206組合が料率引き上げ 543組合が赤字 |
平成28年度健保組合決算見込みは、全国1399健保組合の決算状況を集計したもの。それによると、経常収支は2373億円の黒字。27年度(黒字額=1279億円)に続き、3年連続の黒字決算となった。前年度決算と比べて、収入額の伸びが支出額の伸びを上回ったことによる。
経常収入は7兆9623億円。このうち大半を占める保険料収入は、1797億円増(2.34%増)の7兆8475億円だった。
健保連では、保険料収入増加の要因を、次のように分析している。被保険者数の増加1637億円(増額の91.1%)、保険料率の引き上げ135億円(同7.5%)、標準報酬月額の増加120億円(同6.7%)、賞与額の減少95億円(同△5.3%)。
最大の増収効果は、被保険者数の増加によるもので、健康保険の適用拡大に伴う流入が影響した。また、保険料率を引き上げた健保組合は206組合あり、引き上げざるをえない一番の要因は、高齢者医療への多額な拠出金。法定給付費と高齢者医療への拠出金を合わせた義務的経費に占める拠出金割合は46.1%に達している。
保険料率引き上げの結果、全国の健保組合の平均保険料率(調整保険料率含む)は、前年度より0.075ポイント増加して9.110%となった。
平均保険料率は、平成20年の高齢者医療制度創設以降、毎年上昇し、協会けんぽの保険料率(10.0%)にさらに近づいた。個別にみると、すでに協会けんぽの料率以上の組合が304組合(21.7%)あり、なかには12.0%以上の組合が4組合ある。
健保組合全体の経常収支は黒字だったが、個別組合の状況をみると、1399組合中、543組合(38.81%)は赤字となっている。とくに、総合組合は258組合中、112組合(43.41%)が赤字で、いっそう厳しい財政状況を示している。
おもな適用状況は、被保険者数が対前年度比35万人増(2.19%増)の約1618万人で過去最多となり、被扶養者数は14万人減(1.05%減)の約1319万人で過去最少。被保険者数と被扶養者数を合わせた総加入者数は約2936万人で21万人増(0.71%増)となった。平均標準報酬月額が725円増(0.2%増)の37万0897円、賞与額が6902円減(0.61%減)の111万8169円だった。 |
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表1.過去5年間の推移 |
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1年間の拠出金 依然として3兆円超す |
おもな経常支出科目をみると、法定給付費が対前年度比496億円増(1.31%増)の3兆8393億円となっている。これは、高額な医薬品の保険適用が相次いだ27年度の医療費(主に薬剤費)の高い伸びに対する反動減と、診療報酬のマイナス改定の影響があるとみられる。
拠出金総額は77億円増(0.24%増)の3兆2819億円。内訳は、後期高齢者支援金が1兆6796億円(1.82%増)、前期高齢者納付金が1兆4991億円(2.57%増)、退職者給付拠出金が1032億円(36.73%減)。
後期高齢者支援金は、総報酬割部分が2分の1から3分の2に拡大された影響で、また、前期高齢者納付金は、団塊の世代の高齢化等で増加した。一方、退職者給付拠出金は、26年度末までで退職被保険者の新規適用が終了しており減少となった。いずれも26年度分の支援金・納付金の精算による戻りが1395億円あったこともあり、拠出金全体では27年度と比較して総額は微増となった。
しかし、1年間の拠出金総額はゆうに3兆円を超え、“高値安定”状態が続いている。保険料収入に対する拠出金の割合は41.82%でいぜん高い。
保健事業費は、「データヘルス」が開始されているにもかかわらず、対前年度比92億円増(2.89%増)の3276億円にとどまった。
これらにより、経常支出は前年度に比べて674億円増(0.88%増)の7兆7250億円となった。経常収入から経常支出を差し引いた2373億円が28年度の黒字額となっている。 |
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収入の90.8%が義務的経費 |
一方、財政指標をみると、義務的経費の保険料収入に対する割合は90.8%となっている。なかには、保険料収入では義務的経費すら賄えない100%超の組合が217組合(全組合の15.5%)あった。
健保組合がその年、事業運営をするために、実質的にどの程度の保険料率の賦課が必要かをみたのが実質保険料率。28年度の全組合の単純平均は8.807%となっている。高齢者医療制度創設前の19年度は7.168%となっており、これとの比較では1.639ポイント上昇している。 |
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