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− 明日から使えるメンタルヘルス対策−

うつにもならない社員なんていらない!! |
11月30日、薬業年金会館で心の健康講座を開催。大阪大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 石蔵文信准教授(医療技術科学分野
機能診断科学講座)が「― 明日から使えるメンタルヘルス対策―うつにもならない社員なんていらない!!」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨) |
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石蔵 文信 氏 |
“うつにもならない社員なんていらない!!”なんて過激な題名での講演ですが、不況と人員削減で過重労働になりがちな会社でまじめに働いていれば“うつになっても当たり前”で、うつにならないということはよほど精神的にタフか、仕事を適当にしている、もしくは会社の対応がかなり優れているのでしょう。まじめで優秀な社員が次々倒れていては会社の存亡にかかわります。そのためには早期の発見と手当てが必要です。
うつ病はメンタルの疾患ですが、体調不良が先行することが多いのです。いわゆる自律神経失調症といわれるような症状、たとえば頭痛、耳鳴、のぼせ、多汗、めまい、口渇、肩こり、腰痛、動悸、胸痛、胃痛、便秘、下痢、冷感などに睡眠障害が合併します。そのために症状に応じて、いろいろな診療科を受診しますが原因がはっきりしない、そのうちに、診断が遅れ、気分・不安障害が重症化するばかりか、無駄な医療費が費やされるのです。
さらに、まじめで責任感が強い反面、メンツやプライドの高い人がとくに男性に多く、そのような人は、簡単に弱音を吐かないために、初期の症状が見逃されがちです。受診しても、表情は暗くなく、むしろ努めて平静に、ときには笑みさえも浮かべる“微笑み型うつ病”の人が多いので、周囲の客観的な観察が重要です。少し様子が変だなというような人は積極的に担当の保健師や産業医に相談することが必要でしょう。治療を開始しても、投薬だけでなく上司と労働環境の内容と整備について話し合うことも必要です。十分な休養は必要ですが、休みすぎることで不安感が悪化する場合もあります。配置転換や降格、休養をしても職場のさまざまなストレスを完全に排除することは無理なので、早期の出社を促し、環境に適応させていった方が長期休暇のリスクが少なくなる場合もあります。
メンタル疾患にしっかりと対応すると、社員の体調ややる気が向上するばかりか、医療費の節約にもなるのです。多くの患者さんはうつや不安が改善するとさまざまな検査と薬剤が不要になりますので、早期に気分・不安障害を発見して手当てすれば、貴重な医療資源の浪費を防ぐことにつながります。逆に、現行の診療報酬では検査や薬剤が減れば医療機関等の収入も減ります。今回、精神疾患が5大疾病の1つとなったことを契機に、国はうつや不安障害の早期発見と早期介入に資源を投入し、診療報酬のあり方を見直すべきではないでしょうか? |
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