■2014年5月 No.512
「データヘルス計画」策定に着手
― 目的は疾病対策・重症化予防の推進 ―
昨年6月、閣議決定された成長戦略「日本再興戦略」に、保険者が推進する「データヘルス計画」が織り込まれた。今年度から、いよいよ全健保組合でデータヘルス計画策定に着手、来年度から計画を実行していくことになる。
これは健保組合に対し、レセプト等のデータ分析、それにもとづく加入者の健康保持増進のための事業計画の作成・公表、事業実施、評価等、PDCAサイクルに沿った保健事業の取り組みを求めるものである。
先ごろ3月末には、厚労省から、健保法にもとづく保健事業の実施等に関する指針の改正通知も示された。
各健保組合はこれまでも、それぞれの方法で自組合の疾病状況の分析をしてきたところである。今後は、今回改修・開発される共通ツールを活用することで、自組合と全体の健康・医療状況の比較ができるし、分析作業自体が従来よりも簡易にできるようになる。
ただし、データ分析はあくまで手段であり、最終的な目的は被保険者・家族の疾病対策・重症化予防である。膨大な量のデータをすべて活用して分析しようとすると、収拾がつかなくなる恐れがある。
まずは分析をする目的を設定すること。そして、その目的に沿って基本分析したあとは、早期に対策の検討に入ることが肝要ではないか。
その対策の事例は、現時点ではまだ少ないが、時期がくれば数多く共有できるようになるはずである。当面は情報が少ないなかで立案、実行することになるが、いきなり難易度の高い計画を立てず、できることから始めるというスタンスで十分であろう。
例えば、特定健診データとレセプトデータを突合すれば、特定健診で異常値を出していながら通院していない人を抽出して受診勧奨を行うことができる。
また、小冊子やホームページなどで疾病予防のための情報提供を行う場合でも、自組合の疾病傾向を分析・把握したうえで実行することで、より効果をあげることが期待できる。
現在の財政難の状況においては、新たにコストをかける余裕がない組合がほとんどであろう。それでも予算をやりくりして、われこそは、という組合は「松計画」に挑戦。また、その他の組合でも「竹計画」、あるいは「梅計画」で始めるという、身の丈に応じた事業範囲からスタートすることで全国の健保組合が参加できる。
平成20年に始まった特定健診・特定保健指導制度は、各健保組合ともに財政が苦しいなかにあっても積極的に推進し、他の保険者と比べて高い実施率をあげてきた。
今回のデータヘルス計画も、健保組合が他の保険者より一歩先行して開始することになる。このことからも、全国規模での疾病対策・重症化予防の推進という点で、健保組合に対する期待は大きい。
この期待に応えることが、健保組合の存在価値をさらに高め、結果として医療費の抑制につながることを忘れてはならない。
(M・I)