 |
『平成』から『令和』へ
― 新たな時代を迎えるにあたって ― |
「平成」が終わり、「令和」の時代がスタートした。前回の自粛ムードとは違い、お祝いムードのなかでの改元は、何か明るい時代の到来を感じさせる。
改めて平成の時代を振り返ってみると、平成6年の「高齢社会(高齢化率14%超)」、さらには平成19年の「超高齢社会(高齢化率21%超)」に突入するなど、急速に少子高齢化が進展した。総人口は、平成元年の1億2321万人が、平成29年で1億2671万人に微増する一方で、65歳以上人口は、1431万人から3515万人と、約2.5倍に大幅増となった。高齢者が増えた要因は、平均寿命の延伸があげられる。平成元年で男性75.91歳、女性81.77歳だったのが、平成29年では、男性81.09歳、女性87.26歳まで伸びた。
高齢者人口が増えれば、社会保障費も、当然増大する。国立社会保障・人口問題研究所の「社会保障費用統計」によれば、平成期の社会保障費は右肩上がりで、平成元年に45兆554億円だったのが、平成28年では116兆9027億円に増加した。国民医療費も平成元年に、19兆7300万円だったのが、平成28年には42兆1400億円に大きくふくれ上がった。
このようななか、健保組合にとって平成の時代は、拠出金負担増との戦いだったといっても過言ではない。すでに「老人保健制度」が創設されていたが、平成2年には、健保組合の負担を増やす制度改正が実施された。高齢者医療費の負担を各保険者に割り振る際、どの保険者も同じ老人加入割合と見なして拠出金を調整する「加入者按分」の比率を50%から100%としたことで、老人加入率の低い健保組合の拠出金負担が増加した。
平成9年には、政府や与党で、老人保健制度に代わる新しい制度創設の検討を開始するが、抜本的な改革の筋道が見えないなか、老人保健拠出金負担に対する反発が高まり、平成11年には、約97%の健保組合が、老人保健拠出金の支払いを一時差し止める「延納」を実施し、抗議の意を表明した。そのようなこともあり、老人保健制度の見直し論議が始まり、約10年の長い議論の末、ようやく平成20年に、「後期高齢者医療制度」が創設された。
しかし、この改正を経ても前期高齢者(65〜74歳)納付金、後期高齢者(75歳以上)支援金を通じて健保組合の負担は増加し続けている。平成22年からは、後期高齢者支援金に、報酬水準が高い健保組合が負担増となる「総報酬割」が部分導入(3分の1)された。健保組合は、本来公費で賄うべき負担を被用者保険に付け替える公費の「肩代わり」と強く反対したが聞き入れられず、平成29年には「全面総報酬割」となった。
その間、平成元年に1814あった健保組合が、平成30年では1394組合と大きく減少、平均保険料率も、81.84‰から92.19‰まで上昇した。最近でも、大規模健保組合の解散が相次ぐなど、危機的な状況が続いている。「平成」の時代は、健保組合にとって、決して「平らか」とはいえなかったと思う。
「令和」の時代に入り、いわゆる「団塊の世代」が75歳となり始める令和4年(2022年)から令和7年(2025年)にかけて医療費は急速に増大し、これまでも過重な高齢者医療費負担増に苦しみ、体力を消耗させられてきた我々健保組合は、さらに厳しい状況に追い込まれることになる。
「令和」には、「人々が美しく心を寄せ合うなかで文化が生まれ育つ」という意味があるそうだ。みんなで知恵を寄せあい、この難局を乗り越え、日本の国民皆保険制度を、「令和」、そしてその次の時代にも、しっかり引き継ぎたいものだ。 |
|
(M・M) |
 |
 |
|
 |