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医療保険制度改革関連法と健保連の対応 |
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平成20年に高齢者医療制度が創設されて、はや8年が経過した。この間、拠出金(前期高齢者納付金、後期高齢者支援金)は年々増加し、健保組合は厳しい財政運営を強いられることとなった。積立金の取り崩し、保険料率の引き上げで対応してきたが、もはや限界であり、保険者機能を十分に発揮しきれないほどの危機的な状況に陥っている。
27年5月、医療保険制度改革関連法が成立した。しかし同法は、後期高齢者支援金の総報酬割の拡大等により国保の財政基盤強化を図ったものであり、医療保険制度全体の持続可能性の確立には十分といえず偏った内容であった。全面総報酬割が実施されれば、高齢者医療への拠出がさらに1500億円も増加し、いっそう健保組合の負担は増大する。同法の成立にあたり、健保連は、これまでにも増して医療費適正化対策の推進、高齢者医療制度の負担構造改革等に取り組み、真の医療保険制度の持続可能性追求と、抜本的改革の断行を求めていくこととした。
具体的には、▽前期高齢者医療への公費拡充など高齢者医療費の負担構造改革の実現 ▽高齢者医療運営円滑化等補助金などの財政支援の拡充 ▽総報酬割の拡大により負担増となる健保組合への激変緩和措置の実施―などである。
改革実現活動の一環として、健保連は、11月に健保組合全国大会を開催し、現役世代が納得できる公平な制度の実現に向けて取り組むことを決議した。そして直ちに、高齢者医療費の増加抑制や、抜本的な負担構造改革等を実現すべく、政府、および国会議員への要請活動を積極的に展開した。一方、大阪をはじめ各地では、制度改革を目ざすイベントが開催された。
今後は、29年度、30年度の制度改革を視野に入れた活動を進めるとともに、国民皆保険制度維持のために、健保組合・健保連の主張について広く理解を求めていかなければならない。 |
A |
被用者保険関係5団体が共同意見書を提出 |
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平成27年6月、健保連、協会けんぽ、日本経団連、連合、日本商工会議所の被用者保険関係5団体は、政府の「骨太の方針2015」に対して共同意見書をまとめ、塩崎厚労大臣に提出した。意見書では、▽持続可能な制度構築のためにも、医療、介護の費用の適正化・効率化に取り組むことは不可欠。後発医薬品のさらなる使用促進に向けた取り組み促進が必要 ▽後期高齢者支援金の全面総報酬割導入は、国の財政責任の被用者保険への「肩代わり」であり到底容認できない。増大する現役世代の拠出金を抑制するための施策を講ずるよう求める ▽皆保険制度の持続可能性を高める観点から、個々の保険者が、保険者機能を発揮できる医療保険制度体系とすべきである―と強く要請した。 |
B |
政府が「骨太の方針2015」を決定 |
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政府は6月末、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太の方針2015)を決定した。政府予算の社会保障費支出の伸びを今後3年間で1.5兆円、1年間では5000億円に抑えることとして、制度改革、医療費効率化、疾病予防に取り組むことなどが示された。 |
C |
日本健康会議が発足 |
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7月、経済団体や医療保険者、医療関係者の代表などによる「日本健康会議」が発足した。疾病予防や健康づくり、重症化予防、健診事業に取り組み、健康寿命の延伸と医療費の伸びの適正化を推進し、国民運動化を図ることとしている。経産省は、取り組みの一環として健康経営に取り組む優れた企業を健康経営銘柄として公表した。企業における健康づくりへの重要性がさらに高まっている。 |
D |
平成28年度診療報酬改定が決定 |
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12月、政府は28年度診療報酬改定における改定率を、全体で0.84%引き下げることとした。医療費ベースで約3600億円の削減を見込んだ。具体的な改定内容は、28年2月に中医協が答申した。医療機能のさらなる分化・連携の推進策、かかりつけ薬局の明確化、医薬品価格の適正化―などが主な内容として盛り込まれている。 |
E |
「地域医療構想」の進展 |
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医療介護総合確保推進法(26年6月公布)により、27年度から、都道府県が「地域医療構想」を策定することとされた。地域医療構想は、高齢化のピークの2025年に向け、病床の機能分化・連携を進めるために、医療機能ごとに2025年の医療需要の病床の必要量を推計し定めるもので、医療保険者も保険者協議会を通じて策定に参画する。健保組合には、保有するデータ等をもとにして、持続可能な医療提供体制の構築に向けた積極的な提言が期待されている。 |