広報誌「かけはし」

■2013年7月 No.502
 
 
口腔ケアと生活習慣病予防

− お口の健康と全身疾患の関連性 −

 6月10日、薬業年金会館で健康セミナーを開催。深田拓司歯科医師が「口腔ケアと生活習慣病予防―お口の健康と全身疾患の関連性―」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨)
 
 
深田 拓司 氏

 歯というのは、上下7本で左右合わせて28本あります。このうち最低20本あれば、おいしく食事ができるということで、平成元年から始まった「8020運動」は、80歳まで20本の歯を残そうという運動です。このときの達成率は、わずか7%でしたが、平成19年には25%になりました。さらに一昨年8月、「歯科口腔保健の推進に関する法律」が施行され、10年後には「8020運動」の達成率を50%にすることを目標にしています。
 歯の喪失のおもな原因は虫歯と歯周病で、歯周病で歯が喪失する人の割合は42%にものぼります。成人の歯周病の罹患率は80%におよんでいます。きちっと歯周病の処置をしないと、歯を喪失するリスクが高くなるだけでなく、全身疾患の罹患率も高くなってしまいます。
 歯科医院での歯周病治療は「プロフェッショナルケア」といい、患者さんのお口の状態に合ったブラッシングの指導を行います。汚れを取る着色除去、プラーク(歯垢)、歯石の除去、病状がひどくなると外科処置を行います。
 一方、家庭で行える歯周病のケアは、歯に合った歯ブラシやデンタルフロスを使った歯磨きと、禁煙、食生活などの生活習慣の改善です。
 歯周病菌が血液に入ると、動脈硬化や心臓病、糖尿病などをひき起こしたり、悪化させたりします。とくに糖尿病で10年間、ヘモグロビンA1cが8.0%以上だと、歯を失う確率は糖尿病でない人の2.8倍にもなっています。ケアをして歯周病の悪化を防ぐことは、全身の病気を防ぐことに関連しているのです。
 歯の健診のおもな内容は、歯、歯茎、口のなかの粘膜、噛み合わせの状態、生活習慣などです。かかりつけの歯科医院で定期的に歯の健診を受けて、虫歯や歯周病を治療しておくことは、それらに起因する病気を予防し、医療費の削減に大きくつながっていきます。医療費を減らすことは、国民の健康と、健康寿命の延伸につながります。
 口腔内の治療・ケアをすることで予防できる病気がたくさんあります。たとえば高齢者の誤嚥性肺炎(高齢による咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ)能力の低下のため、誤って気道内に食物が侵入したままとなり肺炎をひき起こす)の予防には、日々の口腔ケアを行うことによってリスク軽減が可能となります。
 みなさんには、ぜひ今回の講演を機会に、口のなかの状態と全身の健康が密接にかかわっていることを理解されて、かかりつけの歯科医院で定期的に健診を受けて、しっかりご自分の口のなかをケアしていただきたいと存じます。

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