広報誌「かけはし」

■2011年8月 No.479

事 業 報 告 の 概 要

1.健康保険組合をめぐる情勢

 (1) 22年度予算、過去最悪の6605億円の赤字を計上

 健保連が4月7日に発表した「平成22年度健保組合予算早期集計」によると、経常収支は前年度比約400億円悪化し、過去最悪の6605億円の赤字となった。要因は、高齢者医療制度への負担増加や経済情勢の悪化の影響をうけた保険料収入の大幅な減少にあり、全組合の約9割が赤字となった。民主党のマニフェストでは、地域保険と職域保険を将来に向かって一元的に運用するとなっており、健保連を含む被用者保険団体として反対であるとの意志表示をした。

 (2) 被用者保険4団体が厚労相に「要望書」を提出

 4月27日、健保連、日本経団連、連合、協会けんぽの被用者保険4団体は高齢者医療制度に対する公費負担の拡充を求めるとともに、地域保険と被用者保険の維持、発展を求めた「高齢者医療制度の再構築に向けて」と題する要望書を長妻厚労相に提出した。

 (3) 「国保法等改正法」が成立

 5月12日「医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険等の一部改正法」が参議院本会議で原案どおり可決、成立した。協会けんぽの国庫負担「肩代わり」措置は、22年7月から施行し、後期高齢者支援金の3分の1を総報酬割で24年度までの3年間で健保組合は1330億円の負担が課せられる。なお、附帯決議として@健保組合の拠出金負担増に対する財政支援の継続充実、A高齢者医療制度における公費負担の充実などを採択した。
 この財政支援の充実継続については、高齢者医療支援金等負担助成事業の補助金として、国から拠出金の負担割合の多い組合に補助金が交付されている。

 (4) 高齢者医療制度改革会議が「中間とりまとめ」

 厚労省の高齢者医療制度改革会議は、8月20日新たな高齢者医療制度の骨格と今後の検討課題を整理した「中間とりまとめ」を作成した。新制度の枠組みは、後期高齢者医療制度を廃止し、現役サラリーマンの高齢者や被扶養者は被用者保険に、それ以外の高齢者は国保に加入することとしている。また、国保の高齢者医療は、県単位の財政運営とし、将来は全年齢を県単位化する国保の広域化を前面に打ち出した。

 (5) 21年度健保組合決算見込、過去最悪5235億円の赤字

 9月10日、健保連は「21年度健保組合決算見込の概要」を発表した。
 経常収支差引額は、前年度比2046億円悪化し、過去最悪の5235億円の赤字となった。拠出金、納付金等の負担増加に加え、報酬月額および賞与額の落ち込みで保険料収入が大幅に減少したのが主たる要因である。
 白川専務理事は、財政悪化に強い危機感を表明、特に前期高齢者医療への公費投入が不可欠と強調した。

 (6) 政府・与党社会保障制度検討本部(本部長:菅首相)を立ち上げ

 10月28日、政府・与党は社会保障改革検討本部の初会合を開催し、医療・年金・介護など社会保障改革と消費税を含めた財源確保のあり方を一体的に議論し、年末に改革の全体像を表す中間報告をまとめ、必要なサービスの水準・内容など、国民にわかりやすい選択肢を提示することとした。

 (7) 22年度健保組合全国大会を開催

 11月16日、22年度健保組合全国大会を東京国際フォーラムで開催。「皆保険維持に、公費拡充待ったなし!」を副呼称に、@高齢者医療制度に対する公費投入の拡充と安定財源の確保、A保険者機能が十分発揮できる医療保険制度の確立、B健保組合方式維持のための財政支援の充実・拡大の3項目を全健保組合の総意として決議し、民主党、自民党、厚労省などに対し、代表者が要請活動を展開した。また、大阪連合会代表者も、大阪選出国会議員を訪ね、大会決議の実現を強く要請した。

 (8) 健保組合の解散抑止へ交付金事業を見直し

 12月17日、健保連理事会では、健保組合の財政悪化を踏まえ、解散抑止を目標に、緊急的な対応として、23・24年度の基本調整保険料率を「1000分の0.1」引き上げ、「1.3」とし、組合財政支援交付金事業に充てることを決定した。
 これは、平成23・24年度についての措置であり、交付金の中身についても平成22年度までの財政窮迫組合交付金、高齢者納付金等負担軽減交付金、緊急支援交付金の3交付金が、解散抑止を目的とした組合財政支援交付金に特化することで一つにまとめられた。
 交付要件としては、保険料率が協会けんぽの全国平均料率93.4‰以上とし、財源率、資産保有などが要件となり、新しい制度ができる平成25年度までのつなぎというかたちで見直された。

 (9) 高齢者医療制度改革会議が「最終とりまとめ」

 12月20日、高齢者医療制度改革会議では、25年度の後期高齢者医療制度の廃止に代わる新制度の運営主体や費用負担構造を提起した「最終とりまとめ」を大筋了承した。75歳以上の高齢者が被用者保険または国保に加入する基本的枠組みのなかで、国保の運営主体を市町村から都道府県単位に移行する。また、費用負担構造は、現行の支援金・納付金の仕組みを踏襲し、被用者保険の支援金相当部分の負担には全面的な総報酬割を導入すると明記された。
 なお、健保連の総報酬割への意見や医療保険財政の窮状などが付記されたが、現役世代の負担が限界に達しているなかで、新制度への公費拡充が欠落したことには、被用者保険関係4団体が強く追求し、知事会等も問題視した。

 (10) 大阪で時局講演会開催

 2月3日、大阪連合会と健政連の共催で、時局講演会を開催した。
 挨拶の中で、平井会長は「社会保障と税の一体改革の動向に注目するとともに、健保連のこれまでの提言を再検討し、主張実現へ積極的に活動を展開する」と述べ、安藤大阪連合会会長は「健保組合・健保連の主張を実現するため関係団体とも連携し、一体となった活動が必要である」と強調した。
 また、前衆議院議員の福島豊氏が講演し、社会保障制度改革は、税制との一体的な道筋を示し、財源に裏打ちされた医療・介護・年金などの各制度について国民的議論を行い、恒久的な制度を構築する必要があるとし、高齢者医療制度は、負担と給付に対する理解と納得を得る必要があるとの見解を示した。

 (11) 「社会保障改革に関する集中検討会議」を開催

 社会保障と税の一体改革の集中的な検討とオープンな国民的議論を目的とした「社会保障改革に関する集中検討会議」が2月5日を皮切りに週1回のペースで会合を実施、4月中に全体像、6月末までに「税制との一体改革の策定」に向けて論議を重ねた。
 会議は、政府・与党・政財界・労働界・有識者で構成する20名の幹事委員と、各種団体等の代表者で構成する18名の委員が参画している。
 なお、東日本大震災により、会議は一時中断したが、一体改革は当初方針を堅持し、スケジュールどおり進めていくとしている。

2.大阪連合会の事業活動概要
 大阪連合会では、理事会や各委員会で時宜に応じた活発な論議を展開した。特に、高齢者医療制度改革における公費拡充については、関係各方面に理解と支援を強く要請するなど、全健保組合が一丸となって取り組んだ。また、円滑な事業運営に資するための各種事業を実施した。

 (1) 大阪連合会役員改選

 4月1日大阪連合会では、改選された新理事による第1回理事会を開催し、新会長に安藤力氏を選出、副会長にパナソニック・兼松連合の両健保組合、専務理事に置田榮克氏を選出した。併せて、本部役員組合、および関係団体委員の推薦と顧問の委嘱が承認された。

 (2) 特定健診・特定保健指導の集合契約締結

 被保険者の代表保険者(委託者・協会けんぽ)と特定健診機関(受託者・大阪府医師会など)との委託契約(集合契約のB)が平成22年4月1日に締結された。

 (3) 地元国会議員への要請活動

 国保法等改正案の国会における最終審議を目前にした4月6日から14日にかけて、協会けんぽへの国庫負担「肩代わり」反対や健保組合の厳しい財政状況など、地元国会議員19名の地元事務所に訪ね、理解・協力を求める要請活動を実施した。
 また、11月開催の健保組合全国大会で、「皆保険維持に、公費拡充待ったなし!」の決議と3項目のスローガンを満場一致で採択したことを受け、議員会館・地元事務所等に8名の国会議員を訪ね、大会決議の実現へ理解と協力を求める要請活動を実施した。

 (4) 22年度健保組合予算(大阪分)集計

 大阪183組合の22年度予算では、前年度比でみると、被保険者数は増加(0.80%)、被扶養者数も増加(0.19%)、標準報酬月額は36万501円で2.62%減少、賞与額は8.31%も減少した。1人当りの法定給付費は23万7000円で1.7%増加し、納付金等は微減であった。保険料収入に対する納付金等の割合は44.05%と若干減少した。赤字予算は163組合で計上され、厳しい財政状況が続いている。

 (5) 21年度健保組合決算見込(大阪分)集計

 大阪184組合の21年度決算見込では、標準報酬・賞与ともマイナスとなり保険料収入が減少し、拠出金・納付金等が増加しており、経常収支は661億円(149組合)の赤字となった。前年度は317億円の赤字であったので赤字額が倍増し、著しく財政が悪化した。

 (6) 広報活動(広報委員会関係)

 機関誌「かけはし」および「ホームページ」を通じ、高齢者医療制度改革など、緊迫する健保組合をめぐる情勢および健保連の考え方や要請活動を掲載するとともに、大阪連合会の主要な事業活動の広報に努めた。

 (7) 組合業務支援活動(組合業務委員会関係)

 健保組合役職員の資質向上と連帯感の醸成に有効な個人情報保護講習会、初任者実務講習会、組合担当者実務講習会、パソコン研修会、事務長研修会等を開催した。

 (8) 医療費適正化対策活動(医療給付委員会関係)

 歯科レセプト点検事務研修会、求償事務研修会、柔道整復等療養費適正化講習会やレセプト相談・法律相談等の諸事業を実施して医療費適正化を図り、会員組合の財政健全化に努めた。また、支払基金に対して、事務連絡協議会を通じて審査など問題点の解決を要請した。

 (9) 健康開発共同事業推進活動(保健共同事業委員会関係)

 保険者に義務づけられた特定健診・特定保健指導に関連して、メタボリックシンドロームなど生活習慣病の予防と対策、またメンタルヘルス等をテーマに健康教育を実施したほか、契約保養所・プール施設の利用促進・各種イベントの後援や協賛等、多方面からの推進を図った。
 また、保健師活動では、健保組合における特定保健指導を支援するとともに、保健師連絡協議会での保健活動を支援した。

 (10) 総合組合活動(総合組合委員会関係)

 総合組合の実態を調査・研究し、有効活用を図った。

           
   
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