広報誌「かけはし」

■2014年8月 No.515

事 業 報 告 の 概 要

1.健康保険組合をめぐる情勢

 (1)社会保障制度改革の主な動き

@ 社会保障制度改革国民会議
   平成24年11月から平成25年8月まで延20回にわたり開催された国民会議は、「確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋」とした報告書を、安倍首相に提出した。社会保障制度改革の全体像として、国民会議の使命、推進法の基本的な考え方・方向性を取り上げ、社会保障4分野の改革として、少子化対策、医療・介護保険制度、医療・介護サービスの提供体制、公的年金制度などについて議論した結果を取りまとめている。
 健保連の平井会長は、報告書に対するコメントを発表。
 「拠出金負担に苦しんでいる健保組合の厳しい財政状況に関する認識がまったく感じられない。改革への大きな期待を裏切るものであり、到底納得できるものではない」として、健保組合・健保連が主張した前期高齢者医療への公費投入・拡充が反映されていないことに「極めて残念」とし、さらに後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入に伴い削減される国庫財源を国保財政に転用する事に「強く反対する」とした。
 また、政府・与党の対応について、真の改革の実現と過重な拠出金負担の軽減に取り組むよう、強く要請した。
 そして、健保連では、平成25年9月12日に「医療保険制度全体の持続性を担保するため、高齢者医療の負担構造の改革(現役世代の拠出金負担の軽減)と医療提供体制を含めた医療の重点化・効率化、医療費適正化の制度構築を改革の柱に据えた考え方」を発表した。
A 社会保障改革プログラム法
   平成25年12月に成立した社会保障改革プログラム法は、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進を目的としており、平成29年度までに、医療・介護等の改革に必要な措置を順次実施する予定である。
 そのうち、医療保険制度改革関連法案は、平成27年の通常国会に提出する予定としており、健保組合・健保連では、組織体制を強化し集中的・効果的な活動に、組織一丸となって取り組むこととした。
B 社会保障制度改革推進本部と社会保障制度改革推進会議
   平成26年2月14日に、初会合が開催された社会保障制度改革推進本部は、安倍首相を本部長として田村厚労相など関係閣僚7名で構成、社会保障制度改革推進会議は、有識者20名以下で構成される。

 (2) 健保組合・健保連関連の主な動き

@ 健康強調月間の実施(平成25年10月)
   スローガンは「あなたの健康、見つめる1カ月」とし、生活習慣改善のための行動変容の大切さを訴えた。
 月間では、健康づくりに関する各種事業の実施を通じ、健保組合加入者のみならず全国民の健康意識を高めることをめざし取り組んだ。
A 平成25年度健保組合全国大会
   平成25年11月、東京国際フォーラムで健保組合全国大会を開催し、「改革の実現と健康保険組合の存続なくして皆保険の維持なし!」を副呼称に、@前期高齢者医療への公費投入の早期実現、A高齢者医療の負担構造改革と持続可能な制度の構築、B持続性ある制度に不可欠な医療費適正化の推進、C保険者機能を発揮できる健康保険組合方式の維持・発展、の4項目をスローガンに掲げ健保組合・健保連の主張を内外にアピールした。
 また、田村厚労相への要請として、代理出席した榮畑厚労審議官に平井会長より決議要請文を手渡すとともに、当日は関係省庁・政党・国会議員に対して要請活動を実施した。
B 平成26年度診療報酬改定
   中医協は、平成26年2月12日、診療報酬改定の答申をまとめた。
 平成24年度改定に引き続く社会保障・税一体改革における医療機能の再編の第2弾と位置づけ、急性期医療の厳格化、主治医機能の強化、在宅医療の推進などを診療報酬の側面から促す内容となっている。
 支払側を代表して健保連白川専務理事は「医療機関の機能分化・連携、在宅医療の推進など、社会保障審議会の基本方針に沿った改定がなされた」と評価した。
 また、改定率は、消費税対応分を含めて診療報酬全体でプラス0.1%改定となっているが、薬価等の引き下げ分を診療報酬本体の改定財源に充当しなかったことも評価し、今後も薬価引き下げ分は、今回の改定を踏襲すべきだとした。
C データヘルス計画
   平成25年6月、政府は「日本再興戦略」を閣議決定したが、その中で「国民の健康寿命が延伸する社会」を掲げ、健保組合などの保険者に、健診やレセプト等を活用したデータ分析と、それに基づく加入者の健康保持・増進のための「データヘルス計画」の作成を公表、事業実施、評価等の取り組みを義務づけた。
 健保連では、「レセプト管理・分析システム」の構築や健保組合の「データヘルス計画」の作成に向けた支援を積極的に実施していくこととした。

 (3) 健保組合の状況

@ 健保組合数
   健保組合は、平成25年4月1日現在、1420組合となっている。健保組合数はピーク時より407組合減少しており、財政状況の厳しさを如実に表している。また、平成26年4月1日では1410組合と、25年度の1年間で10組合減少した。
A 平成25年度健保組合予算概要
   経常収支は、4573億円の赤字を計上し、6年連続で3000億円を超える大幅赤字となっている。
 保険料率の引き上げ組合が557組合もあってもなお赤字となっており、また、保険料収入に占める支援金・納付金の割合は、過去最高の46.25%に上昇した。それにより、厳しい状況が続いている。
B 平成24年度健保組合決算概要
   平成20年度の高齢者医療制度の創設以来、5年連続の赤字となった。平成24年度の高齢者医療の支援金・納付金等は、前年度比9.08%と極めて高い伸びを示し、初めて3兆円を超えた。
 また、収入確保のため過去最高の609組合が保険料率を引き上げた。

2.大阪連合会の事業活動概要
 大阪連合会では、理事会や各委員会で時宜に応じた活発な論議を展開した。特に、高齢者医療制度改革における公費拡充については、関係各方面に理解と支援を強く要請するなど、全健保組合が一丸となって取り組んだ。
 また、円滑な事業運営に資するための各種事業を実施した。

 (1) 25年度健保組合予算(大阪分)集計

 大阪174組合の25年度予算では、経常収支は677億円の赤字で、142組合81.6%が赤字組合となっている。
 対前年度予算比では、保険料収入に対する納付金等の割合は0.23%とわずかに減少して46.47%、平均保険料率は3.25‰上昇して86.90‰、また、実質保険料率は0.66‰上昇して95.37‰となり、厳しい財政状況が続いている。

 (2) 24年度健保組合決算見込(大阪分)集計

 大阪174組合の24年度決算見込では、経常収支は515億円の赤字で、131組合75.3%が赤字組合であった。対前年度決算比では、保険料収入に対する納付金等の割合は0.1%上昇して46.0%、平均保険料率は4.31‰上昇して83.52‰、また、実質保険料率は3.46‰上昇して89.60‰となり、組合の財政状況はさらに悪化した。

 (3) 広報活動(広報委員会関係)

 機関紙「かけはし」および「ホームページ」を通じ、高齢者医療制度改革・柔道整復施術等関係情報・健康づくり情報など、健保組合をめぐる情勢および健保連の考え方や各種情報を掲載するとともに、大阪連合会の総会・理事会・委員会・地区会活動など主要な事業活動の広報に努めた。

 (4) 組合業務支援活動(組合業務委員会関係)

 健保組合役職員の資質向上と連帯感の醸成に有効な、初任者実務講習会、組合担当者実務講習会、パソコン研修会、事務長研修会を開催した。

 (5) 医療費適正化対策活動(医療給付委員会関係)

 歯科レセプト点検事務研修会、求償事務研修会、柔道整復等療養費適正化講習会やレセプト相談・法律相談等の諸事業を実施して医療費適正化対策の推進を図り、会員組合の財政健全化に努めた。
 また、支払基金に対して、事務連絡協議会を通じて審査等における問題点の解決を要請した。

 (6) 健康開発共同事業推進活動(保健共同事業委員会関係)

 保険者に義務づけられた特定健診・特定保健指導に関連して、生活習慣病の予防と対策など効果的ながん対策、またメンタルヘルス、救命講習会等をテーマに健康教育を実施したほか、契約保養所・プール施設の利用促進・各種イベントの後援や協賛等、多方面からの推進を図った。
 また、保健師活動では、健保組合における特定保健指導を支援するとともに、保健師連絡協議会での保健活動を支援した。

 (7) 総合組合活動(総合組合委員会関係)

 総合組合の運営に資するため、財政状況分析など調査・研究し、有効活用を図った。


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