広報誌「かけはし」
 
■2012年5月 No.488
時評

より一層の取り組み強化を

− ジェネリック医薬品の使用促進 −


 国民医療費の抑制は国民的な課題となっている。そのなかでも、薬剤費は、国民医療費36兆円(平成21年度厚労省推計)の16.2%を占めている。国は、それを抑える施策の一環として平成24年度までにジェネリック医薬品(後発医薬品)の数量シェアを30%にすることを目標に、普及を図っている。しかし、23年9月時点(薬価調査に基づく速報値)ではまだ22.8%であり、欧米諸国と比較して普及は進んでいない。
 折しも、本年4月からはジェネリック医薬品のさらなる使用促進のための方策が、診療報酬改定に盛り込まれた。
 一つは、調剤薬局で薬を受け取るときに、使用している薬のジェネリック医薬品の有無、価格、在庫などの情報ももらえるようになった。これにより、新薬(先発薬)からの切り替えについて、医師や薬剤師に相談しやすくなった。
 二つ目は、個々の医薬品ごとに変更可否を処方せんに明示する様式に変更された。これまでは処方せんの「ジェネリック医薬品への変更不可欄」に医師が署名や押印をすると、処方せんに記載されたすべての医薬品がジェネリック医薬品にできなくなっていた。この変更により、複数の薬を処方されている患者は、新たにジェネリック医薬品を利用できる可能性が生まれた。
 三つ目は、ジェネリック医薬品が存在する医薬品については商品名ではなく、一般名(薬の有効成分名)で処方された場合、医師の処方料が加算されることになった。このことで医師の処方せんへの一般名記載が進み、薬剤師は患者にジェネリック医薬品を勧めやすくなるだろう。
 一方、健康保険組合や協会けんぽなど各保険者でも、その使用促進に向けたさまざまな取り組みを実施している。ジェネリック医薬品についての説明や積極的使用を呼びかける内容の、加入者向けの広報誌やリーフレットの作成・配布、ホームページへの掲載などを行っている。また、「お願いカード配布」や、レセプト情報をもとにした「差額通知」などを積極的に行っている保険者も少なくない。
 しかし、このような地道な取り組みは決して即効力があるわけではない。また、あまり積極的に取り組んでいない健保組合も残念ながら存在する。そして差額通知を行っている組合においても、その削減効果額の算定も含めた事業評価の手法自体があいまいであることが課題となっている。
 健保連が昨年11月に発表した「医療に関する国民意識調査」結果では、ジェネリック医薬品を服用するきっかけは、「薬局ですすめられた」が最も多く、次いで「医療機関で医師にすすめられた」である。したがって、国は医師会や薬剤師会にジェネリック医薬品の利用促進へ一層の働きかけを進めてもらいたい。
 また、ジェネリック医薬品メーカーには、安定供給、品質や情報提供などに対する不安を払拭するさらなる取り組み強化に努めてもらいたい。そして、利用促進策を実施している健保組合等に補助金制度を設けることも必要である。
  (K・M)