心の健康講座
6月8日、心の健康講座を開催。大阪公立大学大学院 医学研究科 神経精神医学教室 准教授 岩﨑 進一氏が「働く世代に多い精神疾患」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨)
※本講演の動画は6月15日~7月14日までオンデマンドにて配信
働く世代に多い精神疾患

岩﨑 進一 氏
様々な疾患により休職される方はおられますが、近年では精神疾患による休職が、他の身体疾患に比べて圧倒的に多いという現状があります。加えて、精神疾患による休職期間は、他の疾患に比べ長期になりやすく、生産性に大きく影響します。また、周囲の労働者に対する影響も多大で、二次的メンタル不調者や、さらなる休職者を引き起こすこともあります。精神疾患の生涯有病率は約20%で、5人に1人が罹患し、25歳までに65%以上が発症しており、精神疾患を持ちながら就労している人が非常に多いのが現状です。そこで、働く世代に多い精神疾患についてお話させていただきました。
まず、精神疾患は検査などで診断できないため、診断基準に則り診断され、「症状は臨床的に著しい苦痛または社会的・職業的・他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている」ことが必要となります。また、一般的に了解できるような症状については、主治医の判断になります。精神疾患特有の問題として、
①原因がはっきりしないことが多く、遺伝や発達、脳自体の異常、性格、環境やストレス要因など、それぞれ単独では説明できず複合的なものと考えられること
②身体疾患のように、検査などの客観的な診断方法がない
③病識がなく、自身で治療を求めず治療が遅れ、悪化や治療困難の原因になること
④病気そのものが人間関係への悪影響を及ぼすこと
⑤理屈がなく同じ治療でも効果があったりなかったりするため、オーダーメイドが必要なこと
⑥援助者の精神病理を引き出すことがあり、援助者自身へ精神的な影響がある、
などについて説明しました。
働く世代に多い精神疾患として、うつ病、双極性障害、適応障害、統合失調症、発達障害、パニック症、身体症状症、アルコール依存症等を挙げ、個別の症例とともに説明させていただきました。
最も職場で多いうつ病に関しては、不眠、食欲低下、憂うつな気持ち、遅刻・欠勤、仕事のパフォーマンスの低下などが有名です。しかし、前述したこれらの症状は、嫌なことがあったときなど一般的にも生じる症状ですが、頭が重たくなる感じや、人に過度に迷惑をかけている気持ち、考えが止まってしまう感じなどは、うつ病が発症している際に認めやすい症状です。
最後に、精神疾患の治療として、何科にかかるべきか、精神科の治療法について、薬物療法、精神療法、入院治療、そして予後についてお話ししました。
この講演が、皆様のメンタルヘルス対応の一助になれば幸いです。