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医療・介護保険制度関連法と健保連の対応 |
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平成28年度は、27年5月に成立した医療保険制度改革関連法に基づく後期高齢者支援金が3分の2総報酬割へと拡大し拠出金が増加、また10月の短時間労働者への適用拡大もあり、健保組合は引き続き厳しい財政を強いられている。医療費については、診療報酬改定が全体で0.84%引き下げられるなどの効果もあり大きな伸びとはなっていないが、総額40兆円を超える国民医療費は毎年1兆円規模で増え続け団塊の世代がすべて後期高齢者になる37年には50兆円以上と予測されている。
28年7月の社会保障審議会における医療保険部会や介護保険部会では、経済財政諮問会議がまとめた経済、財政再生計画と改革工程表に基づき医療保険、介護保険の見直しについて議論が開始され、医療保険部会では29年度の予算関連法案のなかで、高額療養費の見直しとして70歳以上の高齢世代についての負担限度額の見直し等が決定した。また、介護保険部会では、@地域包括ケアシステムの深化・推進、A介護保険制度の持続可能性の確保に関する事項等が議論された。最終的には、29年度予算関連法案として、被用者保険の保険者(現役世代)が負担する介護納付金を29年度から段階的に総報酬割に移行することとし、32年度には全面総報酬割とすること、その他介護保険利用者の現役並み所得者の自己負担割合を3割に増やすこと等の介護保険法等改正案が、29年5月通常国会において成立した。
健保連は、介護保険制度の持続性を高める観点から、介護給付費の重点化・適正化を求めるとともに介護納付金の総報酬割導入に断固反対してきたが、法案は政府案どおりに成立した。介護保険制度が施行された平成12年には3兆円程度であった費用も、高齢化に伴い、いまでは10兆円を超える規模となり、健保組合では全面総報酬割になればさらに1100億円の負担増になり、極めて厳しい財政運営が避けられないのが現状である。
高齢者医療費の増加抑制や、抜本的な負担構造改革等を実現すべく、健保連では、政府、および国会議員への要請活動を積極的に展開するとともに、昨年同様大阪をはじめ全国各地では、広く国民に訴えるイベントを開催した。
今後、政府の30年度予算編成そして30年の診療報酬、介護報酬の同時改定、第7次医療計画などが控えており、健保組合としても、第2期データヘルス計画、第3期特定健診・特定保健指導の取り組みが必要である。健保連大阪連合会では健保組合全国大会で決議した「改革の早期実現! 次世代への安心・納得の確保」をめざして、健保連本部と各健保組合とともに各関係団体と連携しつつ、高齢者医療制度はじめ医療保険制度の抜本改革を粘り強く訴えていくこととしている。 |
A |
政府が「骨太の方針2016」など4計画を決定 |
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政府は6月、「経済財政運営と改革の基本方針2016(骨太の方針2016)」を決定した。そのなかで消費税率の引き上げを平成31年10月に2年半再延期することとした。また、骨太の方針2015で決定した政府予算の社会保障費支出の伸びを3年間で1.5兆円に抑えることを継続するとともに、32年度の基礎的財政収支黒字化という財政健全化目標を改めて示した。その他産業政策の柱となる「日本再興戦略」、社会経済構造の変化に対応するための具体策「規制改革実施計画」、経済の好循環をもたらすための社会政策を定めた「ニッポン一億総活躍プラン」を決定した。いずれも、医療や介護分野でICTやビッグデータの活用を進める内容が含まれている。
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B |
規制改革実施計画 |
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政府が6月に決定した「規制改革実施計画」には、健康・医療分野で「国民の利便性向上」「医療や福祉産業の発展による経済の活性化」「保険財政の健全化」を基本に、診療報酬の審査の効率化と統一性の確保に向け、社会保険診療報酬支払基金の組織、体制を抜本的に見直すこと等が示されている。 |
C |
健康経営優良法人認定制度創設 |
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28年11月、政府の日本再興戦略に基づき「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受ける環境を整備するため健康経営優良法人認定制度が創設された。健康経営優良法人は、「大規模法人部門(ホワイト500)」と「中小規模法人部門」に分け、日本健康会議が企業・団体を認定する。認定にあたっては、保険者と連携した健康経営の実践が重視されており、29年2月には大規模235法人と中小規模95法人の合計330法人が初めて「健康経営優良法人」として認定された。企業における健康づくりへの重要性が高まり、医療保険者と企業の健康づくりへのコラボが推進され、健康に対する意識の向上が期待される。 |
D |
平成28年度診療報酬改定 |
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政府は28年度診療報酬改定における改定率を、診療報酬全体で0.84%引き下げることとした。マイナス改定は8年ぶりで、内訳は診療報酬全体引き上げ分は0.49%、薬価等の引き下げ分が△1.33%で、差引全体で改定率は0.84%の引き下げとなった。今回の改定には、2025年に向けて、地域包括ケアシステムの推進と医療機能の機能分化、強化、連携に関する充実に取り組むことが盛り込まれている。 |
E |
厚生労働省の医療計画検討会が初会合 |
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厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」が28年5月開催された。30年度からの第7次医療計画の作成指針に関して二次医療圏の設定や基準病床数制度の在り方などを検討する。医療計画は、医療法に基づき、都道府県が医療提供体制の確保を図るために策定するもので、医療費の動向を大きく左右するため、健保連では医療提供体制の諸問題に関する考え方を整理し、その動向を注視している。都道府県が策定する地域医療構想は、医療機能ごとに2025年の医療需要の病床の必要量を推計し定めるもので、医療保険者も保険者協議会を通じて参画し、持続可能な医療提供体制の構築に向けた積極的な提言を行っていくこととしている。 |