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医療・介護保険制度を取り巻く諸情勢と健保連の対応 |
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2019年度は、まず医療保険制度において、5月22日に「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」が公布された。医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るため、保険者間で被保険者資格の情報を一元的に管理する仕組みの創設、被扶養者の要件の適正化等の措置を講ずるとし、オンライン資格確認の導入・被保険者記号番号の個人単位化と告示要求制限の創設・健康保険の被扶養者の認定において、原則として国内に居住しているという要件を導入・社会保険診療報酬支払基金の機能の強化等が図られた。
また、医療・介護保険制度などの社会保障制度にとって二つの意味で節目の年となった。ひとつは、10月に消費税率が8%から10%に引き上げられ、子育て支援の強化や、介護保険料の軽減、介護職員の処遇改善などが実施された。もうひとつは、9月に、少子高齢化と同時にライフスタイルが多様化するなかで、誰もが安心できる社会保障制度に関わる検討を行うため、「全世代型社会保障検討会議」が設置された。全世代型社会保障改革は、2012年度に施行された社会保障制度改革推進法に基づき、内閣に設置された社会保障制度改革国民会議において、団塊の世代が全て75歳以上になる2025年に向けて、「全世代型」の社会保障に転換を打ち出したことがスタートとなる。12月の中間報告では、後期高齢者(現役並み所得者除く)の自己負担割合については、一定所得以上の者は2割とすることや、大病院への患者集中を防ぎ、かかりつけ医の機能強化を図るため定額負担の拡大を示した。同会議では、2020年夏に予定される最終とりまとめに向けて検討が進められる。
しかしながら、現状、急速に進む少子高齢化、人口構造、疾病構造の変化、医療技術の進歩等により、特に高齢者の医療費が増加した。
そのため、高齢者の医療費への拠出金増加が健保組合の財政危機を招き、各健保組合では、別途積立金繰入、保険料率引き上げで対応してきたが、既に財政的に限界にきている。このことから、健保連では、団塊の世代が後期高齢者に到達し始める2022年からを「2022年危機」として、高齢者医療費の負担構造改革を提言するとともに、国民皆保険制度を維持するためには、保険給付範囲の見直しをはじめとした医療費の適正化が不可欠とし、本格的な議論を求めている。
12月20日に2020年度政府予算案が閣議決定された。予算案には、高齢化による医療費の年間自然増の伸び5300億円を4111億円程度に抑えるなど、政府方針による社会保障関係費に対する抑制措置が盛り込まれた。また、2018年5月に成立した改正介護保険法による介護納付金の総報酬割が導入されたことに伴い実施された負担軽減策は2019年度で終了したが、全面総報酬割に伴い、被用者保険への財政支援が単年度に限り盛り込まれた。 |
A |
骨太方針2019 |
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政府は6月に「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針2019)を決定した。ここでは、成長戦略実行計画に基づく全世代型社会保障への改革などを主要政策としている。社会保障分野の改革の取り組みの基本的考え方は、「新経済・財政再生計画改革工程表2018」に基づき、基盤強化期間内から改革を順次実行に移し、団塊の世代が75歳に入り始める2022年までに社会保障制度の基盤強化を進め、経済成長と財政を維持可能にするための基盤固めにつなげるとしている。なお、給付と負担の在り方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策は「骨太方針2020」でとりまとめるとし、介護保険については、必要な法改正も視野に、2019年末までに結論を得るとした。 |
B |
健康経営優良法人認定 |
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2020年3月、日本健康会議が企業・団体を認定する健康経営優良法人に、「大規模法人部門(上位500法人をホワイトとする)」で1476法人、「中小規模法人部門」で4817法人が認定された(6月1日現在)。認定に当たっては、保険者と連携した健康経営の実践が重視されており、今回は、健康保険組合も全国で78組合が認定された。企業における健康づくりへの重要性が高まり、医療保険者と企業の健康づくりへのコラボが推進され、健康に対する意識の向上が期待される。 |