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■2000年7月25日 No.346 |
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保健婦研修会が6月28日、健保連大阪連合会講堂において開催。今回は大阪大学医学部産婦人科学講座助教授の倉智博久先生による「『低用量ピル』について〜最新知識で女性の健康管理を考える〜」と題した講演で、質問の時間では、適切なアドバイスが行われました。 |
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※写真をクリックしていただくとカラー写真がご覧になれます。 |
「低用量ピル」について
-最新知識で女性の健康管理を考える- |
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●低用量ピルのメカニズムと効果 |
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昨年6月、厚生省の諮問機関である中央薬事審議会において低用量ピルが承認されたと各紙が一斉に報じました。我が国の人口動態を初婚年齢も第一子出産も共に2歳ほど上昇しています。このことから20歳代の女性にとって安全な避妊は重要なことなのです。
しかし日本での避妊方法はコンドームが圧倒的で、ピルやIUD(子宮内避妊器具)など、近代的で信頼できる方法が用いられていません。アメリカのガイダンスからのデータによると、100人が1年間ピルを使用して何人が失敗(妊娠)するかですが、1、000人に1人という結果が出ています。
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質問に答えられる
倉智先生 |
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また日本はヨーロッパ各国の10%程度に対し、29・4%(出生100人に対して)と、中絶する比率が高い。その原因のひとつは不確かな避妊方法にあります。女性が理想とする避妊は確実、使用に際して不安がない、使いやすいなどですが、ピルはそれらに対しかなりの部分で満足する方法であるといえます。
低用量ピルは1錠剤の中に卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲストーゲン)の2種類のホルモンで構成された合剤です。では、ピルを投与するとどのようなメカニズムで避妊効果があるかというと、ご存知のように、視床下部、脳下垂体といった中枢系から卵巣を刺激するFSHとLH2種類の性腺刺激ホルモンが分泌されます。これにより卵巣で卵胞が発育し排卵、黄体が形成されます。ピルを構成する2種類のホルモンは、本来卵巣で分泌されるんです。それを外来性に投与すると、中枢では卵巣が働いていると錯覚し、結果、下垂体が卵巣刺激を弱め排卵を抑制します。これが第1のポイントですが、このほかにも子宮内膜の発育抑制による受精卵の着床阻害や子宮頸管粘液を減少させて精子の通過阻害効果などを合わせ持つことで高い避妊効果を発揮するのです。
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●ピルの副作用と副効用について |
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低用量ピルが承認されて約1年ですが、1960年には日本においても臨床試験が開始されていたのです。しかし不明瞭な理由で審議が中断したままに。そして85年に日本産婦人科学会などから要望書が出され、翌年、経口避妊薬の医学的評価に関する研究班が発足、臨床試験が行われ、90年に申請されました。しかし92年に公衆衛生上の見地から再び中央薬事審議会での審議が中断。というのは、このころからエイズが問題となり、予防の第1はコンドームであり、ピルによってエイズが蔓延するのではというのがその理由です。
そして97年にガイドラインが作成され、99年にやっと承認されたのです。
次にピルの副作用と副効用について。ピルの副作用は重大なものとしては、心臓あるいは血管性疾患のリスクと乳癌や子宮頸癌を増加させる発癌性の問題があります。軽症なものとしては頭痛、嘔吐など消化器症状があり、すべての症状を合わせ、最初は4割程度の人に副作用が出ますが、しかし軽症な副作用は継続して服用することで大きく減少してきます。また血栓症による深部静脈血栓や心筋梗塞などのリスクに関しても加齢や喫煙、肥満などの因子が重ならなければ決して危険ではないと考えられます。
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また、乳癌と子宮頸癌を増加させるといいましたが、その一方で子宮体癌と卵巣癌は大きく減少。アメリカではピルの服用が一般的になった1970年頃から卵巣癌による死亡者が明らかに減っているという興味深いデータがあります。さらにピルには月経時の出血量を減らし月経痛を和らげるなどの副効用も認められているのです。
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講演のあと、参加者から大きな拍手が・・・ |
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