健康セミナー
10月16日、健康セミナーを開催。立命館大学 スポーツ健康科学部 教授 家光 素行氏が「心血管疾患リスクを予防・改善するための身体活動」をテーマに講演されました。
心血管疾患リスクを予防・改善するための身体活動

家光 素行 氏
現在、国内の年間死亡原因の上位には、心疾患や脳血管疾患などの動脈硬化症が主因となる疾患があります。「ヒトは血管とともに老いる」といわれているように、年齢を重ねるごとに血管も老いて動脈硬化(動脈血管を硬くする現象)が進行するため、これをいかに防ぐ・軽減させることが重要です。
習慣的な運動は動脈硬化を予防・改善させることがこれまでの研究によって明らかになってきました。ただし、一概に運動と言っても、運動にはウォーキングやジョギングなど長時間運動が継続できる有酸素性運動だけでなく、スクワット、ダンベル、マシーンを使ったレジスタンス運動(筋力トレーニング)、ストレッチ運動など様々な様式があります。どの運動でも動脈硬化を予防・改善する効果があるのか、という疑問もあるため、運動様式ごとの効果を知ることは大切です。

有酸素性運度は、動脈硬化を予防・改善させる運動様式として最も効果的であることが証明されています。今までの研究報告をまとめてみると、2~3カ月間、1日30~60分、週3~5日のジョギングや自転車運動を「ややきつい」と感じる中強度の運動強度で実施した場合、動脈硬化度(動脈の硬さの指標)が低下することがわかっています。
次に、レジスタンス運動(筋力トレーニング)は、動脈硬化を予防・改善させる効果が運動強度によってはあまり期待できないという結果が明らかになっています。最大拳上重量の70~80%の重さで10~12回を2~3セット、週3回、高強度レジスタンス運動を12~16週間行った結果、動脈硬化度が増加してしまうことが報告されています。一方、低~中強度のレジスタンス運動を行った場合、動脈硬化度は増減させないという結果や低下させるといった好影響を及ぼす可能性があるという報告もあります。そのため、レジスタンス運動の効果は、運動強度によって変わる可能性が考えられます。
最近になって、ストレッチ運動は、動脈硬化の発症リスクを軽減させる運動様式であることが明らかになってきています。これまでの研究から、全身や下肢ストレッチ運動を1日20~45分、週3~7日を4~13週間実施したところ、動脈硬化度が低下したという結果が報告されています。さらに、1日の身体活動量(1日の歩数)が多ければ多いほど、動脈硬化を低下させることが明らかとなっています。特に、中強度と高強度の身体活動が多い方がより低下効果が得られることも報告されています。
このように、運動は動脈硬化を予防・改善させ、血管を若く保つ効果があります。しかし、運動様式によって動脈硬化を予防・改善する効果は異なります。また、運動効果を得るためには、運動を数カ月間以上継続しなければなりません。そのため、各自のライフスタイルに合った運動様式を選択してください。