広報誌「かけはし」

■2018年9月 No.564
時評

2018年度後半を 迎えるにあたって

 今年度も、約半分が過ぎようとしている。4月から、第2期データヘルス計画、第3期特定健診・特定保健指導がスタートするなか、この時期に、前半(上期)に実施した事業に対する評価、反省を踏まえ、年度後半(下期)に向けた対策検討、さらに次年度に向けた計画検討に着手し始めている健保組合もあろうかと思う。データヘルス計画でも実践しているように、PDCAサイクルを確実に回していくためには、早めに実施事業のレビュー(検証)を行い、しっかり議論を重ね、次年度の予算編成に盛り込む準備をすることが大事と考える。
 さて、社会保障制度をめぐる今年度前半の動きとして、6月15日に政府が閣議決定、発表した「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太方針2018)と「未来投資戦略2018」が挙げられる。まず、骨太方針2018では、「少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現」を副題に掲げ、団塊世代が75歳に入り始める2022年度の前の2019年度から2021年度を、社会保障改革を軸とした「基盤強化期間」とし、すべての団塊世代が75歳以上になる「2025年度でプライマリーバランス黒字化を目指す」としている。
 また、2020年の骨太方針で給付と負担のあり方を含めた社会保障の重点政策を取りまとめ、早期に改革の具体化を進めるとするなど、改革に向けた方向性が示されたことは評価できる。一方、社会保障費抑制の「目安」が明記されなかったことや、後期高齢者の窓口負担引き上げの検討が先送りされたことなど、歳出抑制に関しては、やはり踏み込み不足の感が残る。
 「未来投資戦略2018」は、副題を「『Society5.0』『データ駆動型社会』への変革」とし、データを徹底活用した新たな社会の仕組みの導入を図るとしている。「Society5.0」とは、「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」に続く「第5の社会」のことで、IOT、ロボット、AI、ビッグデータ等の新技術を、産業や社会生活に取り入れて、課題を解決する新たな社会をいう。
 「未来投資戦略2018」の「次世代ヘルスケア・システムの構築」のなかでは、個人に最適な健康・医療・介護サービスや医療・介護現場の生産性向上に向けたデータや技術革新を積極導入するとしており、そのKPI(成果目標)として、従来からある「2020年までに国民の健康寿命を1歳以上延伸、2025年までに2歳以上延伸」に、新たに「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」という指標が追加された。
 また、健保組合に関係する具体的な施策のひとつとして、コラボヘルスを推進するため、加入者の健康状況や医療費、予防・健康づくりへの取り組み状況を分析し、経営者に通知(見える化)する「健康スコアリング」の実施がある。この施策を活用し、会社と健康経営を含むコラボヘルスの取り組みを推進、強化することで、加入者の健康保持・増進と健康寿命の延伸を図っていきたい。
 健保組合の2018年度予算は、経常収支で1381億円の赤字で、この主因は、高齢者医療制度への過度な拠出金負担である。義務的経費の40%以上を高齢者医療に拠出している組合は全体の8割に達している。また、5月に政府から発表された「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」によると、医療・介護の給付費(現状投影ケース)は、2018年度の48.9兆円から、2040年度には約92.9〜94.7兆円に膨らむ。2040年度を待つまでもなく、すでに現役世代の負担は限界に達しており、国民皆保険の持続性を確保するためにも、高齢者医療の負担構造改革を速やかに実施すべきである。
 2019年10月の消費税率引き上げを含む同年度政府予算編成に向けて、今年は特に重要な年になることから、例年より1カ月前倒しの10月23日に、「健康保険組合全国大会」が開催される。その意味をしっかり理解し、全国の健保組合が一丸となって、健保組合の存在意義、優位性を世の中にさらに強くアピールするとともに、高齢者医療費の負担構造改革の速やかな実施等を強く主張していく必要があると考える。
  (M・M)