■2015年8月 No.527
健康寿命と“健幸(けんこう)” 遐齢(かれい)
7月6日、大阪商工会議所で健康セミナーを開催。同志社大学 スポーツ健康科学部 石井好二郎教授が「健康寿命と“健幸(けんこう)” 遐齢(かれい)」をテーマに講演されました。参加数は、41組合・53人。(以下に講演要旨)
石井 好二郎 氏
「健幸(けんこう)」とは造語で、「健やかで幸せであれ」という意味です。「遐齢(かれい)」とは存在する単語で「長寿」と同意です。
健康長寿・介護予防を阻害する3大因子は内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム、以下メタボ)、運動器症候群(ロコモティブシンドローム、以下ロコモ)、そして認知症です。
メタボは心筋梗塞や脳卒中、糖尿病などの非感染症疾患
と関連しています。非感染症疾患とは「うつる病気」ではなく、身体のなかで「作られる病気」のことです。
世界保健機関(WHO)は、非感染症疾患は生活習慣を改善すれば、その多くは予防・改善できることを報告しています。近年、『メタボ』という言葉が浸透したせいか、わが国の肥満者の増加に抑制傾向が認められるようになりました。
一方、ロコモとは聞き慣れない言葉かもしれませんが、『運動器の障害による要介護の状態や要介護リスクの高い状態』のことをいいます。運動器とは身体運動に関わる骨、筋肉、関節、神経などの総称です。
最近の調査では、要支援・要介護になる原因の1位が「運動器の障害」であることが明らかになりました。したがって、ロコモを予防することは介護予防にもつながるのです。
ロコモになる原因には、身体活動量の低下や運動不足などがあります。これに加齢が加わるとロコモは、ますます進行していきます。加齢は避けることができませんが、身体活動量や運動は習慣化することで増加させることが可能です。
メタボとロコモの関係をみると、メタボの人は肥満で体重が重い人が多いので膝や腰を痛めやすく、ロコモになりやすいといわれています。逆にロコモの人は、骨や筋肉の衰えによる歩行障害から運動不足になりメタボになりやすくなります。このようにメタボとロコモが負の連鎖をもたらしてしまうことが少なくありません。
近年の研究結果は、メタボ、ロコモ、そして認知症にも身体活動や運動が効果的であることを示しています。まさに身体活動量の低下や運動不足が老化を加速させているといっても過言ではありません。
2012年、英国の医学雑誌ランセット
に衝撃的な研究が報告されました。その内容は、世界の全死亡数の9.4%は身体活動不足が原因であり、「世界的なパンデミック(流行病)」との認識を示すものでした。
わが国においても非感染症疾患と外因による死亡の危険因子の第3位は運動不足であることが報告されています。しかし、現在のわが国の摂取エネルギー量は戦後の食糧難の時期と変わりません。
したがって、身体活動量の低下による相対的な過栄養が肥満の主たる原因となっています。身体活動量の低下は肥満を生じさせるだけにとどまらず、筋肉量・骨量の減少にも強く影響を及ぼします。健康寿命を永らえて、健やかで幸せな長寿を目指しましょう。
Non-Communicable Diseases,NCDs
Lancet
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