広報誌「かけはし」
 

■2017年5月 No.548



 健保連は4月14日、平成29年度予算(早期集計)概要をまとめた。全国に1398ある健保組合のうち、予算データの報告があった1375組合の数値をもとに推計した。経常収支は3060億円の赤字。赤字を計上した組合は7割を超えた。高齢者医療への拠出金合計は、対前年度比2382億円(7.23%)もの大幅増となり、3兆5000億円の大台を突破して3兆5323億円となった。

経常赤字3060億円 1015組合が赤字
 平成29年度予算(早期集計)概要は、今年4月1日現在、全国にある1398健保組合のうち、29年度予算データの報告があった1375組合の数値をもとに、全組合の数値を推計した。それによると、29年度予算は経常収入8兆0479億円、経常支出8兆3538億円で、差し引き3060億円の赤字となっている。
 前年度予算との比較では、経常収入が2321億円(2.97%)増加、経常支出が4008億円(5.04%)増加、支出の伸びが収入の伸びを上回った結果、赤字額が1688億円増加した。このため、赤字組合が前年度より増加、全組合の72.6%にあたる1015組合が赤字を計上している。
 保険料収入が2311億円(3.00%)増加して7兆9308億円となるなど、収入の増加を見込んだ。
 しかし、法定給付費が1422億円(3.58%)増の4兆1193億円、高齢者医療への拠出金合計が2382億円(7.23%)増の3兆5323億円にのぼるなど、収入を上回る支出が見込まれた。
 おもな適用状況では、被保険者数は約36万9000人増(2.29%増)の1643万3739人。被扶養者数は約12万人減(0.93%減)の1314万9706人。被保険者1人あたり平均標準報酬月額は651円増の36万8588円。同賞与額は1134円減の106万6532円となっている。
支援金、8.82%の大幅増
 高齢者医療への拠出金の内訳は、後期高齢者支援金等が1兆8227億円(対前年度比8.82%増)と大幅な増加になった。前期高齢者納付金は1兆6040億円(同6.84%増)、退職者給付拠出金は1054億円(同10.60%減)。
 これにより、保険料収入に対する拠出金の割合は44.54%となった。なかには、拠出金が保険料収入の70%以上を占める組合が12組合あった。
 後期高齢者支援金の増加には、後期高齢者数の増加に加えて、29年度からの全面総報酬割が影響した。前期高齢者納付金の増加には、団塊の世代の高齢化による医療費の増加に加えて、精算分が追徴となったのが影響した。
 退職者給付拠出金は、27年度から同制度への対象者の新規流入がなく、そのため減少している。
 被保険者1人あたりの拠出金額は、前年度より9894円(4.83%)増加して、年間21万4940円となっている。高齢者医療費を賄うために、これほど多く支出しているわけであり、高齢者医療制度の早期改革が求められている。
平均保険料率9.168%
 調整保険料率を含んだ平均保険料率は、前年度より0.068ポイント上昇して9.168%となった。平均保険料率の上昇は10年連続。保険料率を引き上げたのが214組合。引き下げたのが100組合あった。「保険料率を引き上げてもなお赤字」という基調が続いている。
 この結果、協会けんぽの平均保険料率(10.00%)以上の組合は、316組合となり、前年度の303組合を上回った。なかには11%以上という、極端に高い料率とせざるを得ない組合もあった。
 赤字を出さずに収支均衡とするための実質保険料率は9.691%。しかし、10.00%以上の組合が497組合あった。協会けんぽの29年度予算での収支均衡率9.72%以上の組合は619組合あった。
 拠出金と法定給付費の合計額が、いわゆる義務的経費。保険料収入に対する割合は、回答組合平均で96.48%となっており、収入のほとんどが義務的経費の支払いに充当される。保険料収入だけでは義務的経費さえ賄えない100%超の組合が464組合(回答組合の33.7%)に達した。
 健保連の推計によると、今後、健保組合の拠出金負担は、高齢化がピークを迎える平成37年度までの8年間で、被保険者1人あたり約1.5倍膨らむ。このため健保連は、国をあげて高齢化のピークを見据えた皆保険制度堅持のための展望を描き、政策展開すべきと訴えている。
総報酬割で介護納付金増加
 一方、介護保険分の予算概要をみると、回答があった1375組合ベースの介護納付金総額は、前年度全組合ベース対比800億円増の8162億円。29年8月分からの2分の1総報酬割を見込んだ。2号被保険者1人あたりの年間介護納付金は、前年度比6683円増(7.73%増)の9万3182円となった。2分の1総報酬割導入による健保組合全体の負担増額は、367億円と見込まれている。組合別にみると、1人あたり納付金額が増加したのが1211組合、減少したのが161組合。
 平均介護保険料率は、0.047ポイント上昇し1・465%となった。介護保険料率を引き上げた組合は、410組合にのぼった。この結果、協会けんぽの介護保険料率1.65%以上の組合は305組合となった。また、869組合が準備金を繰り入れて予算編成している。

過去10年間の推移
注)平成20〜26年度は決算、27年度は決算見込み、28年度は予算、29年度は予算推計の数値。