 |
 |
9月20日に、ラグビーワールドカップ日本大会が開幕する。4年前のイングランド大会では、日本代表が強豪の南アフリカに対し、試合終了間際の歴史的な逆転勝ちを演じて、その戦いぶりが称えられた。地元での活躍を期待したい。
このラグビーの精神を表す言葉として、「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン」というフレーズがある。個人の力を最大限に発揮しつつチームワークに徹する姿勢を表し、「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」と訳されることが多い。我々健康保険組合も、被保険者一人ひとりがその集合体である「みんな」のために保険料を出し合い、病気などになった個人の経済的損失を分担し合う。そこには加入者による相互扶助精神があり、まさに「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」と言えるのではないだろうか。
と、ここまで書いたが、実は「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン」の正しい意味は、「ひとりはみんなのために、みんなは一つの目的(勝利)のために」だそうである。スポーツの世界においては、皆が納得するような、非常に心に響くフレーズである。
では、我々健保組合における目的とは何か。言うまでもないが、健康保険法にいう「国民の生活の安定と福祉の向上への寄与」に向け、加入者の疾病、負傷、出産等に係る経済的負担を減らし、公平で十分な保険給付を実現することであろう。続いて、生活習慣病の重症化予防策など、加入者の健康の維持・増進があげられる。これらを実現するため、健保組合は、保険料収入による財源をしっかりと管理し、組合内部の民主的意思決定手続きを経て、自らのニーズに応じた給付や保健事業に振り分けるのである。
ところが現状は、健保組合全体の保険料収入の4割以上が、直接的に加入者に還元されることなく、強制的に高齢者医療への拠出金として使われている。新たな付加給付や保健事業を計画しても、財源不足で泣く泣く見送っている組合も多いのではないだろうか。加えて、この拠出金を賄うために、意思に反して高い保険料率を設定せざるを得ない。これは「組合自治」の重大な侵害である。健保組合の主な目的が、「拠出金の徴収と納付」になってしまってはいけない。
こういうことを言っていると、どこからか「目的は世界に誇る日本の国民皆保険の維持であり、健保組合が高い拠出金を負担するのは当然である」という声が聞こえてくる。国民皆保険の維持には全面的に賛成である。ただ、現役世代が矛盾多き財政調整制度などにより、過度な負担を強いられていることが問題だと、我々健保組合は強く主張してきた。その主張もむなしく、まことに残念なことに本年4月、大規模健保2組合が解散し、フィールド上から姿を消したのは記憶に新しい。
さらに、ここにきて、高額な医薬品などの保険適用も相次いでおり、公的医療保険の給付範囲見直しといった、健保組合の財政安定化に向けての抜本的な改革も急務となっている。こうした背景があるにもかかわらず、骨太方針2019において高齢者医療制度を含む「給付と負担の見直し」は2020年度まで先送りされた。
政府は自らの威信をかけたマイナンバーカードの普及(被保険者証の代替化を含む)や、選挙向けの教育無償化には熱心であるが、選挙受けしない社会保障財政健全化や、高齢者医療改革にはなかなか手をつけずにいる。
改革を先送りするうちに、多くの健保組合がフィールドから姿を消してしまう、という悪夢が、現実にならないことを祈るばかりである。 |
|
(K・F) |
 |
 |
|
 |