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健康保険組合の財政状況は、平成21年度の決算見込みでは過去最悪の5、235億円の経常赤字で、赤字組合は全組合の8割におよぶ状況である。平成22年度にいたっては、後期高齢者支援金の3分の1総報酬割の実施で、健保組合全体では年間330億円の負担増となる。赤字の大きな要因は経済悪化による収入減だが、平成20年度からスタートした高齢者医療制度の納付金、支援金等も大きい。
このことから、高齢者医療制度改革会議での審議の推移に注目しているなかで、「中間とりまとめ」が行われたが、健保組合にとってとくに重要なのは財源ではないだろうか。
検討課題の財源にかかわる問題として@公費投入のあり方A65歳以上への公費・保険料・患者負担の割合B75歳以上に適用されている保険料軽減措置をどうするかC70〜74歳の患者負担をどうするか―等があげられているが、公費投入のあり方が一番大きな問題であり、健保組合ではかねてから65歳以上の医療給付費に公費の投入を主張している。
一方、国保運営のあり方の検討課題では、財政安定化基金設置が唐突に出てきている。この財政安定化基金の財源にしても、いったいどうするのか。
高齢者と若年者の負担について現行の制度では、現役世代の人口減少による現役世代の保険料の増加分を高齢者と現役世代で折半し、高齢者の保険料負担割合を段階的に引き上げる仕組みになっている。すなわち、少子高齢化の進展による若年層の負担増がないように、高齢者にも応分の負担を求めることになっている。
「中間とりまとめ」では、高齢者の負担を抑えるため、高齢者の保険料が現役世代の保険料よりも大きく伸びることのないよう、財政安定化基金を活用し、高齢者の保険料の伸びを抑える仕組みを設けるとある。
これ以外でも「中間とりまとめ」では、そのしわよせが若年者にきている。今後若年層の減少とともに財源が不足し、医療保険を含む社会保険制度そのものが成り立つか否か危惧する次第である。
前述の財政安定化基金は、保険料収納不足や給付の増加といった財政リスクを軽減するために設置され、公費と保険料を財源とすることとある。公費はいくら投入されるのか、保険料を誰が負担するのか明らかにされていない。
保険料といっても、財政の悪い国保、協会けんぽからの投入は困難であるし、仮に拠出できたとしても国保や協会けんぽに投入されている公費からの支出となりかねない。結局のところ、保険料とあるのは健保組合に負担を求める構図が見えてくる。
今回の「中間とりまとめ」では幾多の問題が積み残されている。厚労省の方針では年末までに結論を得たうえ、来年の通常国会に法案を提出するとある。
年内整理は至難の技であるが、制度の根幹にかかわる問題であるので、財源問題は集中した論議で早急に内容を明らかにされたい。 |
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(S・Y) |
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