■2015年6月 No.525
働く人たちのストレスとストレスマネジメント
5月12日、薬業年金会館で心の健康講座を開催。大阪人間科学大学大学院 人間科学研究科長 大野太郎教授が「働く人たちのストレスとストレスマネジメント」をテーマに講演されました。参加数は、62組合・77人。(以下に講演要旨)
大野 太郎 氏
私たちの悩みの種ともいえるストレスを予防する(ストレスマネジメントをする)ためには、ストレスがどのようにして発生するかを知ることが大切です。
ストレス発生の最初の段階は「刺激」がやってくることです。地震や犯罪などの天災・人災、いやなことをいわれたという普段ありがちな出来事、毎日の満員の通勤列車など、私たちを刺激する出来事です。
そして、刺激を「いやだな」、「つらいな」、「危ないな」といった自分への脅威として評価することで、刺激は「ストレッサ
」に変化します。脅威と認識する作業を『認知的評価』とよびます。
次に、不安、怒り、恐怖など、気分や感情がわき起こる『情動的興奮』が起こります。この現象は、精神不安定な状態や症状の原因となることがあります。
さらに、『身体的興奮』が発生します。この興奮は「闘争―逃走反応」とよばれる現象で、びっくりしたときに起こる心拍数の増加や筋肉の活動と同じものです。身体的興奮が長く続くと、日常的には肩こり、重篤な症状としては感染症や癌といった疾患を招くことがあります。
これら2つの興奮状態は『ストレス反応』とよばれます(図を参照してください)。以上の刺激からストレス反応までの流れ全般が、ストレスといわれるものです。
そして、ストレス予防で大切な活動が『コーピング
』です。図で示されるように、コーピングにはストレス発生の各時点になんらかの干渉(介入)を行って、ストレスを生みださない、あるいはストレスの影響を弱める作用があります。ストレスマネジメントの成果は、このコーピングによる効果といえます。
通常、ストレスマネジメントは「上手なコーピングを行いストレスを予防しましょう」と考えます。しかし、実はストレス予防は、その場しのぎであることが多いのです。
そのため、現在のストレスマネジメント研究では「ストレスを受け入れながら価値ある人生を送る」という新しい考えが出てきています。
今後は、ストレスと上手に「つきあう」ことが求められそうです。
(※1)
stressor ストレス発生に関係する刺激
(※2)
coping 対処
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