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広報誌「かけはし」

時評

来年の事を言えば鬼が笑う

去年の今頃、一体だれが想像していただろうか。
9月、安倍首相(当時)を引き継ぎ、圧倒的な強みで発足した菅内閣は、わずか1年で幕を閉じた。支持率は年末、低下傾向にあったものの、それにしても、である。

後手に回ったコロナ対応や政策に対する説明不足。主要選挙の連敗もあって、菅首相はあっという間に求心力が落ち、退陣に追い込まれた。そして10月には岸田内閣が発足。1カ月を待たずして総選挙が行われ、与党の自民、公明党が圧勝した。

振り返ればこの1年、コロナ禍にあって健康保険組合を巡る状況も大きく変化した。

健康保険法の一部改正など医療制度改革関連法が6月に成立。一定以上の収入がある75歳以上の後期高齢者は、医療費の窓口負担が1割から2割に引き上げられることになった。後期高齢者の2割にあたる約370万人が対象となる。

現役世代の負担軽減がねらいだが、その効果はわずかだ。年間1人当たり700円程度にとどまる。施行も2022年10月以降で、3年間は外来患者の負担増を3000円以内に収める措置を講じる。給付と負担の不均衡解消に向け一歩前進したものの、十分とは言えず、早期実施とさらなる改革が必要だ。

同法では、傷病手当金の支給期間の通算化や、任意継続被保険者制度の見直しなども盛り込まれ、来年1月から施行される。いずれも健保組合にとっては、重要な変更といえる。

一方で、健保財政は悪化するばかりだ。健康保険組合連合会が10月に発表した2020年度決算集計によると、コロナ下による受診控えで保険給付費が減少。保健事業も減ったことなどから支出が抑えられ、経常収支は黒字となった。

しかし、21年度以降は受診控えが回復し、保険給付費が増加、赤字に転じる。団塊の世代が後期高齢者となる22年度からは、高齢者拠出金が急増して赤字が拡大すると予想される。「2022年危機」である。

関連法では、社会保障制度の改革について、総合的な検討に着手し、その結果に基づき速やかに法整備や必要な措置を行うことが附則で設けられている。先の総選挙では社会保障は大きな争点とならず、ほとんど議論されなかったのは残念だった。

21年度補正予算や22年度予算はもとより、岸田内閣で新設された「全世代型社会保障構築会議」でしっかりと議論してもらいたい。そして我々はそれを注意深く、厳しい目で追いかけていかねばならない。

今年は、システムの改革も進んだ。いわゆる「マイナ保険証」の本格運用が10月に始まった。とはいえ、登録者が少ないうえ、医療機関の導入は遅れている。とてもスムーズなスタートとは言い難い。普及に向けての取り組みが続く。

年が明ければ2022年である。「危機」が現実のものとなる。いや、これ以上はもう言うまい。鬼に笑われてしまうから。

(Y・Y)