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日本の赤ちゃんは平日の昼に生まれ、しかも土日や祝日は少なく、年末年始やゴールデンウイークはもっと少ない、といわれています。そして平日の午後2時ごろが多いとのことです。
このような現象は「陣痛促進剤」を医療機関が利用して出産日時を調整できるようになったことと無縁ではないのではないでしょうか。ほとんどが自然分娩の助産所では、曜日に関係なく、午前中に生まれることが多いそうです。薬の使用法や量によっては急激な子宮の収縮が子宮破裂や仮死出産を招くことがあり、重度脳性まひなどの後遺症を残すことがあると聞きます。
ところで、産科医療補償制度は平成21年1月から始まり約2年半になります。この制度の主たる目的は、「分娩に関連して発症した重度脳性まひ児およびその家族の経済的負担を速やかに補償するとともに、原因分析を行い将来の同種事例の防止に役立つ情報を提供することなどにより、紛争の防止・早期解決や産科医療の質の向上を図ること」となっています。この制度には現在、ほぼ100%の医療機関等が加入しています。
この制度設立に際して補償対象人数は年間500〜800人と見込んだようです。補償の申請は原則として満1歳から5歳の誕生日まで(診断が可能な場合は生後6カ月以降可)。支払いは1児につき3000万円。内訳は初年度に一時金として600万円、看護・介護の費用として毎年定期的に120万円を20年間支払う。また、19歳までに死亡した場合も支払うこととなっています。平成22年7月19日付の『週刊社会保障』(法研刊)に記載された日本医療機能評価機構の上田茂理事の話によれば、平成21年の保険料収入は315億円、支払いは3億6000万円、事務費は49億円であり約262億円も残ったようです。「5歳まで申請可能なので予測の範囲内である」と言っていますが、おおむね1歳までに診断されるとの説もあります。貯まっていく多額の剰余金を損保会社はどう運用しているのでしょうか。「5年後に剰余が生じた場合には損保会社から返還される」と言っていますが、全額戻るのでしょうか。
出生児1人当たりの掛金を3万円としたのは、一度に3000万円を支払い、対象人数を最大の800人とすることが前提らしいが、分割方式に変えたのであれば剰余金が出てくることは分かっていたはず。保険料を見直して制度を再設計したうえで始めるべきだったと思います。
平成23年3月末現在の補償対象は145名(うち、平成21年に決定は12名)とのことです。仮に年間の出生児数を100万人、補償対象を200名で試算すると、2年間で徴収する保険料は600億円、補償は約14億円、事務費は約98億円で、剰余金は488億円にもなります。このペースで推移すると剰余金は5年後には約1180億円、10年後には約2300億円にもなります。「現時点ではまったく白紙で、一般論として保険料の引き下げ、補償額の引き上げ、補償対象の拡大が議論されるのでは」と言っていますが、本来、医療機関等が払うべきものを健康保険組合が出産育児一時金の一部として負担しているのですから、下げるのが当然ではないでしょうか。また、剰余金もさることながら、補償対象人数に対して年間事務費49億円は大きすぎると思うのですが。 |
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(M・T) |
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