■2012年3月 No.486
先行きの見えない健保財政
− 危機脱却には公費導入が必須 −
健保組合財政悪化の要因は、景気減速による保険料収入の減少と、高齢化の進展にともなう高齢者医療制度への拠出金の増加であることは周知の事実である。
それに加えて、医療費も前回平成22年度(2010年度)の診療報酬のプラス改定により増加は著しく、支出額の規模が大きいので財政悪化要因となっている。
その解決策として、「社会保障と税の一体改革」の成否が今後の大きな鍵を握っており、われわれは大いに注目してきたところである。
しかしながら、昨年6月30日の「一体改革成案」ですら消費税導入時期が遅きに失する等、健保組合の窮状を救うには不十分ではないかと考えられていた。
素案をもとに閣議決定された「社会保障・税一体改革」に至っては、痛みのともなう改革の先送りや後退が目立ち、注目している消費税導入時期は26年4月から8%、27年10月から10%の引き上げと、また一歩後退した内容となってしまった。消費税の引き上げについては、与党の足並みの悪さに加え、政局の行方にしか関心のない野党の対応ぶりをみると、財政運営に苦しむ当事者としては、この政治状況には腹立たしさが募るばかりである。
「一体改革」の迷走が続くなか、24〜25年度の状況は前述の健保組合の財政悪化要因をさらに大きくする予測ばかりが襲いかかることになる。唯一財政好転の材料は、希望的観測ではあるが、景気の飛躍的な回復に一縷(いちる)の望みを託すのみという状況である。
また、厚生労働省は24年1月5日、健保組合あてに新年度の予算編成通知を発出し、「財政規律を重視した事業運営」を求めてきており、健保組合の事業運営に一段と重圧がかかることとなっている。
リーマンショック以降、各健保組合はすでに大幅な保険料率引き上げを余儀なくされており、ほぼ限界に近い状況まできている。予算編成通知の「財政規律重視」を満たす状況に、到底追いつかない健保組合も見受けられるところである。
しかも、24年度の政府予算案では、高齢者医療制度への拠出金増に対処するための「高齢者医療運営円滑化等補助金」は前年度より減少しており、さらには診療報酬がプラス改定で決着し、医療費の大幅な伸びが危惧されることとなっている。
「一体改革」の消費税率引き上げの導入時期が最短で26年4月であることを思うと、それまでの間、健保組合は確実に崖っぷちに立たされることになる。これ以上の保険料率アップには耐えられず、保険者機能の縮小にもつながりかねないので、早急に24年度、25年度を乗り切るための施策が必要となる。
健保組合の24年度の財政状況は23年度よりさらに悪化が予測される。24年度の政府予算案で対前年度比減額となった「高齢者医療運営円滑化等補助金」の増額が必要な点と、25年度には24年度(上積みが前提)以上の措置がとられることを切に望むところである。
(S・Y)