■2011年12月 No.483
平成23年度(2011年度)健康保険組合全国大会が11月21日(月)、東京・丸の内の東京国際フォーラムで開催された。「皆保険維持に向け、納得できる公平な負担を!」と副呼称に掲げた大会には、全国の健保組合関係者約4000人が参加した。大阪からも204人が参加、高齢者医療制度への巨額な拠出金等のため空前の財政危機にある健保組合の窮状と、制度改革による先行き不安の解消を訴えた。
平成22年度の健保組合の決算見込は、過去最高の415組合が保険料率を引き上げたにもかかわらず、21年度に次ぐ4154億円の経常収支赤字。23年度予算でも6089億円もの赤字となっている。その原因は前期高齢者納付金と後期高齢者支援金であり、これら拠出金等の保険料収入に対する割合は43%にも達する。高齢化の進展のうえに景気の低迷も長引いており、健保組合の財政は崖っぷちの状態に追い込まれている。
全国大会では冒頭、平井克彦健保連会長が基調演説を行った。このなかで同会長は、創設後50年経過した国民皆保険制度と、それを支える医療保険制度、その中核をなす健保組合がかつてない危機に瀕していることをあげた。そしてこの状況にあっても「医療保険制度になんのグランドデザインも示されていない」と指摘。制度の危機の原因は高齢者医療に対する支援のあり方にあるとし「負担の公平の観点に立てば、高齢者医療費は税によってしっかりと担保されるべき」と強調した。
次いで、小宮山洋子厚生労働大臣のあいさつ(辻泰弘副大臣代読)があった。続いて、日本経団連、連合、協会けんぽの代表ともに、高齢者医療制度に対する拠出金負担増の改革を訴えた。さらに、民主、自民、公明の各党代表がメッセージを寄せるとともに、会場の健保組合参加者との意見交換を行った。
締めくくりに、大会決議と4つのスローガンの趣旨(下記参照)について、健保連の白川修二専務理事から説明があった後、参加者の総意によりこれらが採択された。決議はクボタ健保組合の阪口克己常務理事が朗読した。最後に城西国際大学の柳澤伯夫学長(元厚生労働大臣)の特別講演で大会は終了したが、終始、衆参国会議員が登壇し、会場からのプラカードや拍手による激励に応えるなど、熱気あふれる大会となった。
皆保険制度が50年目の節目を迎えた今、これまで医療保険の中核として制度を支えてきた健保組合は、かつてない存続の危機と先行き不安におかれている。
平成22年度決算は、前年度に次ぐ4154億円もの巨額の赤字となり、23年度予算においても6000億円を超える赤字を計上している。この危機的な財政状態を招いている最大の要因は、保険料収入の半分近くをも占める高齢者医療制度への負担にあり、過重な負担は健保組合の存続さえも危うくしている。
一方、改革に向けた、先の「社会保障と税の一体改革成案」においては、社会保障費の安定財源確保のため、消費税率を引き上げる方向性は示されたものの、医療保険の最大の課題である高齢者医療制度についての具体案は未だ示されていない。また、少子高齢社会における将来に向けた制度の姿や道すじ、給付と負担のあり方も明確に示されていない。健保組合をはじめとする全ての医療保険者は、先行きが見通せない不安のなかで、まさに崖っぷちに立たされている。
医療保険制度を今後も安定して維持していくために、高齢者医療の負担は、現役世代の保険料に過度に依存することなく、国民全てで公平に負担すべきであり、十分な公費の投入とそのための安定財源の確保が図られるべきである。また、制度の持続性には、医療費の適正化に資する保険者機能の発揮が不可欠であり、優れた保険者機能を発揮できる健保組合方式を将来にわたって堅持すべきである。
今こそ国は、皆保険制度の維持に向けて、20年、30年先までを見据えた、給付と負担のあり方、財源問題を含めたグランドデザインを早期に明示し、全ての保険者、そして国民の「不安」を解消すべきである。
公平な負担と、全世代にわたる「安心と納得」の制度構築に向け、我々健保組合は、次の事項の実現を期し、組織の総意をもってここに決議する。
皆保険制度が確立されて50年目を迎えた。急速な少子高齢化と長引く経済の停滞の中で、医療保険制度は疲弊し崩壊寸前にある。現役世代は偏重した過大な負担に喘いでおり、今こそ、給付と負担のあり方を含めて、現役世代が納得して支え得る公平な制度改革の実現を急ぐべきである。
高齢者医療への支援に、健保組合をはじめとする医療保険者はこれ以上の負担に耐えられる状況にない。国民全体で公平に支える観点から、消費税率を引き上げて安定財源を確保し、高齢者医療制度への公費の拡充を図るべきである。
高齢化の進展等により医療費の増嵩が避けられないなか、制度を持続可能なものとするためには、疾病予防・医療費の適正化は欠くことのできない重要な施策である。保健事業による健康づくり、医療費適正化等の保険者機能を効果的に発揮できる健保組合方式を将来に向けて堅持すべきである。
これまで医療保険制度を支えてきた健保組合は、かつてない財政危機によりまさに崖っぷちの状況にある。国は、制度改革が実施されるまでの間、巨額な拠出金の負担に苦しむ健保組合に対し、十分な財政支援をすべきである。
平成23年11月21日
皆保険維持に向け、納得できる公平な負担を!
平成23年度健康保険組合全国大会