが、歯肉が赤くはれているようになりアタッチメントが悪くなるアタッチメントロスは自分でも確認できます。しかし歯と歯茎の隙間である歯周ポケットは自分で確認できません。通常、歯周病を自覚するのは歯槽骨（歯を支える骨）にまで異常が達したときで、それは歯周病が相当進んだ状態なんです。
 |
歯周病の基本的な原因と考えられるのはプラークで、プラークには歯肉縁上プラークと歯肉縁下プラークがあります。実際に歯周病に働くのは歯肉縁下プラークですが、縁上プラークがあると歯周病になりやすいという側面があります。さらにこのプラークとならんで、歯石も歯周病の基本原因のひとつではと考えられています。
|
歯周病のメカニズムは完全には解明はされていませんが、細菌が歯肉縁下のプラークとなり、それによりさまざまな細胞が反応し発症するのではと推定されています。
診断と治療についてですが、歯周ポケットのなかに器具を入れてその深さを測ります。そして通常４ミリ以上の部位がある場合に歯周病と診断します。治療は歯石を落とすなど口腔環境の改善を基本とします。また最近では、限界はありますが、縮んだ歯茎を増殖させることも可能になりました。
|
| ●歯周病と喫煙、全身の健康 |
| |
１９９３年の「歯や口の悩みごと」に関する調査によると、悩みがあると答えた人は６３・９％、ないと答えた人が３６・１％。そしてあると答えたうちの１１・９％が口臭に関しての悩みを抱えているという結果でした。
大阪大学歯学部では昨年口臭外来を開設、このことが新聞に掲載されると６月だけで１５０人の患者が殺到、これまで数百名が受診しています。というように口臭は関心の高い話題なのです。
歯周病は連続的でなく、活動期があり休止期もあるというように階段状に進行しています。ですから予防面から、サボーティブケアとして、活動期が少ない、活動部位が少ない、休止期が長く続く、歯周破壊が少ないなど、以上をトータル的に管理します。
| 喫煙は歯周組織へ思ったより大きな影響を与えるとともに、さまざまな口腔疾患と関連があります。口腔粘膜では口腔がんや白板症、ニコチン性口内炎（喫煙者口蓋）、慢性肥厚性カンジダ症など。歯周組織では、歯周病、急性壊死性潰瘍性歯肉炎。歯では、タバコ色素沈着、歯の喪失。舌では正中菱形舌炎、毛舌症。口唇では喫煙者口唇。 |
 |
| スライドを使って解りやすく説明 |
|
そして口臭を引き起こします。また喫煙は、歯周病自体にもなりやすいのはもちろん、出血反応が少ないため自覚症状が隠され、さらに治療の効果が良くない、治療期間が長く回数が多くなる、再発の可能性が高いということがいえます。
歯周病が全身に与える影響について疫学的にはメカニズムの解明にまでは至ってはいませんが、口腔と全身として、高齢者調査結果から健康日本２１の歯科保健で提案。また米国歯周病会公式見解として歯周病と関連する６つの疾患と症状がとりあげられています。さらに平成９年度厚生白書の生活習慣病の食習慣と喫煙習慣の項に歯周病が掲載されています。
健康日本２１では、８０２０運動などを積極的に進めていますが、その効果を上げるためにも包括的に生活習慣の改善の指導をしていかなくてはなりません。
口の中の状態は変わりやすいし、また正常部位と異常部位が同時に存在し見やすい。ですから実際にそれを見せることで行動変容させやすいのです。
話す、見せる、させるを関連づけることが行動変容に結びつけるのに最も効果的な方法だと考えます。 |
| |
高齢者の不整脈
－心房細動と徐脈性不整脈を中心に－
|
|
| |
 |
| 熱演される是恒先生 |
|
６月２０日、薬業年金会館において国立大阪病院循環器科部長の是恒之宏先生を講師にお迎えしての「高齢者の不整脈－心房細動と徐脈性不整脈を中心に－」と題した健康教室が行われました。
|
|
| ●心房細動は脳梗塞の大きな危険因子 |
| |
心臓が原因で脳卒中が起こる心房細動の脳塞栓は、心臓の中に血栓ができてそれが飛んでいって起こるものですが、最近、ご老人の脳梗塞のかなり多くの部分を占めるようになっており、これをいかに予防するかは大事なテーマです。これまでは頭の専門家が診ていたわけですが、元々の原因である心臓の方の医師が予防していかなくてはならないと、私どもでは２年前に心房細動専門外来を新設し取り組んでいるところです。
一般的な不整脈の考え方として、心房の不整脈と心室の不整脈がありますが、どちらが危険かというと心室性の不整脈の方が危険であるというのは正しいと思います。しかし、心室性の不整脈のすべてが治療の対象ではなく、心室性の不整脈の中でも危険といわれているＴ波の上に次の不整脈が乗るような非常に早いタイミングで出る不整脈やいろんな場所から出る多源性不整脈、連発して出るような不整脈など、こうしたものも全て治療の対象になるかといえばノーであります。
では、治療しなければならない不整脈とは一体どのようなものかというと、治療することによって命を長らえるかどうかが第一のポイントであり、症状のある心室頻拍や心臓が麻痺している状態の心室細動のような致死的な不整脈は治療の対象になりますが、極端にいうとそれ以外の心室性不整脈は抗不整脈薬の治療によって生命が長らえるというデータは全くありません。
不整脈で亡くなられる場合、ほとんどが突然死になるわけですが、死に至らないでも脳虚血症状や心不全症状、不整脈がどういう原因の疾患に伴ってるか、特に重症の心臓の病気に伴うような不整脈の治療については慎重を期します。
というのは、不整脈を押さえる薬は多かれ少なかれ、心臓の収縮力を落とす作用があります。ですから使用する薬によっては不整脈は治ったが、心不全を悪化させたり他の病気が出てくる場合があるので、心臓の状態や血中度など慎重に診ていく必要があります。
|
| ●心房細動・徐脈性不整脈の具体的な治療法 |
| |
心房細動には発作性と持続性のものがあり、その対処法として発作性の場合は心房細動を元の状態に戻し新たな心房細動の予防、脳塞栓の予防、心不全の予防・治療を行う。そして持続性の場合は心房細動を正常に戻すのは無理なので、心不全の予防・治療、脳塞栓の予防を行います。
具体的な治療法として、注射や経口薬、そして電気ショックを与える方法がありますが、心機能が悪い場合は積極的に電気ショックを行います。経口薬には抗凝固薬ワーファリンとバファリンなどアスピリンが使用されますが、ワーファリンの場合、脳出血を引き起こすのではないかということで、医師自身これまで使用に際しては消極的でしたが、海外での大規模な臨床試験の結果、ワーファリン投与群では、コントロールが良好なら出血をおさえつつ脳梗塞の年間発症率は１・３％で、対照群の４・４％に対し、６９％の危険率低下という結果が出ました。このことから抗凝固薬を使用しコントロールすれば心房細動患者の脳梗塞は怖くないといえます。
 |
| 先生が出られたビデオなども使用 |
|
心房細動のほか、高齢者に多い不整脈に洞機能不全症候群や完全房室ブロックなどの徐脈性不整脈があります。心臓を発電所に例えると、２階の発電所（心房）で作られた電気が１階の心室に伝わるためには１・２階間の階段が電線の役割を果たさなければなりませんが、これがなんらかの理由で完全に遮断された状態が完全房室ブロック、発電所の機能が低下するのが洞機能不全症候群です。
|
治療には脈を早くする薬の使用には限界があり、脈が遅いことによる自覚症状がある場合は積極的にペースメーカー治療を行います。また自覚症状がない場合は、無治療で経過観察をします。
心房細動ならびに徐脈性不整脈など高齢者の不整脈対策は、よりよい老後を過ごすための非常に重要なテーマであるといえます。 |
|
|
