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年始に思い描いていた今夏の日本は、東京オリンピック・パラリンピック一色で、世界の国々から多くの人々が来日し、明るく元気で活力にあふれる状況であったと思う。
ところが、新型コロナウイルスの感染拡大により景色は180度変わり、経済活動や生活様式にも大きな影響を与えている。わずかな期間で世界中に感染が広がったのを見るにつけ、あらためて、人の移動と交流が拡大したグローバル化の進展を感じずにはいられない。
そのようななか、日本は、多くのビジネス客や観光客を受け入れてきたにもかかわらず、感染者や死亡者数は欧米などに比べると比較的少ないように見受けられる。
相手を気遣うとともに、人との距離感や清潔さを大切にする日本の国民性と文化が、感染を抑える上で大きな役割を果たしているように思われる。また、国民皆保険制度をベースとした質の高い医療によって救われた命は多いと思う。
しかし、皆保険制度を支える健保組合関係者がこの夏、期待していた社会保障制度改革の進展は、新型コロナ対策が優先され、不透明になった。
7月17日に閣議決定された「骨太方針2020」。健保連が訴えてきた高齢者医療の給付と負担の見直しについての具体的な言及はなかった。政府は記載がない項目も、19年の方針にあるものは、引き続き着実に実施する、とはいう。
19年の方針に「骨太方針2020において、給付と負担の在り方を含め社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策を取りまとめる」と明記したことについて、今後、議論はどこまで進むのか。
後期高齢者が医療機関の窓口で支払う自己負担割合を2割に引き上げる問題についても、全世代型社会保障検討会議が今夏、最終報告をまとめるはずだったが、年末に先送りされた。
コロナ禍の影響は、致し方ないとはいえ、高齢化に伴う医療費の増加、高齢者医療制度への拠出金負担の増加等は、避けて通れない構造上の課題である。社会保障改革の議論と実施のさらなる先送りが許されないことは言うまでもない。
健保組合は、今回のコロナ禍により、保険料収入減などで財政運営に多大な悪影響を受ける懸念が増している。国に対しては、当面の緊急的な支援策をお願いしたい。
同時に、これまでも訴えてきたように、より本質的な課題として、現役世代の負担上昇を抑えつつ、医療保険制度の持続可能性を確保するための社会保障改革を、是が非でも実現することを大いに期待し、求めていきたいと思う。 |
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(M・S) |
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