広報誌「かけはし」

■2021年1月 No.592
時評

昨年の悩みは今年のうちに

 新年を迎え、早や半月が過ぎた。心機一転、新たな目標に向かって邁(まい)進していきたいところであるが、どうにもすっきりしない。
 昨年を振り返ってみると、真っ先に頭に浮かぶのは、どうしても新型コロナウイルス感染症のことばかり。本誌に寄稿いただいた内容も、新型コロナが流行し始めたころからは、ほとんどが新型コロナに関連するものだった。健保組合が受けている影響の大きさを如実に表している。
 2022年度には団塊の世代が後期高齢者に入り始め、医療給付費の急増が見込まれる。その一方で、国民皆保険制度の支え手である現役世代の人口は急減が見込まれることで、皆保険制度は危機的な状況にある。そんな状況に追い打ちをかけたのが、今回の新型コロナである。企業業績の悪化により、標準報酬総額等が低迷し、それが長期化する見通しである。加えて、保険料納付猶予(事後納付ができない場合が多いと見込まれている)などの影響で、健保組合の財政は2022年度を迎える前に逼迫することが予想される。特に、宿泊・飲食サービス業や運輸業、卸売業など特定の業種の健保組合や、中小企業を中心とする総合型健保組合への影響が大きく、このままでは保険給付や拠出金といった義務的経費の支払いに支障が出る。新型コロナによる財政影響が大きい健保組合や、国の緊急施策に対応した健保組合に対する財政支援は不可欠であり、政府には本年度の予備費等の活用を早急に決定していただきたい。
 また、多くの健保組合で景気低迷による財政悪化の拡大が懸念され、大幅な保険料率の上昇を迫られることになる。もともと現役世代の拠出金負担は過重であり、健保組合の財政を圧迫してきた。新型コロナの影響により、一層の財政悪化が懸念される健保組合の拠出金負担を軽減する措置を、来年度予算で講じるべきだ。そして、コロナ禍でも保険者業務を継続できるよう、業務のデジタル化によるテレワークなどの推進もあわせて検討してほしい。
 大阪府は12月初旬、とうとう独自モデルに基づいた「医療非常事態宣言」を発令。重症病床の使用率が70%に迫ったことによる医療崩壊を防ぐことが主な理由である。警戒信号は赤色が灯され、「通天閣」や「太陽の塔」も赤く染まった。非常に物々しい雰囲気だ。飲食店へは休業や営業時間短縮の要請を行い、大阪府民へは不要不急の外出を控えるよう呼び掛けている。
 たとえ今後、ワクチンが開発されたとしても、直ちに感染状況が改善し終息するということは難しい。この非常事態がこれからしばらく続くことを想定しながら、健保組合は業務を遂行しなくてはならず、これは大阪に限った話ではない。
 新型コロナが現れてほぼ1年。今こそ踏ん張りどころである。今年こそ、すべての人の協力のもと、これまでに蓄積された知識と経験で、人類がウイルスの脅威を克服したと証明できる年になりますように。
  (M・S)