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Sense of coherence
〜首尾一貫感覚とストレス対処能力〜 |
10月13日、大阪商工会議所で心の健康講座を開催。流通科学大学 人間社会学部 人間社会学科 准教授 銅直 優子氏が「Sense of coherence〜首尾一貫感覚とストレス対処能力〜」をテーマに講演されました。参加数は、44組合・59人。(以下に講演要旨) |
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銅直 優子 氏 |
首尾一貫感覚(Sense of coherence : SOC)とは、健康社会学者であるアントノフスキー博士が提唱したストレス対処能力のことです。博士は、トラウマとなる過酷な出来事を体験したにも関わらず、健康的な生活を送ることができている人々にいくつかの共通した特徴を見つけ出し、それをSOCと名づけました。
【SOCの3つの特徴】
@「把握可能感」自分の置かれている状況や、今後起こるであろうことに対し、ある程度の納得感や理解可能感がもてる
A「処理可能感」生活のなかで直面する問題や状況に対し、必要な助けを得ながら、それらに対処することが可能だと感じられる
B「有意味感」直面する日々の出来事やストレスフルな状況に対し、自分にとっての意味を見つけることができる
これらの感覚を持っている人は、さまざまな出来事や状況に対して、動揺することが少なく、前向きに取り組むことが可能となります。
実際にSOCの高い人は、精神的な健康状態がよいことがわかっています。このSOCは、30歳頃までに安定するものの、それ以降でも変化可能であると考えられています。SOCを育てるための介入は効果的ではあるけれど、介入をやめて半年ぐらい経つと、再びSOCが低下してくるという報告がなされています。つまり、SOCを育てていくことは可能ですが、それを維持するための環境も必要となります。
成人期以降のSOCの発達に、職業が果たす役割は大きいといわれています。では、SOCを育て、維持するための職業環境とはどのようなものでしょうか。
【SOCを育てる職場環境】
@「把握可能感」(わかるという感覚が育つ)価値観が共有でき、ルールや規範が明確である
例えば、職場の上司からの指示や対応には一貫性があるでしょうか。上司の気分で指示が変わるようなことがあれば、そのなかにルールは存在しません。受けている指導や対応には、明確な理由やルールがあり、「わかる」という感覚が得られる環境でしょうか。
A「処理可能感」(やれるという感覚が育つ)従事している仕事が、その人の能力にとって適切な質と量であり、仕事に必要な資源が十分にある
例えば、抱えている業務内容は自分にとって適切な質と量でしょうか。負担が大きすぎても少なすぎてもよくありません。また、同僚、上司、部下との関係が良好で、相談でき、助けてもらえるなどのサポートは得られるでしょうか。負担が大きすぎてサポートも得られないとなれば、目の前の業務が「やれる」と感じられないでしょう。
B「有意味感」(頑張るという感覚が育つ)意思決定に参加できる
例えば、自分の関わっている仕事に関して発言権があり、その意見が聞き届けられるような環境でしょうか。一生懸命働いても、どんなに意見を述べてもまったく聞き入れてもらえなければ、その環境のなかで自分の存在意味が感じられなくなり、「頑張る」気持ちは低下します。
前記のような環境を、まずはチームや部署レベルで整えていくことを心がけていただくと、風通しのよい職場環境となり、健康的な人材が育成できるでしょう。 |
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