健康セミナー
6月25日、健康セミナーを開催。立命館大学 スポーツ健康科学部 教授 家光 素行氏が「メタボの予防・改善のための運動~手軽にできるストレッチ・筋トレ~」をテーマに講演されました。
メタボの予防・改善のための運動
~手軽にできるストレッチ・筋トレ~

家光 素行 氏
メタボリックシンドロームの大きな要因である肥満は、エネルギー摂取量が消費量を上回ることで生じます。肥満の改善には、摂取を抑える食事制限だけでなく、消費を増やす運動の併用が重要です。運動には脂肪を燃焼するだけなく、筋量や骨量の維持、心血管疾患リスクの低下、体力向上といった多面的な効果があります。
推奨される運動の種類は、有酸素性運動(ウォーキングやジョギング)、レジスタンス運動(筋力トレーニング)、ストレッチ運動、日常的な身体活動などです。有酸素運動は脂肪燃焼と全身体力の向上に寄与し、週3~5回、1回30分以上の実施が望ましいとされています。一方、レジスタンス運動は、減量によって低下しがちな筋量の維持に効果的であり、筋力向上にもつながります。中~低強度のレジスタンス運動は、動脈硬化の予防にもつながります。また、ストレッチ運動は、直接的な減量効果は低いものの、継続的に行うことで高血圧や動脈硬化のリスクを軽減することが近年の研究で明らかになっています。


例えば、1日2回(朝・晩)下肢中心のストレッチを10~20分程度習慣的に実施することで、動脈硬化度が低下するという結果もあります。高血圧・動脈硬化に対して効果的なストレッチは、ストレッチ後の10〜20秒程度の休息時間が、血流の増加とともに血管拡張を引き起こすために重要なポイントです。ストレッチ運動のような気軽な運動でも高血圧・動脈硬化に対して効果が得られます。
メタボリックシンドロームの予防・改善のための減量を目指す場合は、体重の5〜10%減を目標とし、3〜6カ月間の期間をかけて実施するのが基本です。例えば、1日300kcalのエネルギー消費を摂取量よりも増やせば、1カ月で約1.3㎏、6カ月で7kg程度の減量が計算上は可能です。運動によるエネルギー消費量の計算には、METs(メッツ)という指標が活用されています。1METsは安静時の代謝量を基準として何倍の身体活動を行ったのか、METsと体重と運動時間の積により運動によるエネルギー消費量を簡便に算出できます。例えば、体重90kgの人が3METsの速歩を40分行うと、約200kcalを消費します。
このように、メタボリックシンドロームの改善のためには、個々の体力やライフスタイルに合わせた無理のない運動プログラムの構築と継続が不可欠です。科学的エビデンスに基づいた運動療法を日常生活に取り入れ、継続することが、健康の維持・増進に直結します。