広報誌「かけはし」

■2016年8月 No.539

事 業 報 告 の 概 要

1.健康保険組合をめぐる情勢

 (1)医療保険制度改革等に関する主な動き

@ 医療保険制度改革関連法と健保連の対応
   平成20年に高齢者医療制度が創設されて、はや8年が経過した。この間、拠出金(前期高齢者納付金、後期高齢者支援金)は年々増加し、健保組合は厳しい財政運営を強いられることとなった。積立金の取り崩し、保険料率の引き上げで対応してきたが、もはや限界であり、保険者機能を十分に発揮しきれないほどの危機的な状況に陥っている。
 27年5月、医療保険制度改革関連法が成立した。しかし同法は、後期高齢者支援金の総報酬割の拡大等により国保の財政基盤強化を図ったものであり、医療保険制度全体の持続可能性の確立には十分といえず偏った内容であった。全面総報酬割が実施されれば、高齢者医療への拠出がさらに1500億円も増加し、いっそう健保組合の負担は増大する。同法の成立にあたり、健保連は、これまでにも増して医療費適正化対策の推進、高齢者医療制度の負担構造改革等に取り組み、真の医療保険制度の持続可能性追求と、抜本的改革の断行を求めていくこととした。
 具体的には、▽前期高齢者医療への公費拡充など高齢者医療費の負担構造改革の実現 ▽高齢者医療運営円滑化等補助金などの財政支援の拡充 ▽総報酬割の拡大により負担増となる健保組合への激変緩和措置の実施―などである。
 改革実現活動の一環として、健保連は、11月に健保組合全国大会を開催し、現役世代が納得できる公平な制度の実現に向けて取り組むことを決議した。そして直ちに、高齢者医療費の増加抑制や、抜本的な負担構造改革等を実現すべく、政府、および国会議員への要請活動を積極的に展開した。一方、大阪をはじめ各地では、制度改革を目ざすイベントが開催された。
 今後は、29年度、30年度の制度改革を視野に入れた活動を進めるとともに、国民皆保険制度維持のために、健保組合・健保連の主張について広く理解を求めていかなければならない。
A 被用者保険関係5団体が共同意見書を提出
   平成27年6月、健保連、協会けんぽ、日本経団連、連合、日本商工会議所の被用者保険関係5団体は、政府の「骨太の方針2015」に対して共同意見書をまとめ、塩崎厚労大臣に提出した。意見書では、▽持続可能な制度構築のためにも、医療、介護の費用の適正化・効率化に取り組むことは不可欠。後発医薬品のさらなる使用促進に向けた取り組み促進が必要 ▽後期高齢者支援金の全面総報酬割導入は、国の財政責任の被用者保険への「肩代わり」であり到底容認できない。増大する現役世代の拠出金を抑制するための施策を講ずるよう求める ▽皆保険制度の持続可能性を高める観点から、個々の保険者が、保険者機能を発揮できる医療保険制度体系とすべきである―と強く要請した。
B 政府が「骨太の方針2015」を決定
   政府は6月末、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太の方針2015)を決定した。政府予算の社会保障費支出の伸びを今後3年間で1.5兆円、1年間では5000億円に抑えることとして、制度改革、医療費効率化、疾病予防に取り組むことなどが示された。
C 日本健康会議が発足
   7月、経済団体や医療保険者、医療関係者の代表などによる「日本健康会議」が発足した。疾病予防や健康づくり、重症化予防、健診事業に取り組み、健康寿命の延伸と医療費の伸びの適正化を推進し、国民運動化を図ることとしている。経産省は、取り組みの一環として健康経営に取り組む優れた企業を健康経営銘柄として公表した。企業における健康づくりへの重要性がさらに高まっている。
D 平成28年度診療報酬改定が決定
   12月、政府は28年度診療報酬改定における改定率を、全体で0.84%引き下げることとした。医療費ベースで約3600億円の削減を見込んだ。具体的な改定内容は、28年2月に中医協が答申した。医療機能のさらなる分化・連携の推進策、かかりつけ薬局の明確化、医薬品価格の適正化―などが主な内容として盛り込まれている。
E 「地域医療構想」の進展
   医療介護総合確保推進法(26年6月公布)により、27年度から、都道府県が「地域医療構想」を策定することとされた。地域医療構想は、高齢化のピークの2025年に向け、病床の機能分化・連携を進めるために、医療機能ごとに2025年の医療需要の病床の必要量を推計し定めるもので、医療保険者も保険者協議会を通じて策定に参画する。健保組合には、保有するデータ等をもとにして、持続可能な医療提供体制の構築に向けた積極的な提言が期待されている。

 (2)健保組合・健保連関連の主な動き

@ 第50回健康強調月間の行事を実施
   平成27年10月、健康強調月間の諸行事を実施した。強調月間では、スローガンを「みんなではじめる、すこやか健康習慣」とし、健康寿命の延伸を目標に掲げ、健康意識を高め、健康習慣を改めて見直していく大切さを訴えた。健康強調月間は今回で50回目。健保組合が実施する保健事業のさらなる促進を図るため、「運動」「栄養・食生活」「禁煙」を重視した一次予防の取り組みのなかで、優れた保健事業を展開している組合を表彰し、広く事例紹介することを目的に「すこやか保健事業表彰」の記念イベントが実施された。
A 平成27年度健保組合全国大会を開催
   11月25日、東京国際フォーラムで「現役世代が納得できる公平な制度の実現へ」を副呼称に、健保組合全国大会を開催した。大会では、@高齢者医療費の負担構造改革の実現、A安定した組合運営に向けた財政支援の継続・拡充、B実効ある医療費適正化対策の実施、C保険者機能の発揮に効果的な健保組合方式の維持・発展―の4項目をスローガンに掲げ、健保組合・健保連の主張を内外にアピール。塩崎恭久厚労相宛に大塚陸毅健保連会長から大会の決議と要請書を手渡し、必要な改革を早急に実行するよう求めた。また、来場者を代表して3健保組合から医療保険制度に対する意見発表が行われた。
B 「データヘルス」の推進
   27年度から、「データヘルス」が健保組合で本格実施されることとなった。データヘルスは、加入者の健康保持・増進のために健保組合などが、健診やレセプト等のデータを活用・分析、PDCAサイクルで回すことにより、目標値および健康課題を明確にして効果的、効率的な保健事業を行うものである。実施にあたっては、とくに事業主との協調(コラボヘルス)が重要となる。健保連は、事業所向けリーフレットの提供などを行い、各組合のデータヘルス実施の支援を積極的に図った。

 (3)健保組合の状況

@ 健保組合数
   健保組合数は、平成27年4月1日現在、1403組合となっている。健保組合数はピーク時より424組合減少しており、財政状況の厳しさを如実に表している。なお28年4月1日では1399組合で、27年度の1年間で4組合減少した。
A 27年度健保組合予算概要
   経常収支は、1424億円の赤字となった。保険料率の引き上げ組合が316組合もありながら、なお赤字となっている。また、保険料収入に対する拠出金の割合は、43.68%となっている。この割合が50%以上の組合は305組合となっており、厳しい状況が続いている。
B 26年度健保組合決算概要
   平成20年度の高齢者医療制度の創設後初の黒字となった。経常収支黒字額は636億円だが、高齢者医療への拠出金は、前年度比0.17%増の3兆3000億円にのぼった。また、収入確保のため387組合が保険料率を引き上げた。

2.大阪連合会の事業活動概要

 4月8日、第1回理事会において、新会長に小笹定典氏を選出した。
 大阪連合会では、27年度を通して理事会、各委員会で時宜に応じた活発な議論を展開、事業の実施にあたった。とくに、高齢者医療制度改革における公費拡充については、関係各方面に理解と支援を強く要請。そして、増大する医療費の適正化への取り組みとして『医療費適正化に向けて「あしたの健保組合を考える大会PART2」』を28年3月28日に開催、各健保組合は積極的に参加した。また、円滑な事業運営に資するための各種事業を実施した。

 (1) 27年度健保組合予算(大阪分)集計

 大阪166組合の27年度予算では、経常収支は171億円の赤字で、115組合、67.7%が赤字組合となった。対前年度予算比では保険料収入に対する拠出金の割合は2.16ポイント縮小して42.31%、平均保険料率は0.188ポイント上昇して9.15%、また、実質保険料率は0.110ポイント低下したが9.514%で、いぜん厳しい財政状況である。

 (2) 26年度健保組合決算見込(大阪分)集計

 大阪166組合の26年度決算見込では、経常収支は42億円の黒字であったが、86組合51.8%が赤字組合である。対前年度決算比では、保険料収入に対する拠出金の割合は3.04ポイント縮小して42.45%。平均保険料率は0.239%上昇して8.984%。また、実質保険料率は0.036ポイント低下して9.013%となったが、組合の財政状況はいぜん厳しい状況が続いている。

 (3) 広報活動(広報委員会関係)

 機関誌「かけはし」および「ホームページ」を通じ、高齢者医療制度改革、柔道整復施術等関係情報、健康づくり情報など、健保組合をめぐる情勢および健保連の考え方や各種情報を掲載するとともに、大阪連合会の総会・理事会・委員会・地区会活動など、主要な事業の広報活動に努めた。

 (4) 組合業務支援活動(組合業務委員会関係)

 健保組合役職員の資質向上と連帯感の醸成に有効な、初任者実務講習会、組合担当者実務講習会、パソコン研修会、事務長研修会、個人情報保護研修会、後発医薬品に関する講習会、レセプト管理・データ分析システムに関する研修会を開催した。

 (5) 医療費適正化対策活動(医療給付委員会関係)

 歯科レセプト点検事務研修会、求償事務研修会、柔道整復等療養費適正化講習会やレセプト相談・法律相談等の諸事業を実施。医療費適正化対策の推進を図り、会員組合の財政健全化を支援。また、支払基金との事務連絡協議会を通じて、審査等における問題点の是正を要請した。

 (6) 健康開発共同事業推進活動(保健共同事業委員会関係)

 生活習慣病の予防と対策、効果的ながん対策、メンタルヘルス等をテーマに健康教育を実施したほか、救命講習会(AED)等を開催した。契約保養所・プール施設の利用促進、各種イベントの後援や協賛等、多方面からの推進を図った。
 また、保健師活動では、健保組合における特定保健指導を支援するとともに、保健師連絡協議会での保健活動を支援した。

 (7) 総合組合活動(総合組合委員会関係)

 総合組合の運営に資するため、特定健診の受診状況や財政状況分析など調査・研究し、有効活用を図った。


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