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心とからだの相関関係
〜心身症とは〜 |
8月30日、大阪商工会議所で心の健康講座を開催。近畿大学医学部内科学教室 心療内科部門 教授 小山 敦子氏が「心とからだの相関関係〜心身症とは〜」をテーマに講演されました。参加数は、48組合・57人。(以下に講演要旨) |
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小山 敦子 氏 |
心療内科は「心身症=ストレス関連身体疾患」を診る専門の科として、1960年代に米国からその概念が輸入され、1996年に厚労省により標榜が認められた比較的新しい学問です。
心身症の定義は「身体疾患のなかで、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害の認められる病態をいう。ただし、神経症やうつ病などのほかの精神障害に伴う身体症状は除外する」となっています。したがって、心身症は“身体疾患を有すること”が前提となり、心療内科は精神科ではなく、内科の一部に分類されています。具体例としては、ストレスに関連した緊張型頭痛や過敏性腸症候群などがあります。
元来、心と体は別々に存在するものではなく、心身相関:精神的葛藤や行動様式が体の状態に影響を与えて病気を作り、逆に体の状態が心の動きに影響を及ぼすこと、を保っています。例えば、人前で何かを発表するときには精神的緊張で動悸や手掌発汗、口渇をきたすことがあります。
また、心身症の患者さんはアレキシサイミア(失感情症、失感情言語化症):自分の内的な感情への気づきとその言語表現が制約された状態と、アレキシソミア(失体感症):ホメオスターシスの維持に必要な身体感覚(空腹感、満腹感、疲労感など)への気づきが鈍い傾向があるため、過剰適応となりやすく、さまざまなストレスが身体化しやすい特徴があります。
心身症に限らず、すべての疾患には多かれ少なかれ心理社会的・環境的因子が関わってくるため、身体面のみならず、心理・社会・環境面も含めて包括的にその病態を診ていこうとする全人的医療の考えがあります。また、心療内科ではその病態の評価だけではなく、病を持っている人間全体を理解し、患者さん自身の治癒力を引き出し、サポートすることで症状のセルフコントロールを治療のゴールにしています。心身症に対しては、薬物療法に加え、自律訓練法や交流分析、認知行動療法といった心身医学療法も併用して治療していきます。心療内科では、心理士やさまざまな職種の人たちと協働しながらチーム医療を実践しています。
現代社会はストレスに満ち溢れています。世の中には多くのストレス関連疾患がみられますが、心身症を正しく理解し、各人がストレス・マネージメントの方法を身につけることによって、すべての人の健康増進につながる可能性があります。 |
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