広報誌「かけはし」
 
■2014年8月 No.515

 時局講演 とかしきなおみ衆議院議員
活力ある健康保険組合への脱皮(要旨)

 

 

とかしきなおみ議員

日本の社会保障制度はすばらしい
 最近、自民党内の会合で医療・健康戦略についての議論をよくする。そのとき出てくる厚労省の資料内容が暗い。例えば「高齢者を若者何人で支える」「社会保障関係費用の負担が1兆円ずつ大きくなっている」などである。
 「日本は高齢社会を実現させて悪い社会にしてしまった」、あるいは「健康長寿の国にならないほうがよかった」というような印象を抱かせる情報発信ばかりが目立つ。
 しかし、私は、このようなやり方をやめて高齢社会を世界にもっと自慢していいと思う。私たち人類は健康長寿をいつも目指していた。それを実現させたのが日本だ。この点を世界の人たちがどう評価しているか知りたいので聞いてみた。
 WHOの理事は「日本の医療制度、社会保障制度は実にすばらしい。世界の人は日本のようになりたいと思っている。日本が財政的に厳しい状況にあるのは承知している。しかし日本ならばそれを乗り越えられると期待している」と言っていた。
 確かに日本の場合、過去と比較すれば、高齢者増加のためにサービスはどうしてもよくはならない。しかし、世界比較でみれば、日本はすばらしい制度をもっているということを心にとめておきたい。

高齢者医療問題が健保組合の重石に
 国民皆保険制度が健康長寿実現の原動力となった。一定額の負担、フリーアクセス、救急医療など、皆保険はありがたい制度である。制度を維持するうえで大きな力を発揮したのが健保組合だろう。
 ところがいま、高齢者医療制度のあり方が最大の問題になっており、これについてどう答えを出していくか非常に重要である。
 現状をみると、協会けんぽに比べて健保組合の方が、義務的支出に占める拠出金の割合が高い。また、健保組合の保険料率は年々高くなっている。さらに保険給付費だけでなく、高齢者医療への拠出金の伸びが激しくなっているのが頭の痛いところだ。拠出金は平成22年度からの4年間で約1.3倍になっており、なおも膨張の兆しがあって健保組合の存続を脅かしている。
 健保組合では、保険料収入の45%以上を高齢者医療に拠出している。全体の約6割の組合がそれを強いられている。保険料率10%以上の組合が急増している。ここ数年、負担が増えているのが特徴である。
 健保組合の財政状況は、制度が変わると大きく変化するのも特徴である。例えば、平成15年の総報酬制の導入によって財政状況は改善した。また、平成20年の高齢者医療制度の創設によって財政は厳しくなった。
 来年、医療保険制度改革法案が通常国会に提出される予定になっている。今年が議論の重要な年。健保連として、制度改革に有効な提言ができるかが重要になると思う。累計赤字額が2兆7300億円にものぼっており、しっかりとした取り組みをしていかなければならない。
 健保組合数が減ってきているのも問題である。私も以前、会社員であり健保組合員だった。在籍していた会社でも「負担がしんどい」という話がよくあった。保険料負担が大きいため組合解散を強いられてしまうのがいまの状況。制度上、無理がきているのではないか。
 後期高齢者支援金、前期高齢者納付金ともに多くなってきており、法定給付費総額にどんどん迫っている。現在、後期高齢者医療には公費が入っている。前期には残念ながら入っていない。ここをどうしていくか。健保連から、前期高齢者医療への公費投入と、後期高齢者支援金への全面総報酬割導入の考え方についての要望を受けている。
 団塊の世代への対応をどうしていくかが今後大きな課題になってくる。現在前期高齢者のこれらの方が、今後後期制度に入るようになる。若い世代が過度な負担とならないよう、制度をどう構築していくか。年を重ねていくことが、恐れと思われないように、将来に希望をもっていける制度にするにはどうすればいいか、たいへん重要である。

健康長寿と健保組合の役割
 健保組合はこれまで、組合のなかで組合員の健康づくりに尽力し成果をあげてきた。しかし、いまはそれに留まっているのではないか。何で成果をあげてきたのか、そこを数値化することがポイントだろう。
 健康長寿を実現させたのはわが国が1番。2番ではビジネス・チャンスは生まれない。このビジネス・チャンスを国も推進しようとしている。
 健康・医療戦略推進法は、世界最高水準の医療の提供に資する研究開発などにより、健康長寿社会の形成を目的とするものである。各省庁横断的な「推進本部」を設置して法整備を図る。また、日本版NIHともいえる「日本医療研究開発機構」を設置して、新規挑戦の研究に関してリーダーシップをもたせることとしている。
 この施策などにより、健康長寿を世界にセールスしていくのが、いまの国の戦略の一つである。実は、この戦略のなかで一番の宝物(=データ)をもっているのが健保組合ではないかと、私は思っている。
 他方、もう一つのキーワードがある。いま健康長寿を地域のなかで根づかせていくことが問われている。「ヘルス&コミュニティ議連」というのが自民党にあり、私もメンバーになっている。アベノミクスの経済効果を中央だけでなく、地域の特徴に合わせて経済活性化に結びつけるのがポイントである。
 関西では医療で「関西イノベーション国際戦略総合特区」をとった。また、国立循環器病センターを基点に、循環器の病を減らす街づくりを世界に発信する試みも始まった。そこでは@予防医療の効果を数値化することに世界で初めて挑戦、A地域医療の役割の変更への挑戦、B地域社会の積極的参画が、健康長寿社会の実現につながると証明―の3つを目的にしている。