広報誌「かけはし」
 
■2011年11月 No.482
時評

公費拡充の道筋を見失うな

− いまこそ必要な社会保障の財源確保 −


 政府・民主党は、東日本大震災の復興費用の財源として、11.5兆円の復興債発行を行う方針である。償還期間については復興基本方針の「復旧・復興のための財源については、次の世代に負担を先送りすることなく、いまを生きる世代全体で連帯し負担をわかち合う」考えに沿ったものとしている。
 はて?どこかでいつも聞いているセリフではないか!!
 増大する社会保障費、とくに医療保険財政の急激な悪化。その必要財源をいかに確保するのか?! 問題を先送りせず早急に対策をたて、公費投入と世代全体で連帯し負担をわかち合うことが重要と、われわれ健保組合は主張してきている。
 医療保険制度の担い手である健保組合の平成22年度(2010年度)決算見込は4154億円の巨額赤字。いうまでもなく、その最大の要因は高齢者医療制度への拠出金等であり、総額2兆6419億円の負担。保険料に対する割合は43.0%に達している。平成20年度に導入された現在の高齢者医療制度により、毎年巨額の赤字を抱えてきている。
 平成22年度の概算医療費は36.6兆円。そのうち、65歳以上の高齢者にかかる医療費は19.2兆円(75歳以上12.8兆円、65〜74歳6.4兆円)といわれる。
 後期高齢者の給付費の5割は税(公費)で賄われているが、前期高齢者の給付費には税投入がないため、現役世代の負担が大きくなりすぎて耐えることができなくなってきている。
 こうしたなか、政府は「社会保障と税の一体改革」を策定。社会保障の安定財源確保のため、2010年代半ばまでに消費税の5%アップを含む、医療・年金・介護など社会保障関係の改革案と社会保障番号の議論を来春までに取りまとめようとしている。
 わが国の財政の大きな課題は増大する社会保障費であり、財政支出の負担を先送りすることはできない。財政再建を先送りしても、破綻をさけるには最後に大きな増税を迫られることになる。社会保障給付費と復興費とでは違いがあるが、公費負担を柱に近い将来の支出増大に備え、早急に対策を実施しなければならない。
 震災復興費はこの国の再建のために不可欠な財政支出であるが、増加する社会保障給付費とりわけ医療保険給付費はそれ以上に継続的なものであり、支出規模ははるかに大きい。
 社会保障財源をどうするのか、公費拡充の道筋は?
 野田総理大臣殿。
  (M・K)