時評
『持続可能な医療保険制度への改革』
~世代間の公平な給付と負担を目指して~
わが国の医療保険制度は国民皆保険を基盤として、誰もが安心して必要な医療を受けられる仕組みとして機能してきました。しかしながら、少子高齢化が急速に進む中で、現役世代に負担が重くのしかかる構造が顕著化してきており、「世代間の公平性」が制度の持続可能性を左右する重要な課題となっています。
医療保険制度における「世代間の公平性」は、年齢の異なる各世代が、医療サービスの給付と保険料・税の負担の間で、均衡のとれた関係にあることが大事です。
わが国では、高齢化に伴い70歳以上の医療費が急増しており、特に75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の医療費は年々拡大しています。それに伴う医療給付費は令和7年度予算ベースでは18.7兆円に達しており、そのうち約47%を公費(本来は50%。「現役並所得者」は公費の対象外とされているため。)で賄い、約40%を現役世代からの支援金で支える制度となっています。結果として、現役世代が負担する保険料は上昇し、世代間の「負担と給付のアンバランス」が拡大しています。
また、高齢者の自己負担割合が低く設定されている点も課題となっています。医療費の窓口負担割合は原則69歳までは3割、70~74歳は2割、75歳以上は1割に抑えられており、現役世代と比べて大きな差があります。自己負担を抑えることは高齢者の生活を支えるうえで一定程度必要ですが、一方で軽微な症状でも医療機関の受診回数が増える一因となり、医療費全体の増加を招く原因にもなっています。これにより、結果的に現役世代の負担がさらに増すという構造が生じています。
われわれ健康保険組合においても、財政悪化原因の一つが、高齢者医療制度への拠出金です。保険財政の維持のために現役世代の保険料負担が年々重くなっています。給与に対して一定割合で徴収される保険料は、高齢者医療制度への拠出金による財政圧迫を補う形で段階的に上昇してきており、特に若年層や非正規労働者にとって、所得に対して保険料負担が相対的に重くなる傾向にあります。この負担増は、可処分所得の減少や生活の不安定を招き、「世代間の公平性」を損ねる一因となっています。
医療保険制度におけるこれらの課題を解決し、「世代間の公平性」を確保するためには、給付と負担の見直しが不可欠です。一定以上の所得を有する高齢者の負担割合を引き上げ、「負担能力に応じた負担」を徹底すれば、現役世代の過重負担の緩和に繋がります。リフィル処方箋の活用や、かかりつけ医の機能強化など適正受診を促す仕組みの整備、医療提供体制の効率化などの改革も求められます。
わが国の医療保険制度における「世代間の公平性」は、医療費の構造的な増加と社会の人口構成の変化により大きな課題を抱えています。どの世代も過度な負担を強いられることなく支え合い、将来世代も安心して制度を利用できるよう、持続可能性と公平性の両立を目指した改革が進められることを期待します。
(S・F)


