広報誌「かけはし」

■2020年8月 No.587

事 業 報 告 の 概 要

1.健康保険組合をめぐる情勢

 (1)医療・介護保険制度等に関する主な動き

@ 医療・介護保険制度を取り巻く諸情勢と健保連の対応
   2019年度は、まず医療保険制度において、5月22日に「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」が公布された。医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るため、保険者間で被保険者資格の情報を一元的に管理する仕組みの創設、被扶養者の要件の適正化等の措置を講ずるとし、オンライン資格確認の導入・被保険者記号番号の個人単位化と告示要求制限の創設・健康保険の被扶養者の認定において、原則として国内に居住しているという要件を導入・社会保険診療報酬支払基金の機能の強化等が図られた。
 また、医療・介護保険制度などの社会保障制度にとって二つの意味で節目の年となった。ひとつは、10月に消費税率が8%から10%に引き上げられ、子育て支援の強化や、介護保険料の軽減、介護職員の処遇改善などが実施された。もうひとつは、9月に、少子高齢化と同時にライフスタイルが多様化するなかで、誰もが安心できる社会保障制度に関わる検討を行うため、「全世代型社会保障検討会議」が設置された。全世代型社会保障改革は、2012年度に施行された社会保障制度改革推進法に基づき、内閣に設置された社会保障制度改革国民会議において、団塊の世代が全て75歳以上になる2025年に向けて、「全世代型」の社会保障に転換を打ち出したことがスタートとなる。12月の中間報告では、後期高齢者(現役並み所得者除く)の自己負担割合については、一定所得以上の者は2割とすることや、大病院への患者集中を防ぎ、かかりつけ医の機能強化を図るため定額負担の拡大を示した。同会議では、2020年夏に予定される最終とりまとめに向けて検討が進められる。
 しかしながら、現状、急速に進む少子高齢化、人口構造、疾病構造の変化、医療技術の進歩等により、特に高齢者の医療費が増加した。
 そのため、高齢者の医療費への拠出金増加が健保組合の財政危機を招き、各健保組合では、別途積立金繰入、保険料率引き上げで対応してきたが、既に財政的に限界にきている。このことから、健保連では、団塊の世代が後期高齢者に到達し始める2022年からを「2022年危機」として、高齢者医療費の負担構造改革を提言するとともに、国民皆保険制度を維持するためには、保険給付範囲の見直しをはじめとした医療費の適正化が不可欠とし、本格的な議論を求めている。
 12月20日に2020年度政府予算案が閣議決定された。予算案には、高齢化による医療費の年間自然増の伸び5300億円を4111億円程度に抑えるなど、政府方針による社会保障関係費に対する抑制措置が盛り込まれた。また、2018年5月に成立した改正介護保険法による介護納付金の総報酬割が導入されたことに伴い実施された負担軽減策は2019年度で終了したが、全面総報酬割に伴い、被用者保険への財政支援が単年度に限り盛り込まれた。
A 骨太方針2019
   政府は6月に「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針2019)を決定した。ここでは、成長戦略実行計画に基づく全世代型社会保障への改革などを主要政策としている。社会保障分野の改革の取り組みの基本的考え方は、「新経済・財政再生計画改革工程表2018」に基づき、基盤強化期間内から改革を順次実行に移し、団塊の世代が75歳に入り始める2022年までに社会保障制度の基盤強化を進め、経済成長と財政を維持可能にするための基盤固めにつなげるとしている。なお、給付と負担の在り方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策は「骨太方針2020」でとりまとめるとし、介護保険については、必要な法改正も視野に、2019年末までに結論を得るとした。
B 健康経営優良法人認定
   2020年3月、日本健康会議が企業・団体を認定する健康経営優良法人に、「大規模法人部門(上位500法人をホワイトとする)」で1476法人、「中小規模法人部門」で4817法人が認定された(6月1日現在)。認定に当たっては、保険者と連携した健康経営の実践が重視されており、今回は、健康保険組合も全国で78組合が認定された。企業における健康づくりへの重要性が高まり、医療保険者と企業の健康づくりへのコラボが推進され、健康に対する意識の向上が期待される。

 (2)健保組合・健保連関連の主な動き

@ 健康強調月間の行事を実施
   10月、健康強調月間の諸行事を実施した。今回のスローガンは「なりたい自分に向かって、いまから始める健康生活」とし、健康づくりに関する各種事業の実施を通じて、健保組合加入者の健康の保持・増進を図ることとした。2019年度は「人生100年」時代へ向かおうとしている中で、国民全体のヘルスリテラシーの底上げを目指し、健康無関心層へ健康習慣への気付きを与え、「健康寿命の延伸」につなげることを目的とした。
A 健保組合全国大会を開催
   11月22日、東京国際フォーラムで「迫る2022年危機!今こそ改革断行を!」をテーマに、健保組合全国大会を開催した。大会では、@皆保険の維持に向けて、まずは高齢者の原則2割負担の実現A必要な公費の拡充。現役世代の負担増に歯止めB保険給付範囲の見直しによる医療費の適正化C人生100年時代。健康寿命延伸に資する保健事業の推進―の4項目をスローガンに掲げ、健保組合・健保連の主張を内外にアピール。大塚健保連会長から厚生労働省の土屋厚労審議官に大会の決議を手渡し、必要な改革を早急に実行するよう求めた。

 (3)健保組合の状況

@ 健保組合数
   健保組合数は、2019年4月1日現在、1388組合となっている。健保組合数はピーク時より436組合減少しており、財政状況の厳しさを如実に表している。なお、2020年4月1日では1389組合で、前年比1組合の増となった。

2.大阪連合会の事業活動概要

 大阪連合会では、2019年度を通して理事会、各委員会で時宜に応じた活発な論議を展開、円滑な事業運営に資するための各種事業を実施した。とくに、高齢者医療制度改革については、関係各方面に理解と支援を強く要請。そして、増大する医療費適正化への取り組みとして、4回目となる「健康みらいトークin大阪〜医療費が増えている!これからの健康どうする〜」を10月5日に開催し、多くの参加者のもと所期の目的を達成することができた。

 (1) 広報活動(広報委員会関係)

 機関誌「かけはし」およびホームページを通じ、高齢者医療制度改革、介護保険制度改革、柔道整復等関係情報、健康づくり情報など、健保組合をめぐる情勢および健保連の考え方や各種情報を掲載するとともに、大阪連合会の総会・理事会・委員会・地区会活動など、主要な事業の広報活動に努めた。

 (2) 組合業務支援活動(組合業務委員会関係)

 健保組合役職員の資質向上と連帯感の醸成に有効な、事務長・中堅職員等研修会、組合業務別実務講習会、初任者実務講習会、個人情報保護研修会、後発医薬品に関する講習会、情報セキュリティ講習会、パソコン研修会を開催した。

 (3) 医療費適正化対策活動(医療給付委員会関係)

 歯科レセプト点検事務研修会、求償事務研修会、柔道整復等療養費適正化講習会やレセプト相談・法律相談等の諸事業を実施。医療費適正化対策の推進を図り、会員組合の財政健全化を支援。また、支払基金との事務連絡協議会を通じて、審査等における問題点の是正を要請した。

 (4) 健康開発共同事業推進活動(保健共同事業委員会関係)

 生活習慣病の予防と医療費、メンタルヘルス対策等をテーマに健康教育を実施したほか、健康経営セミナーや普通救命講習会(AED)を開催した。また、保養施設の共同利用の契約、プール施設・アイススケート施設の割引利用券の斡旋、各種イベントの後援等、多方面での活動を行った。保健師活動では、健保組合における特定保健指導を支援するとともに、保健師連絡協議会での保健活動を支援した。

 (5) 総合組合活動(総合組合委員会関係)

 総合組合の運営に資するため、特定健診の受診状況や財政状況分析、健康経営など調査・研究し、有効活用を図った。



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