■2011年8月 No.479
高齢者医療制度の早期安定を
− 健保組合の窮状を聞いてほしい −
平成23年度の健保組合予算の早期集計では、全国の組合の経常収支赤字額は6089億円で昨年度に次ぐ額となったが、保険料率引き上げ組合数が過去最高の4割に上り、実質的な赤字傾向はいっそう強まった―。前月号の本欄で、このように指摘した。全国集計でこんな状況だから、大阪の組合の実情をみれば事態の深刻さがより鮮明に浮かび上がる。
まず、保険料率をみると、協会けんぽの全国平均保険料率95‰以上の組合は、大阪では昨年度3組合だったが今年度は15組合に増えた。そのなかには、料率を102‰に設定している組合がある。また、「協会けんぽ以上の料率設定は容認困難」との事業所などの意向により、赤字軽減のための料率引き上げがかなわず、やむなく必要な保健事業を最低限に切り詰めざるをえない組合もある。
一方、組合の財政指標となる実質保険料率(単年度分の経常支出額を保険料率に換算したもの)をみると、高い組合では130‰にもなる組合がある。たとえ賦課保険料率を法定上限いっぱいの120‰に設定したとしても、支出額はそれをはるかに超えて、大きな赤字になる計算だ。
ところで、4割の組合が保険料率を引き上げてなお9割の組合が大幅な赤字だ。最大の原因が、高齢者医療制度への納付金等であることは明らかだ。保険料収入に対する納付金等の割合は、全国平均で45%になった。
大阪では178組合のうち、保険料収入に対する納付金等の割合が50%以上の組合が74組合で、全体の4割を超えた。このうち9組合は、納付金等の割合が65%以上である。高齢者医療を支えるための負担に異論はないにしても、収入の半分以上あるいは3分の2をいわば部外に強制拠出させるような制度は異常である。
超高齢社会に入り、一定の医療費の増加が避けられないなかで、健保組合は医療保険の保険者としての機能を十分に発揮し、医療費の有効活用や適正化の成果を上げることをさらに求められている。適正化のおもな具体策には、@柔道整復療養費を含めた医療費通知による加入者への周知活動Aレセプト電子化の促進とレセプト情報管理システムの活用による点検事務の効率化・精度アップB後発医薬品の使用促進C特定健診・特定保健指導を中心に据えた保健事業の総合的な推進D特定健診およびレセプトをもとにしたデータ分析事業の本格実施―などがある。これらは健保組合が先駆的に取り組んできたもので、今後も確実に効果が期待できる。どれも重要な対策だ。
しかし、現行制度上では保険者としていくら努力しても、関係なく収入のうちの半分も他制度へ拠出しなければならない。さらに拠出金の重圧のせいで、必要な適正化のための事業展開が制限されている。このような状況を打開するためには、高齢者医療制度に対する公費導入を拡充して同制度を安定化させる改革が一刻も早く必要である。
(T・M)