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10月7日、薬業年金会館で心の健康講座を開催。大阪市立大学大学院医学研究科 切池信夫教授(神経精神医学)が「うつ病とメタボリックシンドローム」をテーマに講演されました。(以下に講演要旨) |
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切池 信夫 氏 |
現代社会はストレスに満ちており、不安と抑うつの時代といわれ、うつ病が急増しています。一方では食物があり余り飽食の時代といわれ、グルメやストレス解消のための食べ過ぎや運動不足による肥満をはじめとして、脂質異常症、高血圧、糖尿病などのメタボリックシンドローム、いわゆる生活習慣病が増加しています。これらは「死の四重奏」と呼ばれ、心臓疾患や脳卒中と密接に関連しています。
肥満者にうつ病の発症が多く、うつ病患者に肥満が多いといわれています。さらに糖尿病、心臓疾患、脳血管障害に罹患するとうつ病を発症しやすく、うつ病を発症するとこれらの病気に罹患しやすいことから、生活習慣病とうつ病は密接に関連しています。
これらの病気の患者がうつ病を発症しますと、うつ病の精神症状である意欲の低下、悲観的な考え、活動性の低下などにより闘病心の低下を招いたり、うつ病の自律神経系や神経内分泌的異常により糖尿病、心臓疾患、脳血管障害などがより悪化します。これらのことから「死の四重奏」にうつ病を加えると「死の五重奏」といえる状態となります。
生活習慣病を防ぐには、どうすればよいでしょうか。それは肥満しないこと、うつ病にならないことです。肥満の主な原因は、食べ過ぎと運動不足です。「腹八分目に医者いらず」「少食は長生きの印」という諺があり、昔から食べ過ぎは戒められています。寝る前の食事を控え、カロリーオーバーにならない栄養のバランスのとれた食事を規則正しく摂る、ひと口20〜30回くらいよく噛む食生活を心がけることです。このなかで、よく噛むことは早食い防止につながり、脳内のヒスタミンが分泌され食欲を低下させて満腹感を生じ、大食いの防止になります。
現代社会は、生活全体が体力を使わない、運動をしない方向に動き運動不足を招いています。したがって、日常生活において適度の運動をする必要があります。毎日体を惜しまず使う、よく歩く、定期的にウォーキングやジョギングなどを行う、趣味にスポーツを行うことです。
次にうつ病にならないためにどうしたらよいでしょうか?うつ病とは、ほとんど1日中、抑うつ気分が続き、日常生活でのすべての活動において興味、喜びの著しい減退をきたし、睡眠障害、食欲の低下と体重減少、性欲低下、全身倦怠感や易疲労感などの症状が少なくとも2週間以上続く状態です。うつ病はストレスと密接に関連しており、ストレスを減らすこととストレスに強くなることがうつ病発症を防ぐことにつながります。ストレスとうまくつき合うには、まずストレス状態の「気づき」が必要です。そしてなにがストレスになっているのかを明らかにして問題解決法などにより対処します。そしてストレスに強くなるための良い生活習慣を築き、趣味などを充実させることです。昔から素晴らしい「ことわざ」が多くあるように「心のもち方」が重要です。 |
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