■2013年3月 No.498
保険者機能のバージョンアップを
− 持続可能な社会保障制度確立のために −
4月から第2期特定健診・特定保健指導が始まる。第2期医療費適正化計画や健康日本21(第2次)に合わせて見直された「標準的な健診・保健指導プログラム」の改訂版(案)にもあるように、われわれ健康保険組合は特定健診・特定保健指導だけをしていればいいということではない。
第1期での実績や蓄積された健診・レセプトデータの分析からは、非肥満者や40歳未満の者、生活習慣に問題のある者等への保健指導や情報提供の必要性がみえてくる。また、服薬中の者や要治療未受診者の重症化防止、受診勧奨等、積極的で戦略的な保健事業の展開も必要だろう。
高齢化、少子化、人口減少と社会構造が大きく変化しているなか、被扶養者も含めた加入者一人ひとりが健康に関して主体的に考え、参画するという意識変革も必要である。
保健事業を通じて、健康寿命の延伸、ひいては医療費の適正化、加入者の健康の保持増進という保険者として最も重要な機能をいっそう発揮することがいま強く求められている。
これは、社会保障制度改革国民会議の論を待つまでもない。財政制度等審議会の「平成25年度予算編成に向けた考え方」にも医療給付の適正化は強く要望されているところである。持続可能な社会保障制度の確立に向け、健保組合の役割はますます重要になっている。
これら期待される機能を発揮するには、健保組合にとっては職域保険者として事業主との連携が欠かせない。事業主の理解、協力は必須である。アベノミクスで経済情勢の好転も望めるところだ。従業員の健康づくりを経営的視点で捉えた健康経営が、CSR(企業の社会的責任)の面からもすべての事業主で展開されることを期待したい。
一方、多くの健保組合が今年も保険料率を引き上げる。それでも大部分がなお赤字であるという財政窮迫の状況に変わりはなく、データ分析や健康管理のためのIT環境や仕組みの整備等、保険者機能強化・発揮のための財源の捻出は厳しい。
そんななか、平成24年度の政府の補正予算で、健保組合の保険者機能強化に向けたITネットワーク基盤システムの機器更改等に80億円の予算もついた。法定準備金も約2カ月分の保有でよくなった。
一部には準備金不足の健保組合もあるが、取り崩せる約1カ月分を保険料率の引き上げ抑制や高齢者納付金に使ってしまうだけではなく、そのいくらかは保険者機能のバージョンアップに使うべきだろう。加入者の健康管理のために使ってこそ、健保組合本来の役割りを果たせるし、加入者の理解も得られるだろう。
(S・T)