広報誌「かけはし」

■2019年12月 No.579


メンタルヘルス不調者への復職支援

 11月11日、新梅田研修センターで心の健康講座を開催。大阪市立大学大学院医学研究科 神経精神医学 准教授 岩ア 進一氏が「メンタルヘルス不調者への復職支援」をテーマに講演されました。参加数は、35組合・52人。(以下に講演要旨)
岩ア 進一 氏
 メンタルヘルス不調者の復職は、身体疾患で休職した労働者の復職とは異なり、長期にわたったり、復職してもすぐに再休職してしまったりして対応が上手くいかなかったり、困難であったりすることがよくあります。メンタルヘルス不調による休職からの復職の特徴として、長期休業、再発、再燃、時期尚早例、回復の見通しが立ちにくい例などが多く、受け入れ側にとっては支援のあり方がわかりにくいことも頭を悩ませる一因です。厚生労働省は「こころの健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(https://kokoro.mhlw.go.jp/guideline/files/H25_Return.pdf)を公開しています。多くの企業ではこれに則った形で対応していると思いますが、メンタルヘルス対策に消極的な企業も多かったり、これだけでは対応が上手くいかず会社、労働者ともに不利益を被ったりすることも少なくありません。
 厚生労働省は、復職支援として休職開始から復職後までを5つのステップとして対応することを提案しており、それぞれの対応についてお話しさせていただきました。
 第1ステップ:「病気休業開始及び休業中のケア」では、主治医へ職場から休職中の労働者についての情報提供の有用性について。第2ステップ:「主治医による職場復帰可能の判断」では、関係者が様々な希望、思惑で動くために現場は混乱し、労働者には焦りが見られることが多いこと。また、診断書、情報提供の例を示しました。第3ステップ:「職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成」では、復職の可否を判断するために様々な情報を収集することの必要性を説明しました。第4ステップ:「最終的な職場復帰の決定」では、リワークの利用や就業上の配慮について説明いたしました。最後の第5ステップ:「職場復帰後のフォローアップ」では、フォローアッププラン設定についてお話ししました。
 また、厚生労働省の5つのステップにはありませんが、復職支援の準備段階(第0ステップ)についてお話ししました。産業保健スタッフが十分なメンタルヘルスに対する知識を持つこと、職場復帰に関して就業規則に復職支援について明記すべきこと、そして職場のメンタルヘルスに対して理解ある風土の醸成が必要であることなどです。
 最後に、実際の現場では病名に応じて異なった対応が必要になることも多く、従来型の対応であるメランコリー型うつ病、長期的な治療継続を前提とするてんかんや統合失調症、枠組み設定や後押しも必要な適応障害やパーソナリティ障害、主治医、上司との連携が重要な双極性障害、特性に応じた職場配慮が必要となる発達障害など、それぞれ病名ごとに異なった対応を説明いたしました。
 現代のメンタルヘルス不調者の復職支援では、基本となる5つのステップを前提として、その応用を要求される場面が増えてきています。労働者の休職期間を単なる休養だけととらえるのではなく、復帰後の充実した業務を見据えて、休職期間が無駄にならないことを心がけた復職への対応が重要であると思います。

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