広報誌「かけはし」

■2014年10月 No.517
 健保連(大塚陸毅会長)はこのほど全国1419健保組合の平成25年度決算見込みを発表した。それによると、経常収支は1162億円の赤字で、全組合の65.3%にあたる927組合が赤字となっている。赤字の最大の要因は高齢者医療制度への拠出金の増加で、初めて3兆円を突破した前年度より、さらに1411億円増えて3兆2739億円に達し、健保組合財政への圧迫を一段と強めている。早急な制度改正が望まれる。
料率引き上げも奏功せず
 健保連の平成25年度決算見込みは、全国1419健保組合の状況をまとめたもの。それによると、経常収支は1162億円の赤字。経常赤字は高齢者医療制度が創設された平成20年度から6年連続となった。内訳は赤字が927組合(65.3%)、黒字が492組合(34.7%)となっている。
 経常赤字額は前年度を1811億円下回った。これは、収入面で平均標準報酬額・賞与のアップや保険料率引き上げにより、保険料収入が増加したこと、支出面で法定給付費の伸び率が低かったことがおもな要因だ。
 保険料収入は、前年度より3448億円(5.0%)増えて7兆2227億円となった。しかし、増加分のうち2851億円は保険料率引き上げの効果額。したがって、引き上げがなければ経常収支赤字額は4013億円に達することになる。
 保険料率を引き上げたのは全組合の39.8%の565組合。このうち261組合(46.2%)が2年連続で料率を引き上げている。また、料率引き上げの状態は、3年連続して全組合の約4割という異例の事態になっている。
 この結果、調整保険料率を含んだ平均保険料率は前年度より0.331ポイント上昇して8.674%となった。協会けんぽの平均保険料率(10.0%)以上の組合は、前年度より120組合増えて198組合(14.0%)となった。

標準報酬・賞与が増加
 平成26年3月末の健保組合数(1419組合)は、対前年度比12組合減。被保険者数は約4000人増の1565万人、被扶養者数は約14万人減の1368万人。扶養率は0.88人。
 平均標準報酬月額は2150円増(0.6%増)の36万5794円、平均標準賞与額は1万9379円増(1.9%増)の106万2275円となっている。この結果、平均標準報酬月額ならびに平均標準賞与額の増加が保険料収入の増加に寄与したことがわかった。

法定給付費の伸び率鈍化 拠出金は過去最高に
 おもな支出では、法定給付費が3兆6085億円で対前年度比240億円増(0.7%増)となっている。これは総額、1人あたり額ともに20年度以降最低の伸び率となっている。
 一方、拠出金総額は3兆2739億円で対前年度比1411億円増(4.5%増)。内訳は、後期高齢者支援金が1兆5767億円(4.6%増)、前期高齢者納付金と退職者給付拠出金の計が1兆6971億円(4.5%増)。高齢者医療制度への拠出金は膨らみ続け、過去最高額となった。


収入の45.3%が拠出金
 保険料収入に対する拠出金の割合は45・3%となった。前年度(45.6%)と同様に高レベルを示した。保険料収入の50%以上を拠出金に充てざるをえないのが462組合(全組合の32.6%)あった。過重な拠出金負担により、健保組合は苦しい財政運営を強いられている。
 また、保険料収入に対する義務的経費(拠出金と法定給付費の合計)の割合は95.3%で、収入のほとんどが義務的経費に充当されている。この割合が100%を超え、保険料収入では義務的経費さえ賄いきれないのが540組合(38.1%)にのぼっている。
 年度内の事業運営を行うために、実質的にどの程度の保険料賦課が必要かをみた実質保険料率は9.012%に達した。なかには実質保険料率が協会けんぽの収支均衡保険料率(9.750%)以上の組合が、399組合(28.1%)あった。
 これらの組合での保険料収入に対する拠出金の割合は、平均50.1%と5割を超えている。苦しい財政の健保組合により拠出金の重圧がかかっていることを示している。


より厳しい総合組合財政
 厳しい財政状況は、総合組合で、より深刻だ。全国に261組合ある総合組合についてみると、赤字組合数は200組合、赤字組合の割合は76.6%で全組合平均(65.3%)を上回っている。1人あたり経常収支赤字額は8859円で、全組合平均(7423円)より多い。
 平均保険料率は9.460%。保険料収入に対する拠出金の割合は46.6%で、このうち50%以上の組合が73組合(全体の28.0%)を占めた。実質保険料率は9.827%となり、協会けんぽの収支均衡保険料率を上回った。

費用負担構造の見直しを
 平成27年度には団塊の世代全員が前期高齢者へ移行する。したがって高齢者医療費はさらに増え、なんら対策もなければ、高齢者医療制度への現役世代の拠出金負担がいっそう重くなることは確実だ。
 来年度に予定される制度改正では、高齢者医療の費用負担構造の見直しが最優先課題だ。合わせて実効性ある医療費適正化のための施策の組み込みが望まれる。