広報誌「かけはし」

■2021年2月 No.593
時評

半歩前進?全世代型社会保障改革

 昨年の12月15日、政府の全世代型社会保障検討会議における最終報告が閣議決定された。健保組合にとっての大きな関心ごととしては、やはり後期高齢者の窓口負担割合の見直しだろう。
 12月4日の記者会見において、後期高齢者の医療費の窓口負担を2割に引き上げる方針をめぐり、田村厚生労働大臣は「若い人の保険料が上がっている状況のなかで、上がり方をなんとか抑えていかなければならない。負担能力に応じて、しっかりと負担できるような階層にお願いをしていくことが重要なポイントだ」と述べていた。
 今や現役世代の負担増は歯止めがかからない状況である。そのようななか、後期高齢者の負担割合を2割に引き上げる対象は所得基準200万円以上となり、対象者数は約370万人にとどまるという。現役世代の負担増軽減を考えると不十分な内容だ。
 健保連の宮永会長は、「現役世代のさらなる負担増軽減および国民皆保険制度の持続可能性の観点から、国として今回の改革で終わらせることなく、次なる改革に向けて引き続き取り組むよう強く要望する」とのコメントを発表した。
 当初、2割負担への引き上げの施行時期は、団塊の世代が後期高齢者になる2022年度初めまでに実施する方針が示されていた。しかし、最終報告では施行に要する準備期間を考慮して、22年度後半までの間にすると変更された。我々としては、2割負担の対象が決定したのであれば、少しでも財政効果が現れるようできるだけ早急に実施していただきたいところである。
 2割負担が導入された場合の財政影響は、厚生労働省の試算によると、22年度の後期高齢者支援金総額の抑制効果が740億円。保険者別では健保組合は250億円(事業主負担140億円、本人負担110億円となる)。25年度の支援金総額の抑制効果は840億円。うち健保組合は280億円(事業主負担150億円、本人負担130億円)と見込まれる。ちなみに、直近の健保組合全体における決算見込みでは、後期高齢者支援金の支出額は約2兆円である。
 今後も少子高齢化が進み、人口構造のさらなる変化が見込まれる。閣議決定された最終報告では、結びとして、「現役世代への給付が少なく、給付は高齢者が中心、負担は現役世代が中心という社会保障の構造を見直し、すべての世代が公平に支え合う『全世代型社会保障』の考え方は、今後とも社会保障改革の基本であるべきである」と指摘。「さらなる改革を推進する」としている。世代間における負担の公平化は急務だ。まずは所得基準200万円以上とした後期高齢者の2割負担の対象を拡大することが望ましい。
 現役世代の過重な負担の軽減にはまだまだ不十分ではあるが、今回の見直しは、全世代型社会保障改革としての大きな一歩、いや、半歩だと思う。国民皆保険を守り、持続させるため、立ち止まっている時間はない。
  (M・S)