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財政制度等審議会は5月25日、「『経済・財政再生計画』の着実な実施に向けた建議」と題する意見書を、麻生財務大臣に提出した。医療・介護については、平成30年度が診療報酬・介護報酬同時改定となるため、両分野の横断的課題に一体的対応を図る絶好の機会と提言した。このほか薬価制度改革なども指摘した。 |
財政制度等審議会は麻生財務大臣の諮問機関。会長は榊原経団連会長。労使団体、経営者、各界有識者、学識者などで構成されている。今回の建議では、財政健全化の目標達成に向けて、政府にさらなる努力を求めた。
政府は、2020年度(平成32年度)のプライマリーバランス(PB)黒字化達成に向けて、歳出削減や効率化を推進するとしている。方針は現在も変わっていない。
社会保障関係費については、先に「経済・財政再生計画」で「平成28〜30年度の高齢化による伸びを、1兆5000億円程度に抑えるのを目安」とし、政府は28、29両年度には達成した。建議ではこれを評価。今後も財政の持続可能性の改善に着実に取り組んでいくよう求めた。
とくに、団塊の世代が後期高齢者となり始める2020年代初めにかけて、医療・介護を中心に社会保障関係費の増加が見込まれる、と現状認識。
こうしたなか、保険料負担や公費負担など国民負担を抑制するとともに、世代間の公平性を確保していく観点から、政府が「改革工程表」に掲げている検討項目すべて着実に実行し、社会保障の効率化・適正化に取り組んでいかなければならない、と指摘した。
財政審は、昨年秋の建議で、医療・介護制度改革の方向性について、「年齢ではなく負担能力に応じた公平な負担」など、4つの視点を示している。今回は、具体的に@診療報酬・介護報酬の同時改定、A薬価制度の抜本改革、B医療分野での都道府県のガバナンス強化――などの施策に重点を置いて取り組む必要があるとした。
診療報酬・介護報酬の同時改定については、介護療養病床等の効率的な提供体制への転換も含む医療機能の分化・連携の推進、在宅医療と介護の連携強化等の分野横断的課題へ一体的な対応を図れる絶好の機会と位置づけた。
また、両方の改定率に関しては、@デフレにより賃金・物価が下落するなか、診療報酬本体は伸び続けたため、両者のギャップはいまだ大きい、A毎年度医療費・介護費は増加、これを支える税や保険料、自己負担といった国民負担が増加し続けている――と指摘。これらを勘案し、国民負担抑制の観点から、しっかりと取り組んでいく必要があると提言した。
薬価については、昨年暮れに政府が関係4閣僚でまとめた「薬価制度抜本改革の基本方針」に沿い、速やかに薬価を引き下げる仕組みをつくるなど、国民負担の軽減につながる改革の実行を求めた。
都道府県のガバナンス強化については、30年度からの国保の都道府県化に合わせて、地域で医療構想や医療費適正化計画を推進していくのにあたり、都道府県に実効的な手段や権限をもたせ、結果に応じて強力なインセンティブを設けるとした。
財政審の今回の建議は、「骨太2017」策定や、それを踏まえた30年度政府予算概算要求を視野に入れている。 |
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