広報誌「かけはし」

■2015年8月 No.527

事 業 報 告 の 概 要

1.健康保険組合をめぐる情勢

 (1)医療保険制度改革等に関する主な動き

@ 医療保険制度改革関連法案
   平成25年8月に社会保障制度改革国民会議がまとめた報告を踏まえて、25年12月に「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」(プログラム法)が成立した。
 同法には、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図るための法案を、27年の通常国会に提出することが明記された。
 そして、本格的な検討が社会保障審議会医療保険部会で26年4月から開始された。医療保険部会では、@医療保険制度の財政基盤の安定化(国保に対する財政支援の拡充、国保に関する都道府県と市町村との役割分担、協会けんぽに対する国庫補助等)、A保険料に係る国民負担に関する公平の確保(国保保険料および後期高齢者医療保険料に係る低所得者の負担軽減、後期高齢者支援金の全面総報酬割、国保組合に対する国庫補助見直し、国保保険料の賦課限度額および被用者保険の標準報酬月額等上限引き上げ)、B療養の範囲の適正化(外来および入院に関する給付の見直し等)―などが検討された。
 平成27年度にはすべての団塊の世代が前期高齢者になり、すべての医療保険者が財政的に大変厳しい状況にある。このようななかで、皆保険制度を次世代につなぐためには、最大の課題である高齢者医療の負担構造を、これからの社会構造に見合ったものとするための議論が不可欠である。現役世代への過度な依存はすでに限界を超えており、これを解消するためには、前期高齢者医療への公費投入が欠かせない。
 健保連は、これらの主張を実現すべく、政府、および国会議員への要請活動を展開し、また、マスコミ関係者、さらには事業主や加入者にも正しく認識していただくための「あしたの健保プロジェクト」を立ち上げ、精力的に広報活動を展開した。
 医療保険部会での意見のとりまとめは、26年11月に行われる予定であったが、衆議院の解散・総選挙などにより部会審議は一時中断。翌27年1月13日、政府の社会保障制度改革推進本部において「医療保険制度改革骨子」が決定された。
 健保連の大塚陸毅会長は1月15日、「骨子」に対し「コメント」を発表、「国保の財政対策に偏向し、被用者保険を含めた持続可能な制度の構築を志向したものとはいい難い」と指摘。健保連が改革の核心と主張した「高齢者医療の負担構造の見直し」「現役世代に過度に依存する現行制度の是正」は希薄な内容にとどまったとした。
 また、29年度の後期高齢者支援金の全面総報酬割により生じる国費を国保財政に投入する案に対しては、「国の財政責任を現役世代に押し付ける肩代わりであり、容認できるものではない」と批判。
 一方、拠出金負担の重い保険者に対する国費投入による負担軽減策は「限定的ではあるが評価できる」とした。
 その後、「骨子」は「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」(医療保険制度改革関連法案)として3月3日閣議決定され、通常国会に提出された。法案は4月28日に衆院を通過、5月27日に参院本会議において可決、成立した。
A 被用者保険関係5団体が要望書提出
   平成26年5月、健保連、協会けんぽ、日本経団連、連合、日本商工会議所の被用者保険関係5団体は、医療保険制度改革に関する共同の要望書をまとめ、田村厚労相(当時)に提出した。
 要望事項は、@前期高齢者医療の財政調整の仕組み見直しと公費投入、A後期高齢者支援金の全面総報酬割に伴う国庫補助の削減分の国保への転用に断固反対、B医療費適正化対策の推進、C地域と職域がそれぞれの連帯を基礎に、保険者機能が発揮できる制度体系の堅持―の4項目となっている。
B 平成26年4月から消費税率改定
   平成24年8月に成立した社会保障と税の一体改革関連法の改正消費税法により、消費税率は26年4月から、5%から8%へと引き上げられた。
 当初、社会保障と税の一体改革では、財政・社会保障の維持可能性を確保するため、消費税収の使途を年金・医療・介護・少子化対策の「社会保障4経費」に限定し、消費税率を5%引き上げることとし、このうち1%(2.7兆円)は子供、子育て支援の充実や医療、介護の充実など社会保障のさらなる充実に、残り4%(10.8兆円)は社会保障財政の安定化に回すこととされていた。
 しかし26年11月、衆院が解散となり、あわせて消費税率10%への引き上げについては、29年4月に延期することとなった。
C 12月総選挙、与党が圧勝
   安倍晋三首相は11月21日、消費税率10%への引き上げ時期延期と、自らの景気浮揚策を国民に問うべく、衆院を解散した。総選挙は12月14日に行われ、その結果、自民、公明両党が全議席の3分の2を上回る326議席を獲得して圧勝した。
 年末総選挙のため、27年度政府予算案の決定は、年明けに持ち越された。
D 平成26年度診療報酬改定
   中医協は、平成26年2月12日、診療報酬改定を答申した。3月5日告示、4月1日施行された。急性期医療の厳格化、主治医機能の強化、在宅医療の推進などを診療報酬の側面から促す内容となっている。
 改定率は、消費税対応分を含めて診療報酬全体でプラス0.1%改定となった。診療報酬本体の改定は消費税分も含めてプラス0.73%、薬価・医療材料はマイナス0.63%となっている。
E 第6次医療法改正
   平成26年6月18日、通常国会で第6次改正医療法が成立した。診療報酬と医療提供体制は、国民医療を支える両輪であり、少子高齢化のピークをひかえ、医療提供体制の再整備を図るものである。
 医療機関の病床報告制度の創設、地域医療構想実現のために医療保険者等関係者との協議の場を設定―などを盛り込んでおり、今後、地域レベルでの良質な医療の提供、適正化の議論の進展が期待される。

 (2)健保組合・健保連関連の主な動き

@ 第191回臨時総会を開催
   健保連は、4月15日、第191回臨時総会を開催し、任期満了に伴う役員改選を行った。臨時総会では、新会長に、大塚陸毅氏を選出した。また、健保組合の主張、要求実現強化のために、要求実現対策本部と特別委員会を設置することとした。
A 健康強調月間の実施(平成26年10月)
   スローガンを「みんなではじめる、すこやか健康習慣」とし、健康寿命の延伸を目標に掲げ、健康意識を高め、健康習慣を改めて見直していく大切さを訴えた。
 月間では、健康づくりに関する各種事業の実施を通じ、健保組合加入者と事業主が健康を考える機会としての取り組みを進めた。
B 平成26年度健保組合全国大会
   平成26年11月26日、東京国際フォーラムで「皆保険を次世代へつなぐ改革実現総決起大会」を副呼称に、健保組合全国大会を開催した。
 大会では、@前期高齢者医療への公費投入の実現、A高齢者医療の負担構造改革と持続可能な制度の構築―の2項目をスローガンに掲げ、健保組合・健保連の主張を内外にアピールし、塩崎恭久厚労相へ大塚会長から決議要請文で要請した。
 当日はあいにくの荒天であったが、健保組合役職員が参加した都内主要駅周辺でのビラ配布や、大会会場周辺での保険料シミュレーション体験とパネル展示など、健保組合・健保連の主張を強力にアピールする広報活動が展開された。
C データヘルス計画
   政府は、「日本再興戦略」を平成25年6月に閣議決定した。そのなかで「国民の健康寿命が延伸する社会」を掲げ、「データヘルス計画」の作成を公表。全健保組合に対して事業実施、評価等の取り組みを義務づけた。
 「データヘルス計画」は、健保組合などの保険者が、健診やレセプト等を活用したデータ分析と、それに基づく加入者の健康保持・増進のため、PDCAサイクルに沿って、目標値および健康課題を明確にして効果的・効率的な保健事業を行うものである。
 27年3月までに「データヘルス計画」を提出し、27年度から実施する。健保連では、健保組合向けに全国で説明会を実施し、モデルケースを発表するなど各組合の「データヘルス計画」作成に向けた支援を積極的に実施した。

 (3)健保組合の状況

@ 健保組合数
   健保組合数は、平成26年4月1日現在、1410組合となっている。健保組合数はピーク時より417組合減少しており、財政状況の厳しさを如実に表している。また、平成27年4月1日では1403組合で、26年度の1年間で7組合減少した。
A 平成26年度健保組合予算概要
   経常収支は、3689億円の赤字を計上し、7年連続で大幅赤字、累積赤字は2兆7000億円にのぼった。保険料率の引き上げ組合が399組合もあってもなお赤字となっており、また、保険料収入に占める支援金・納付金の割合は、45.43%となっている。同割合50%以上の組合が446組合となり厳しい状況が続いている。
B 平成25年度健保組合決算概要
   平成20年度の高齢者医療制度の創設以降、6年連続の赤字となった。経常収支は1162億円の赤字で、平成25年度の高齢者医療の支援金・納付金等は、前年度比4.50%と高い伸びを示し3兆3000億円となった。また、収入確保のため565組合が保険料率を引き上げた。

2.大阪連合会の事業活動概要

 大阪連合会では、理事会や各委員会で時宜に応じた活発な議論を展開した。特に、高齢者医療制度改革における公費拡充については、関係各方面に理解と支援を強く要請、さらに皆保険制度の維持に向けて「あしたの健保組合を考える大会」を開催するなど、全健保組合が一丸となって取り組んだ。また、円滑な事業運営に資するための各種事業を実施した。

 (1) 26年度健保組合予算(大阪分)集計

 大阪168組合の26年度予算では、経常収支は464億円の赤字で、137組合81.5%が赤字組合となっている。対前年度予算比では保険料収入に対する納付金等の割合は2.0%減少して44.47%、平均保険料率は2.72‰上昇して89.62‰、また、実質保険料率は0.86‰上昇して96.23‰となり、厳しい財政状況が続いている。

 (2) 25年度健保組合決算見込(大阪分)集計

 大阪168組合の25年度決算見込では、経常収支は340億円の赤字で、112組合、66.7%が赤字組合であった。対前年度決算比では、保険料収入に対する納付金等の割合は0.5%減少して45.5%、平均保険料率は3.93‰上昇して87.45‰、また、実質保険料率は0.89‰上昇して90.49‰となり、組合の財政状況はさらに悪化した。

 (3) 広報活動(広報委員会関係)

 機関誌「かけはし」および「ホームページ」を通じ、高齢者医療制度改革・柔道整復施術等関係情報・健康づくり情報など、健保組合をめぐる情勢および健保連の考え方や各種情報を掲載するとともに、大阪連合会の総会・理事会・委員会・地区会活動など主要な事業活動の広報に努めた。

 (4) 組合業務支援活動(組合業務委員会関係)

 健保組合役職員の資質向上と連帯感の醸成に有効な、初任者実務講習会、組合担当者実務講習会、パソコン研修会、事務長研修会、個人情報保護研修会、後発医薬品に関する講習会、データヘルス計画に関する研修会を開催した。

 (5) 医療費適正化対策活動(医療給付委員会関係)

 改定診療報酬点数説明会、歯科レセプト点検事務研修会、求償事務研修会、柔道整復等療養費適正化講習会やレセプト相談・法律相談等の諸事業を実施して医療費適正化対策の推進を図り、会員組合の財政健全化に努めた。また、支払基金に対して、事務連絡協議会を通じて審査等における問題点の解決を要請した。

 (6) 健康開発共同事業推進活動(保健共同事業委員会関係)

 保険者に義務づけられた特定健診・特定保健指導に関連して、生活習慣病の予防と対策など、効果的ながん対策、またメンタルヘルス、救命講習会等をテーマに健康教育を実施したほか、契約保養所・プール施設の利用促進・各種イベントの後援や協賛等、多方面からの推進を図った。
 また、保健師活動では、健保組合における特定保健指導を支援するとともに、保健師連絡協議会での保健活動を支援した。

 (7) 総合組合活動(総合組合委員会関係)

 総合組合の運営に資するため、財政状況分析など調査・研究し、有効活用を図った。


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