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拠出金負担に上限制導入を! 
― 青天井状態に歯止めが必要 ― |
前期高齢者納付金制度の見直しは、小欄でもこれまで繰り返し提言されてきた。しかしながら、これまで公費の投入はもちろん、納付金算定式の変更など制度の見直しは行われていない。
同制度の問題点はいくつもあるが、健保財政運営上、最も問題となるのは、前期高齢者1人あたり医療給付費の変動により、納付額が大きく変動することである。
とくに中小規模で前期高齢者加入率が低い健保組合では、わずか1名でも前期高齢者の急な病気により急激な負担増が発生し、突如解散を検討せざるを得ない状況になる。
また、これはどの健保組合にも当てはまることであるが、計算上、条件が重なると、経常収入の2割にも相当する納付金額の変動がありうる。そのため、中長期の計画が立てられない。事業会社の常識であれば考えられないことである。
今年4月14日に健保連から発表された平成29年度健保組合予算早期集計によると、保険料収入に対する拠出金の割合は44.5%。50%以上の組合は331組合(全体構成比24%)となっている。さらには60%以上の組合は78組合もあり、そのうち12組合は70%以上というから驚く。
また、前期高齢者納付金と退職者拠出金の合計額の保険料収入に対する割合が40%以上の組合が42組合とある。後期高齢者支援金と老人保健拠出金の合計額の同割合が40%以上の組合が6組合なのをみると、健保組合の財政を苦しめている拠出金のなかでも、前期高齢者納付金が相当なインパクトを与えていることがわかる。
「保険料収入に対する拠出金の割合が50%以上の組合は331組合」と簡単に書いたが、大切な保険料収入の半分以上を国保や広域連合に拠出するなどということを、健保の組合会で誰も納得している訳ではない。制度の趣旨は理解するが、拠出金がほぼ青天井のような形になっているため、負担額が健保組合の身の丈にまったく合っていない。
制度見直しの方法としては、現在の複雑な拠出金の計算式を修正するというやり方もあるだろうが、わかりやすく「拠出金の上限制」はどうか。
同様の意見はこれまでも、さまざまな健保関係者が機関誌等で提言してきた。たとえば「拠出金合計は保険料収入の5割を上限」とするだけで、心臓に悪いような拠出金額にはならない。
国は高齢者医療支援金等負担助成事業の助成金で、拠出金負担が重い組合を助けようとしている意図は理解する。しかし、その助成金の仕組みはあくまで単年度の拠出金額が急増したものに対して補助を出すという算出方式になっていて、複数年にわたる重い拠出金負担に対する有効な補助制度とは言い難いのが現状である。
本年8月から介護納付金の総報酬割が段階的に導入されるが、これには負担軽減策として3年間の時限措置ながら上限が設定された。上限を超える部分は全被用者保険者間で再按分(負担調整)されるというのは問題だが、一定の保険者には一部国庫補助も予定しているようだ。
介護納付金の総報酬割により負担増となる組合数が非常に多いのは確かだ。しかし、拠出金の方は青天井状態である。何度も書くが「保険料収入に対する拠出金の割合が50%以上の組合は331組合、60%以上の組合は78組合、70%以上の組合は12組合 ある」。拠出金に関しても上限制を実施してはどうか。 |
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(M・I) |
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